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助言

「さて、私もそろそろ行かなければなりません」

「もうですか……残念です」

「もっと助言したい事はありますがこれ以上は貴方達の為にならないでしょう。私の立場からしてもこれ以上の干渉は出来ません。

 今回はあくまでも那岐さんとアールスさんに貸しがあったのでそれを返す形で話が出来た、という所もあります」

「そうやって理由を作らないと会えなかったんですね。分かります」

「神様も自由には出来ないんですね」

「むしろ貴方達よりもはるかに縛りが多いですよ……っと、これ以上は本当に駄目ですね。それではもう行きます」


 シエル様は本当にそれ以上何も言わずに身体を浮かせ飛び立っていってしまった。


(それでは残りの助言は本体の私から伝えておきますね)

(えぇ……今名残惜しさを感じてた所なんですけど……というかいいんですか?)

(そちらの世界に属している分体がこれ以上力を貸すのは駄目ですが本体である私は大丈夫です)

(屁理屈では?)

(神様は意外と適当なんですよ)


 おっ、僕が言った事への当てつけか?


(助言いらないのならいいんですよ? せっかくヒビキさんの同族と思われる魔獣を見つけたというのに)

(本当ですか!?)

(魔人の本拠地に様々な魔獣が囚われていたのをツヴァイスさんが確認しています。どうやらゴブリンにする妖精を大量に確保する為に捕らえていたようですね)

(ゴブリンですか……ゴブリンはそんなに強くないですよね)

(ですがゴブリンは成長させるとそちらで言う所のトロールになります。大きな魔物の数を揃えたいなら正しいやり方です)

(トロールの情報は聞きませんでしたが多かったんですか?)

(多かったですよ。オーゲストの陰に隠れていて目立たなかったようですが百体はいたようです。

 妖精をゴブリンにしなくてはいけない以上トロールの数を揃えるのは難しいですが、オーゲストに比べて少ない魔素と時間でトロールにする事が出来ます。

 オーゲストを育てる片隅でトロールも増やそうとしていたのでしょう)

(なるほど。妖精を生み出す為に魔獣を確保していたんですね……)

(ひどい扱いは受けていない様子だったそうですが魔獣達がこれからどう動くかは未知数です)

(魔人はどうなったんですか?)

(二つの大軍を指揮していたのは二人の魔人でしたがツヴァイスさんがどちらも殺しました)

(やっぱり神様でも魔人になった人はどうにもならないんですね……)

(ええ、一度魔素によって狂わされた魂は肉体から離し休養させなければなりません)

(残念です。それでヒビキの仲間と思われる魔獣は……)

(ツヴァイスさんが魔獣達に争う気が無いのならバオウルフさんの縄張りに行くよう助言しました。私の方からバオウルフさんに許可は貰っていますよ。

 そちらに向かう気があるのなら恐らく魔獣達が着くのは半月後でしょう)

(そうですか……)

(私が今出来る助言はこれくらいです。頑張ってください)

(ありがとうございます)


