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リュート村防衛戦 その3

「なんで来たの!?」

「娘にしんがりをやらせられるか!」


 しんがり? あっ、そうか。軍が撤退したから撤退戦だと思ってるのか!


「ナギ、サンライト出すからしっかり前を見て」

「ご、ごめん」


 サラサに叱られたのでしっかりと前を見て魔法石をゴーマに向ける。


「サンライト!」


 サンライトの光が水の網を破壊しようとしていたゴーマに当たる。

 一見何の効果も無いように見えたが、サンライトが当たったゴーマが水の網に攻撃をすると腕が取れた。


「脆くなってる? アールス!」

「ミサさんサンライトが当たったゴーマに精霊魔法で強い風を当ててみて!」

「分かりましタ!」


 サンライトの当たったゴーマに強い風を当てるとそれだけで関節の部分から崩れていく。


「やった! シエル様ありがとう! ナギ! サラサ! がんがん当てちゃって!」

「任せて! ……お父さん。これは撤退戦じゃないよ。防衛戦なんだ!」

「お、おう。ってかなんだその魔法!?」

「おじさん話は後! 避難状況はどうなってるの!?」

「だ、団長と若い奴らが護衛についてて全員村から出てグランエルに向かってる! 俺たちは村から出るのを見送ってからこっちに来たんだ!」

「村に被害は!?」

「見てきた限りでは無い!」


 ゴーマに対して照射時間を少し増やすと動くだけで脚が崩れる個体も出てきた。身体の重さに足が耐え切れないのかもしれない。


「兵士達はいい加減動ける!?」

「ああ、動けるぞ!」

「なら兵士達は指揮権今どうなってるの!?」

「副隊長の俺にある! 隊長は残念ながら囮になって……」

「そっか……でも軍にも自警団にもやって欲しい事ないから待機してて!」

「聞いといてそれか!?」

「今状況が完全にこっち側だから下手に前に出られても困るだけなの! 出番が出来るまで待ってて!」


 後ろがなにやらうるさいが僕のやる事は変わらない。

 崩れ倒れたゴーマ達に追いうちのサンライトを浴びせるが一番大きな胴体部分に当てても変化が見られない。

 密度が高いから効果が表れにくいのか?

 そう思ってるとミサさんが近くのゴーマに大金槌を振るった。すると簡単に砕けた。

 ナスのサンダーインパルスも最初に当てた時よりも大きく砕ける事が出来ている。

 見た目じゃ分かりにくいだけで脆くする事は出来ているのか。

 ゴーマのような岩石系の魔物は確か地中の土を魔核が魔素で集め固め生まれる魔物だ。

 フォースやサンライトが当たると魔素による結びつきが弱まって脆くなるのかもしれないな。

 そして、ゴーマを観察していると森から何かが飛び出てきた事に気が付いた。

 

「ききっ!」

「ゲイル? 戻って来たんだ! 無事でよかった……」


 森から出てきたゲイルはゴーマの頭上を空駆けで通り過ぎ水の網の網目を通って僕の右肩に乗っかって来た。

 ゲイルの報告を聞くとどうやらオーゲストの下半身は傷だらけで、特に左脚の状態は酷かったらしい。

 なのでゲイルは左脚をフォース集中的に狙い、オーゲストがしゃがんだ所で腱を狙い削ってから逃げてきたようだ。

 人体と同じ構造ならもう立てないだろうけどどうだろうか。

 とりあえずアールスに報告するとアールスは兵士さん達に確認を取った。

 するとオーゲストの腱は人とは違う働きをしており、そもそも魔物は魔素を使って身体を人形のように動かしているので腱を切っても動けなくなるという事はない。

 けれどオーゲストの腱は自重を支える為の物であり、ボロボロになった脚から腱が無くなれば立つ事位は出来るが走った途端に左脚は自分の重さを支えられず破壊されるはずだと説明してくれた。


