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閑話 アース

本日は二話投稿します。今話は二話目です。前話を読んでいない方はまず前話からお読みください

 私は最初何となく気になる気配を感じたからナギにちょっかいをかけただけだった。

 ついて行こうと思ったのはフォースが当たった時に感じた奇妙な感覚が気になったから。

 いざナギについて行ってみると私に立ち向かってきたナギは意外にも臆病で後ろ向きな性格をしている事を知った。

 まだ起こっていない起こるかどうかも分からない良くない事柄を想像しそれに怯える。

 さらに変な所で責任感を発揮しその重さに苦しむ。


 もうね、馬鹿なんじゃないかと。

 私を食料にするかもしれない? そんな事私にいちいち言うな! どうせ私に選択肢を与えたいんでしょうけどそんな状況にもなってないのに変な責任感発揮させるな! そして苦しむな!

 もっと気楽に生きればいいのにナギにはそれが出来ない。

 責任感が強いからとナス辺りは言うだろうけれどあれはただ自虐思考が強いだけ。


 とはいえ私はナギのそういう所を治そうとは思わなかった。私のやる事とは思わなかったし今もそう思う。

 そもそも私は面倒な事が嫌い。他の生き物を率いたり導く事なんてしたくない。

 そんな私がナギといるのは……まぁなんだかんだでナギの事が好きだから。

 私の事をきれいにしてくれるし、なんだかんだ一緒にいると居心地がいい。

 それに私を見て少しは変わったでしょ。頑張りすぎず優雅に暮らす私を見れば誰だってそうありたいと願うものなの。

 小生意気なナスを除けば。


 最初の頃……ヒビキが来た頃位までだったかしら? ナスは私を警戒していた。

 まぁ出会いが出会いだったから仕方ないけれどそれはナスも同じだったらしいし許してくれてもいいじゃない?

 だからお返しに少しは意地悪したっていいじゃない。

 角を折ってしまいそうになったのは……さすがに反省しているけれど。


 ナギの話に戻そう。ナギはその変な責任感以外に別の行動原理を持ってる。

 それはレナスだ。レナスを愛しているからレナスの為に出来る限りの事をしたいと思ってる。自分の都合を後付けして言い訳までして。

 変な責任感を持ってるのも元はといえばレナスの所為じゃないかと私は思ってる。


 レナスの為に生きて限りある自分の人生を消費する。私には理解できないけれどナギは自分の事を後回しにする悪癖がある。きっとその所為だろう。

 旅の最中にレナスの事以外でナギにもやりたい事が見つかったからレナスの為だけに生きる事は無いと思う。そのやりたいという事も自分の為の物じゃないけれど。

 それは別にいい。ナギはそういう生き物なんだと理解してる。

 問題なのはその後回しする悪癖がナギ自身の命を軽くしてるって所。

 これはいけない。私が美しさを維持する為にも、美味しい物をいただく為にも……寂しくならない為にもナギに命を捨てさせないようにしないと。

 その為には私が少しでもナギを助けるしかないじゃない。

 だから私はナス達を助けに行く事を決めた。




 ナスとゲイルのマナを頼りに大森林に着くとそこでは無数の魔物との戦闘が繰り広げられていた。

 前に遺跡で戦った時よりもはるかに多い。ここ一帯だけでこんなにも魔物がいるのかと恐怖した。

 魔物は水みたいに透明な人型の魔物ばかりでいつも見る岩や筋肉みたいな魔物はいない。

 けれどまだ逃げるわけにはいかない。

 幸い人間を優先しているのか魔獣に対する攻撃は比較的少ない。

 これなら人間を囮にしつつ攻撃していけばいい。


「ぼふぼふっ!」

「ぴー! アース、ヘレン! サラサの指示に従って!」

「ぼふっ!」


 サラサの姿を探すと上の方にいた。


「アースとヘレンは兵士達を守って!」


 とりあえずサラサの指示通りにして守りつつ詳しい話をサラサから聞く。

 そして、戦い始めるとやがてナギの援護も加わった。

 遠く離れた場所からでも私達のマナを操って助けてくれる。ナギったらすごいじゃない。

 私もヒビキに魔物の攻撃が当たらないように気を付けながら兵士達の盾となる。

 魔物の攻撃は意外と痛くない。

 魔法は私のマナで通らないし殴られてもたいして痛くない。

 これなら余裕ね。ヒビキが攻撃し私がヒビキを守る。これを守れば負ける事は無いはず。

 ただヒビキが疲れたら私から落ちてしまうかもしれない。そこは本当に注意しないといけない。




 どれくらい戦い続けたのか辺りはすっかり暗くなってきた。

 魔物はかなり倒してるはずなのに相変わらず攻撃が止まない。

 人間達は今休憩の為に自分達の四方に土の壁を作ってさらに精霊が用意した分厚い氷壁で覆った避難所を作ろうとしている。

 私が前に立って時間を稼いでいる最中ふいに声のような物が頭の中に響いた。。


(繋がった)


 何となくその声をナギの物と感じた。同時にナギがすぐ近くにいるような錯覚を覚える。

 ナギのマナははるか遠くにある事を感じるからすぐ近くにいるなんて事無いはずなのに。

 ナギだけじゃない。ナス、ヒビキ、ゲイル、ヘレンがさっきまでよりもより身近に感じる。

 皆の気持ちがわかるような気さえする。

 皆驚いてる。これはいけない。まだ戦いの最中なのに驚いていたら危ない!

 そう思うと皆の気持ちから驚きが無くなったように感じた。

 私の気持ちも伝わった?


《魔獣の誓いは魔獣王へ進化しました。これにより魔獣との固有能力の共有されました》


 固有能力の進化……強化されたっていう事?

 なら私もナスとヒビキの力を使える? そう思うとナギから慣れない力は無理に使わないで自分の力を信じろと来た。

 たしかにその通り。私は他の皆の力の使い方なんて知らない。知らない力より自分の力で戦った方が良いに決まってる。


「皆、ナギの言う通り無理しないで自分の力で戦うのよ」

「うん!」

「アースが喋った!?」


 ナスが力強く返事するとほぼ同時にサラサが驚いた声を上げた。説明がめんどい!


「ナギの力が強化された! 以上!」

「ええー……いや、まぁ説明いいわ。余裕ないだろうし」


 物分かりがよろしい。


「あれ?」


 ナギが遠く感じる。すぐに戻ったけれどどうやらナギの方にも魔物が現れたみたいだった。

 心配しない様にとだけ伝えられナギがまた遠くなる。

 

「きゅぃ……ナギ大丈夫かな」


 可愛らしい人間の女の子っぽい声が私の角の辺りから聞こえて来た。ヒビキの声か。お子様らしい可愛い声じゃないの。


「大丈夫よ。ナギなら危なくなったら逃げてくれるでしょう」

「そうかなぁ……ナギなんだかおかしかったよ」

「……ヒビキの気のせいよ。今は目の前の事に集中しなさい」

「はぁい」


 ナギが少し変なのは私も感じた。深くつながっていた時罪悪感のような物がナギから流れ込んできた気がする。 

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