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アイネの挑戦

 アイネの一試合目の相手はカナデさんと同じ年位の若い男性だった。その相手との試合は無傷で勝負が決まった。

 相手も中々の手練れだったのだけれどどうやら闘士としてははたから見ても分かるほど優しすぎる気性のようで小さなアイネ相手に本気で戦えなかったようだ。

 アイネは試合が終わった後合流した時とても怒っていた。どうやら試合の途中からずっと手加減されていた事に怒っていたようだ。

 僕としては怪我がなくて安心はしたけれどその事を伝えたら余計に怒らせると思い口には出せなかった。


 二日目の二試合目は全身鎧で防御を固め分厚い盾を両手に二つ手に持った人が相手だった。

 全身を防具で覆っていて動きが鈍いかと思ったが技術力が高く魔法は恐らくはブリザベーションがかけられている盾で防ぎ、さらにアイネの攻撃を鎧の曲面で流したり、武器を狙った反撃で武器を弾いていた。

 固有能力で時間の流れを遅くし攻撃を確実にかわし、足元を狙った魔法で相手の体勢を崩し、頭部に攻撃を集中させ相手の集中力を削り続けた。

 そうやって無理やり作り相手に隙を作らせ、攻め続けた結果最後には膝をつかせ勝利する事が出来た。

 目立つ怪我も負わずに終わったので僕は胸をなでおろした。

 そして当の本人であるアイネは満足の行く試合だったらしく嬉しそうに試合の内容を長い時間語った。

 

 三日目の三試合目はアールスとも戦った事のある女性闘士だった。僕はアールスに指摘されるまで忘れていたが、アールスはきちんと覚えていて試合中腕が上がっている事を看破していた。

 初っ端は魔法の打ち合いが始まり、アイネは魔法を避けつつ接近を試みた。

 罠として設置されていた魔法陣をきちんと看破し、素早い動きで終始有利を取れていたが、ついにアイネが血を流してしまった。

 血が流れた時眩暈を起こした。レナスさんが僕を支えてくれたおかげで意識を保つことが出来た。

 けど血が流れたの一回だけではなかった。覚悟をしていたはずなのにそれでも身体の震えは止まらなかった。

 試合はやはりアイネの勝利で終わった。僕も何とか泣かずに済んだ。

 試合が終わるとようやく震えは止まったが表情はすぐれずレナスさんにアイネに会う事を止められた。

 少し時間を置いてからアイネと合流するとアイネは先日と同じように嬉しそうの試合の話をしはじめた。

 とりあえず試合中僕が震えていた事が話題に出ずに済んだ事は幸いだ。


 四日目の第四試合。対戦相手は軽装の中年の男性だった。

 武器はアイネと同じ槍。アールスは男性の構えを見て『あっ、強い』と漏らした。

 僕は構えだけだと観客席からという事もあって相手の力量は分からない。

 けど動き出せばその力量の高さが分かった。動きが精錬されている。一見すると無駄そうな動きも良く練られた戦術に(もと)づく計算された動きに見えた。

 一方でアイネの方はいつもと比べて明らかに精彩に欠けていた。

 恐らく先日までの疲労が抜けきっていないんだろう。当然と言えば当然だ。いくらヒールがあって怪我を治せるからって疲労まで完全に癒せるわけじゃない。とくに精神の疲労は。

 それに昨日失った血だってヒールで戻す事は出来ない。アイネは背が低いから大きな人と比べると少量の出血でも割合で考えたら不利だ。

 アールスは超人的な体力を持っているから十日間連続で戦えた。けど、アイネが人と試合形式で連日戦うのは初めてのはずだ。普通の人だったらどれくらい連続で戦えるだろう?

 試合の内容は魔法による応酬は行われず武器による真っ向勝負が行われた。そして、打ち合いが十を超えた所でアイネが武器を落とし決着がついた。

 アイネの負けだ。

 アイネに怪我はなかった。しかし、それは相手に完全に力量で負けていた為傷つく事もなく負けてしまったんだ。

 合流したアイネは悔しそうにしつつも楽しかったと言っていた。負けた事は気にしているが落ち込んではいない様だった。


 五日目は前日の反省を生かしてアイネは休息を取った。

 負けてしまったから明日出発するので闘技場に挑戦出来るのは今日で最後だけれどいいのかと聞くと、アイネは自分の体調を鑑みて旅の事を考えるともう無理は出来ないと答えた。

 アイネの答えに僕は肯定する事しかできなかった。馬車があるからアイネが休みながらでも進むことは出来るけれど、アイネの性格を考えたら交代制でもないのに大人しく馬車の中で休んでいるほうが苦痛だろう。

 せめてにと今日はアイネの為に美味しい物を食べに行く事したのだった。


 そしてドサイドを出発し次の目的地であるグラード山へ向かう。

 今回は露天風呂が目的なのでグラード山西側に広がる高原を進む事になる。

 少しずつ高度が上がるので今回は高山病に身体を慣らす余裕があるだろう。 

 もちろん飴もガルデを出る前に用意してある。

 心配なのはヘレンだが、ヘレンはどうやら山で魔獣になってそれから下りて来たらしい。それなら高山病に対する耐性もあるだろうか?

 ただ山を登るという事でを馬車を引くアースとヘレンの負担増加が懸念される。

 登山道の傾斜は緩やかだし普通の馬車も通る道を行くので登れない事は無いと思うのだけど。

 ……いや、アースは問題ないか。どうせまた地面を動かして移動するだろう。

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[気になる点] >僕が震えていた事が話題に出さずに済んだ事は幸いだ。  僕が震えていた事が話題に“出ず”に済んだ事は幸いだ。  と  僕が震えていた事“を”話題に出さずに済んだ事は幸いだ。 …
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