「本当に削り切れてるかは分からないから油断しちゃ駄目だよヘレン、アース」

「くー!」


 アールスの忠告に気合を入れ直すような声を出した。

 水の網の操作くらいは変わってやりたい。

 けれど、どこへ飛んでいくか分からないオーゲストの投擲物を受け止めるには視野が高く広い上に後方に待機しているヘレンとアースの方が適任なんだ。


「しかし、オーゲストの投擲止まないな……」


 カナデさんにオーゲストの様子を確認してもらうとこっちに寄るのをもうやめているようだ。

 今はまだヘレンが防いでくれているがいつヘレンが疲れ固定化が解かれてしまうか分からない。

 とにかく今はゴーマを倒して安全の確保とナスの攻撃がどんな角度からでもオーゲストに届くようにしておきたい。

 今はナスとエクレアの力を使っているミサさんが脆くなっているゴーマを破壊しているので射線が通るようになるのにそう時間はかからないだろう。


「サンライトは一旦止めた方がいいかしら」

「そうだね。後続まではまだ届かないしそうしようか」


 ミサさんとナスが前列のゴーマを破壊してからまだ脆くなっていない後列の個体にサンライトを当てる。これを五回繰り返してやっとオーゲストへの射線が通るようになった。

 投げられて来た物はヘレンが上手く水の網を動かし遠くへはじき返しているおかげで邪魔になる物は無い。

 投擲は相変わらず続き、オーゲストの方も投げる物を求め横に動いているようだ。

 狙いが甘く間の木々をなぎ倒してるため射線が切れる事はない。おかげで僕でもオーゲストの様子が分かる。



「よし! ナス光線よろしく!」

「ぴー!」


 アールスの号令でナスが遠くにいるごオーゲストに光線を放つ。

 光線が肩に当たった様子のオーゲストはそれを嫌い逃げようと暴れ出すが立ち上がる様子はない。立ち上がれないのか?

 いつでもサンライトを当てられるように魔法石をオーゲストに向ける。

 カナデさんもサンライトを撃てるように右手の人差し指をオーゲストに向けている。

 アールスの号令があればカナデさんもサラサも即座にサンライトを撃つだろう。 


「逃がしたくないけど近寄るべきかなぁ……」


 アールスの独り言が聞こえてくる。

 僕達のいる場所からオーゲストまでの距離は大体走って五分ほどの距離だ。僕やカナデさんがサンライトを当てようと思ったら今の距離では難しい。

 照射する魔法なので出し続けて調整すれば当てられるが無駄にするとマナの量が少ないカナデさんには致命的だ。


「アールス。僕達が森の中に入ろうか?」

「んー……うん。やめとこう。逃げられたとしても森の中から出ないように監視すれば軍が立て直しの時間は稼げるしサンライトの魔法石の量産も出来る。

 残ってる魔物がどれくらいいるか分からない状況で今私達が危険を冒す必要はないよ」

「時間を与えるにはオーゲストの回復力がどれくらいか分からないのが怖いなぁ」

「だからこの距離からでも逃がさないようにがんばろうね」

「水の網を前に出しながら前進するんじゃ駄目かな?」

「前に出るほど投擲の破壊力が増すからね。分厚い水の壁だったらそれでいいけど網の場合受けきれるかな」

「う~ん……」


 結局の所水の網は宙に浮いている状態でマナで操っているだけで支柱となる物がない。

 もう少しくわしく言うと網の状態だと軟らかく受け止め跳ね返すという防ぎ方なので支柱の役割となる部分を作れないと言った方が正しいか。

 投擲を受け止められているのはマナを操って堪えているからだ。だから魔力操作の限界を超えられたら水の網は投擲物に耐えられなくなり吹き飛んでいく。

 ではなぜアールスは水の壁じゃなくて不安要素のある水の網にしたかと言うと、水の網なら網目からナスや僕達がサンライトで攻撃できるからだ。


「水の壁にするとなると動かし方が問題だな。ただ厚い水の壁を用意しても変なやり方で動かそうとしたら耐えられなかったり動かせないって事も考えられる。ぶっつけ本番でやるのは怖いかな」

「うん。だから変に賭けに出るよりはこの場から動かずに攻撃し続けた方がいいと思う」

「分かった。アールスの言う通りにするよ」


 暇がある時に厚い水の壁の動かし方も検証しないとな。

 なんにせよナスの攻撃でオーゲストを倒せるのが一番いい結果だ。

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― 新着の感想 ―
[一言] >サンライトの当たったゴーマに強い風を当てるとそれだけで関節の部分から崩れていく。  軍の中に、一定数はこの魔法が使える奴が欲しいでしょうねぇ。  戦闘が大分変わりますね。  カタい敵には…
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