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世界の至宝

 グランエルに帰って来た翌朝、組合で早速依頼を受ける。

 依頼の締め切りは四日後でその二日後に説明会、そして説明会の二日後冒険者が集まってリュート村に出発する事になっている。

 かなり急ぎの日程だ。この手の依頼は普通依頼を張り出してから動き出すまで一ヵ月は余裕を持たせる。

 それだけ地中の魔物を危険視しているという事か。

 募集要項は少し変わっていて冒険者の階位が第四階位以上で尚且つ精霊と契約している精霊術士とその仲間を含めた少数の団体までとなっている。

 仲間の参加は認めるけれどあまり精霊以外の人間を連れてこないで欲しいという思いがひしひしと伝わってくる。

 というか魔獣についての記述が無いからこれ僕精霊術士だと思われて部隊長さんに誘われたんじゃないか?

 少なくとも仲間に精霊術士がいる事は分かっていただろう。ライチーいたし。


 そんな訳でレナスさんとミサさんがいる僕達は問題なく依頼を受ける事が出来た。

 出発の日までやる事はない。準備をしようにもそれも説明会を聞いてからじゃないと何を準備すればいいのか分からない。

 一応いつもの旅準備は出来るがそれも手馴れているから半日もあれば準備は終わってしまう。

 アールスとアイネと一緒に久しぶりのグランエルを案内しようかとも思ったがそれは僕達がいない間に済ませたらしい。

 空いている日をどうしようかと考えているとアールスから最高にかわいく最愛の妹であり天使でもあり世界の至宝でもあるルイスに会いたいとお願いしてきた。

 説明会の前日が学校の休みの日なので早めにルゥに会いに行って約束を取り付けよう。




 そして待ちわびていた休日。ルゥと約束した公園へ向かう。

 一緒に行くのアールスとアイネ、それにナスとヒビキとゲイルだ。

 レナスさん達は余り大勢で会いに行くのは迷惑になるだろうと言って辞退した。こういう気づかいは素直に嬉しい。

 余り大勢で会っても慣れない人相手が多いとルゥも疲れてしまうだろう。

 アースとヘレンはアースが今日は休みたいと言い、ヘレンがそれに付き合って預かり施設にいる。

   アースとヘレンがいないので今日は街を散歩してもいいかもしれない。


 公園に着くとルゥは先に来ていたようでルゥのナスを呼ぶ声が聞こえてきた。

 お姉ちゃんを呼んでもいいんだよ? と思っていたらお姉ちゃんと呼んでくれた。


「うわっ、ねーちゃん気持ち悪いよその顔」

「失礼な」


 妹の事を想う顔が気持ち悪いだなんて……そんな事あるはずがない!

 ……とは言え威厳ある姉でいたいので真面目な顔でいよう。

 友達と一緒に駆け寄って来たルゥは僕達の前に来ると立ち止まりアイネの方を見て少し驚いたような顔を見せた。


「アイネお姉ちゃん?」

「そーだよ。久しぶりー。あたしの事覚えてんだね」

「う、うん。ちゃんと覚えてるよ。よく遊んでもらってたから」


 緊張してるルゥ可愛い。じゃなくて人見知り発揮して緊張してしまっているルゥを助けなければい。


「ルゥ」

「なぁに?」


 手招きして呼ぶとルゥが僕に近寄って来る。

 ルゥが止まった所でしゃがみルゥと視線の高さを合せる。


「とりあえずおはようルゥ」

「ん。おはようお姉ちゃん」

「今日も元気みたいでよかった」


 走って乱れてしまったルゥの髪をちょちょいと直してから立ち上がりアールスとアイネの前に立ち、そしてルゥだけじゃなくルゥのお友達にも視線を送る。


「皆に僕の友達紹介するね。アールス=ワンダー。事情があって長い間帰って来れなかったけれど僕やルゥと同じリュート村で生まれ育った僕の幼馴染なんだ」

「皆よろしくねー」

「こっちが僕の後輩で仲間のアイネ=スレーネ。アイネも同じリュート村出身だから幼馴染だね」

「よろしくー」


 二人の紹介が終わると次は子供達の紹介が始まる。

 そんな紹介の間にルゥが僕の手を引いてきた。


「どうした?」

「アースとヘレンは?」

「今日はお休みだよ。アースは今日は休みたいって言ってヘレンはアースに付き合って預かり施設にいるんだ」

「そっかぁ……アースの事働かせすぎちゃ駄目だよ?」

「もちろん気を付けているよ。アースとヘレンにはいつもお世話になってるからね。都市にいる時はゆっくりしてもらってるよ」

「そうなんだ……お姉ちゃんは都市にいる時は何してるの?」

「依頼探したり仕事したり訓練したりだよ」

「忙しい?」

「忙しい時もあるしそうじゃない時もあるかな。依頼の内容によっては依頼を受けてから実際に仕事を始めるまで間がある時もあるし。今日なんかそうだね」

「そういう時ってお仕事しないの?」

「今は余裕があるからしてないだけで前は日雇いの仕事とか入れてたよ」


 日雇いの依頼は大抵下級の冒険者向けの依頼なのだけど量が多い訳ではない。

 なので下級の冒険者の為に中級の僕達は遠慮しているのだ。けっしてきつい依頼が多いのでやりたくないわけじゃあない。


「お姉ちゃんお金稼げてるの?」

「まぁね。これでも中級の冒険者だから」

「……お姉ちゃんってもしかしてすごい?」

「んふふ。どうかな? 仲間が皆頼れるからそのお陰かもね」

「アイネお姉ちゃん達?」

「うん。後魔獣達もね」

「ふぅん……お姉ちゃん達ってすごいんだぁ」

「んふふ。そう言ってくれると嬉しいよ。……終わったみたいだね」


 子供達の紹介が終わって魔獣達が子供達に近寄って行く。


「あっ、ナスー」


 ルゥもナスの方へ行ってしまった……。

 そして、ルゥの代わりにアールスが話しかけてきた。


「ルイスちゃん本当にかわいいね~。ナギに似てはいるけど小母さんの方が似てるかな?」

「ふふん。お母さん似の美人さんになるよ」

「かもね」

「ルゥおっきくなったなー。昔はあたしの足にしがみ付いてきたりしてたのに」


 アイネもやって来た。


「その内アイネの身長を抜くだろうね」

「む~。それは複雑かもルゥにはあたしよりちっさいままでいて欲しー」


 アイネは同世代でも背が低い方だからアイネより大きくなって欲しいけど……アイネの気持ちもわかる。僕よりも大きくなったらなんだか複雑な気分だ。


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― 新着の感想 ―
[一言] >アイネは同世代でも背が低い方だからアイネより大きくなって欲しいけど……アイネの気持ちもわかる。僕よりも大きくなったらなんだか複雑な気分だ。  子供を持つ親と同じ感覚ですね〜。
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