依頼内容
ジーンさんから聞いた依頼内容はあらかじめ目星をつけている四つの土地に出向きアースの力を使って地面を掘るという簡単な内容だった。
問題は期限だが往復だけでも一週間ちょっとかかる位置なのでどうしようかとカナデさんや帰って来たレナスさん、それに僕達について来てくれたアロエを介して皆と相談する事になった。
そして、アールス達は僕達の判断に任せてくれた。
レナスさんは報酬の額を聞いて受けてもいいんじゃないかと答え、カナデさんは安全確認のためにも絶対に受けた方がいいと不安そうな顔で答えた。
話を聞いてみるとレナスさんは地下に魔素が溜まっていて当然だと考えているようで、国がその可能性を認識していないというのは考え辛いと言う。
王都の近くにある魔王の爪痕と呼ばれるとてつもなく深い谷の事を考えると一理あるかもしれない。
さらに全土に渡って地下に魔素の濃い地層があってもおかしくないので魔蟲の増減の原因が地中にあるとは思っておらず、前線基地付近の魔素が中央に比べて濃いのはやはり魔素が外側から流入しているからという説を支持しているようだ。
そして、逆に何もない空間があるとそこに魔物が溜まる可能性があるので調査自体はしてもいいんじゃないかとも考えているらしい。
二人の後押しもあって僕はアースや他の魔獣達とも相談した後依頼を受ける事を決めた。
依頼を受ける事になるとレナスさんとカナデさんがついて来る事を申し出てきたが、時期的に恐らく僕が依頼に出ている間にアールス達がグランエルにやって来る。
連絡はアロエがいるので問題ないのだけど、一人は残ってアールス達が泊まれる宿の確認などの迎え入れの準備をして欲しい。
なので魔獣のお世話の事も考えると力のあるカナデさんについて来てレナスさんには残ってほしいのだけど……。
「私には精霊がいます。力仕事では確かにカナデさんには劣りますが穴を掘った後調査を知るならライチーさんがいればはかどると思いますよ」
それならライチーについて来てもらうだけでレナスさんはいなくても……と一瞬考えてしまった。
いかんいかん。それではレナスさんが必要ないと言っているようじゃないか。
「ん~、でもぉレナスさんが残った方がいいんじゃないですかねぇ」
「……何故、ですか?」
妙にタメを作って聞き返すレナスさん。
「同窓会の調整どうするんですかぁ?」
「あっ……そうだった」
同窓会はアールスが帰って来てからきちんと日程を決めるつもりだった。
しかし今の予定だとアールス達は僕が依頼に行っている最中にグランエルに到着するはずだ。
そこから僕が帰ってくるまで同窓会の調整を行えないのは確かにまずい。
「私がナギさん達の同級生に会って話を聞くというのはちょっとぉ……」
「くっ、た、たしかにそうですね。ナギさんが聞きに行けない以上私が行くしかありません」
「引き継ぎの連絡の為にも僕とレナスさんで回らないとね……カナデさんが気づいてくれて助かりましたよ」
「でもぉ、大分長く滞在する事になりそうですねぇ」
「そうですね。でも逆に丁度いいかもしれませんよ。ヴェレスは春になっても雪に閉ざされているらしいですからね。今は四月、出発する頃には五月になりそうですね。そこからフソウまでは大体二ヵ月半かかって、七月の半ばに到着する。
さらに観光やらなんやらで時間を使うでしょう。
そして、フソウからヴェレスまでは冬だと半年かかるらしいのでまっすぐ行くとまた二月頃についてしまいますけど……」
ミサさんの情報によるとフソウからヴェレスに行こうとすると途中に山があり、冬になると危険なので通れなくなる。
しかし、山を避けたとしても雪の影響による通行止めが増えたり道が悪くなるので歩きで行こうとすると半年はかかってしまう様だ。
ちなみに山の中腹に存在するヴェレスまで冬に登るのは自殺行為だとカナデさんは言っていた。
「その前に私の目的地であるエウネイラに行ったり色々寄り道すれば雪解けの頃に行けるかもしれないって事ですね~?」
「その通りです」
「エウレ湖の見ごろは確か冬と雨期である六月から八月だとカナデさんは言っていましたね。冬に行っても無駄足にならないのは素晴らしいですね」
「ですですぅ~。冬は湖全体が凍ってどこまでもまったいらに続く氷原が見れて滑って遊ぶ事が出来るらしいですよぉ」
「こっちに伝わってきている本だけじゃ知りえなかった情報ですよね」
「ミサさんに出会えて本当に良かったですねぇ」
そんな訳で話し合いの結果カナデさんが依頼に同行する事になった。
たとえ仕事に行く前にアールスが早く到着してもついて行く人数は変わらないだろう。
急に人数が変わっても向こうの迷惑になるからだ。
後はジーンさんに依頼を受ける事を伝えて組合で手続きをすれば特別授業の準備に集中できるな。