 半月だとグランエルに戻ってまたこっちに来るのに同じくらいかかってしまうな。

 そうなると魔獣達の目的によってはヒビキとその同族と思われる魔獣が会えない状況も考えられる。

 特に妖精語が分からないと意思の疎通が取れないからバオウルフ様に頼んだとしても大森林に留めておくのは難しいだろう。

 そうなるとヒビキはこのまま大森林に居させるのがいいかもしれないが、理由も分からないまま僕がいなくなるのは嫌がるだろうな。


 ヒビキには同族と会えるかもしれないと伝えるのは難しい。もしかしたら全く関係のない魔獣かも知れないから変に期待させるわけにはいかない。

 僕が一緒に残ればいいんだろうけれど……。

 考えるのを止め周りを見てみると皆が僕の事を見ていた。待たせてしまったようだ。


「待たせたみたいだね。ごめん」

「ううん。シエル様と別れるの寂しいかった?」

「え? うん。まぁね」


 別れを惜しんでいたと思ってくれるなら今はそれでいいだろう。ヒビキの仲間の事はヒビキのいる前で話す事じゃない。


「ねぇアイネ」

「なに?」

「精霊に確認してもらいたいんだ。僕は一度戻らないと駄目かって」

「何かしたいの?」

「うん。怪我をした魔獣の治療や前線基地で治療の人手が足りない所で手を貸せないかなって思ってね」

「ん。きーてみる」

「頼むよ」


 回答が返ってくるまで多少の時間がかかった。

 そして、答えは僕には一度帰ってきてほしいとの事だった。


「むぅ……」

「ナギの代わりに私が残ろうか?」


 アールスがそんな提案をしてくる。

 仕方ない。こうなったらヒビキに多少不審に思われても強引に離して話してしまった方が良いだろう。

 ヒビキには聞かれないように……ヒビキは今アールスが抱っこしている。


「アールス、ちょいと耳貸して」

「なぁに?」


 ヒビキに聞こえないようにアールスに近づき耳元でささやきかける。


「ヒビキに聞かれたくない事があるから少しの間ヒビキをナスに任せてくれる?」

「分かったー。ヒビキ、ちょーっとナギと大事なお話するからナスの所に行ってくれる?」

「きゅ? いいよー」


 ヒビキはアールスに地面に降ろされるとトテトテとナスの所へ向かう。


「ナス、ヒビキの相手お願いね」

「分かった! ヒビキ、あそぼ」

「あそぶー!」

「ならおいらも……」

「ゲイルはちょっとこっちに来て」

「おっ? なんだなんだ。おいらに何か用か?」

「うん。用があるんだ。アイネとミサさんもこっち来て固まって欲しい」

「えー? なになに?」


 ゲイルにアイネにミサさんも小さい声が届く距離に近くに集まって来てくれた。

 これで話が出来る。ナスとアースとヘレンにも後で話しておかないと。

 ナスと遊んでいるヒビキに聞こえないようになるべく小さい声でシエル様から聞かされた情報を皆に伝えた。

 そして、最後に僕がして欲しい事を皆に話す。


「僕が一度戻るとなるとどれぐらいでこっちに来れるか分からなくなる。半月後だとそんなに猶予が無いから魔獣達が留まらなかったらもう会えなくなる危険性がある。

 だからゲイルには大森林に残ってヒビキの事を伝える役をして欲しいんだ。バオウルフ様だと相手に言葉が伝わらない可能性が高いからね」

「ちりょーするっていーだしたのこっちに残りたいからだったんだ」

「うん。アールスが残ってくれるなら治療が出来るしゲイルが残る理由も出来るから一石二鳥なんだよね。……頼める?」

「私はもちろんいいよ。ゲイルは?」

「おいらもいいぜ。ヒビキの家族かもしれないんだろ?」

「そうだよ」

「おいらも会わせてやりたいからな。もちろんやるぜ」

「ありがとう」


 アールスには負担を掛けさせてしまうな。機会を見つけて目一杯い労わなければ。


「でもさ、ヒビキ仲間と会えたらあたし達と別れちゃうのかな……」

「うん……僕はそれでもいいと思ってる。もちろんヒビキの意思が優先だけど、もしも本当に仲間でヒビキがその魔獣達と一緒にいたいと願うなら僕達はどんなに寂しくてもそれを祝福しなくちゃ」

「そだね……」

「違う可能性もあるんだしヒビキちゃんには内緒だよね」

「うん。期待させて違ったら悲しむだろうからね。後ついでに遅れたりこっちに来ない可能性も十分あるんだ。無駄になるかもしれないけどアールスは本当に大丈夫?」

「うん! ぶらぶら治療が必要な人や魔獣を探しながら待ってるよ」

「本当にありがとう。特別手当は期待しておいてね」

「えっ、そんなのいいよ別に」

「駄目だよ。こういう事はきちんとしなきゃ。ただ働きが常態化するのは良くない事だよ」

「そーそー。今回はただでさえねーちゃんに振り回されてるんだから貰うもんは貰っとかないと」

「アイネの言う通り。あっ、もちろんアールス以外も今回の件でちゃんとグランエルに戻ったら特別手当用意しておくね。

 ここまで付き合ってくれてありがとう」


 内容に関してはレナスさんと相談だな。

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― 新着の感想 ―
[一言] >「駄目だよ。こういう事はきちんとしなきゃ。ただ働きが常態化するのは良くない事だよ」  はい。  善意からの行動でも、それが続くと「やって当たり前」みたいに思われて、やらなきゃ理不尽なブー…
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