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北の遺跡でⅡ その6

 アロエが古代の文字を学者さん達に教えてから数日、再調査のため遺跡が立ち入り禁止になった。

 これにはレナスさんも悲しむかと思ったがそんな事は無く新たな発見の予感に胸を高鳴らせている様子だった。


「それでアロエは何を見つけたの?」


 今日の治療を終えた後のまったりとした休憩時間に僕の護衛をしてくれているアロエに事の発端を聞いてみる。


『んー? 教会の地下に避難所があるって事くらいだよ』

「避難所? 地下に?」


 たしか地図の教会には特に何も記載されてなかったし僕が調べた時も何も見つからなかった。

 長い年月のうちに入り口に土でも詰まって分からなくなったのかな。

 雪を解かす際に土が泥になって隙間を埋めちゃったって言う可能性もあるかな?

 でも残念だな。そういうのがあったなら僕が見つけたかったな。


「でも意外だね。今まで昔の文字を読める人がいなかったなんて。

 研究して読めるようになってるもんだと思ってたけど」

『文字が欠けて読めない所もいっぱいあったからねー。元の単語を知ってないと分からないのが多かったみたい』

「ふぅん。なるほどねぇ。アロエは欠けてる文字を推理して読み解いたって訳か」

『分かるのだけだけどねー』

「ちなみに他に何か分かった事ってあるの?」

『日記みたいなのが多かったから後分かったのは暮らしぶりくらいだよ』

「日記かぁ……千年前って事は偉い人のかな」


 魔物の大進攻の前は大きな都市の庶民は文字の読み書きは出来たと歴史の授業で習った記憶がある。

 皮紙は貴重品で庶民が日記として使うには無理があるだろうし、紙も当時は出回っていなかったはずだ。

 粘土板や石に掘ってしまっておくというのもかさ張るし重いから日記として庶民が利用したとはちょっと考え辛いか?


『っぽい』

「ヴェレスには千年前の事知ってる精霊はいないの?」

『いないかなー。多分今ヴェレスで存在してる精霊の中で一番長生きなのは王様の精霊だと思うけどあの人でも八百年しか生きてないはずだよ』

「そうなんだ。ヴェレスの人達が今の土地に来る前に住んでた所ってどんなところだったの?」

『んー。昔過ぎて私も良く覚えてないけど今のヴェレスと変わらず寒い所だったよ。

 あっ、あとね海に囲まれた島だったはずだよ。島って言ってもすっごく大きな島だけど』

「ふぅん? もしもヴェレスの人達のご先祖様達がこの辺りに住んでたとしたら海を渡ったのかな」


 西の方に海があってさらに島がある? そういえば西の方に海があるっていうのは聞いた事がある気がする。

 海は魔物と魔獣、魔魚の住処で渡るのは今の技術では空を行かない限り不可能なはず。一体どうやって海を渡ったんだろう。今のヴェレスに移った時の様に凍った海を渡ったのだろうか。


「残ってる人とかいるのかな」

『どうかなぁ。分かんない』

「そうだよね……」


 今回の事でグライオンとイグニティの西への調査が盛んになるかもしれないんだよな。

 その内調査隊とか組まれるのだろうか。その場合は軍が主導なのかそれとも冒険者組合が主導なのか。どっちでもいいか。その時にはどっちの国にもいないだろう僕には関係のない事だ。


「それで、レナスさんとは今回の事を話せた?」


 少しは慣れた入り口の近くで縫物をしているレナスさんに聞こえないように控え目な声で聴いてみるとアロエは満面の笑みを浮かべて頷いた。


『うん。レナス喜んでくれたよ』

「それはよかったねぇ」


 二人が契約を交わす日は近いかもしれないな。




 翌日、全ての冒険者に向けて学者たちから要請が出た。

 その要請というのが発見した地下空間の探索の為の護衛だ。

 どうやら調査隊が教会の地下で新たに発見した地下室はとても広い空間で、さらに人が数人通れるような穴が開いておりそこの調査の為に冒険者に護衛を頼みたいらしい。

 軍ではなく冒険者を頼みにするのは個人技の技量は平均的に冒険者の方が高い為少人数での行動なら冒険者の方が向いているからだ。

 地下で発見された穴の中は狭いと思われるからだろう。


 調査の期間は今日から五日間。それ以上は今回の遺跡調査期間が終わる為調査できなくなる。

 急いで調査する為にとミサさんと重傷人が出た時に素早く処置できるように僕に同行を求めてきた。

 アロエの契約者であるミサさんはともかくなぜウェイリィさんではなく僕なのかと聞くと魔素が濃い事が考えられる為なるべくマナの多い人間や魔獣について来てほしいのだと言う。

 魔素は濃いとマナの少ない人間は魔人化する危険が高まる。

 そこまで魔素が濃くなくても魔物がいて狭い空間の中で魔法を使われたら非常に危険だ。

 少人数で魔素、魔物の魔法から身を守るにはマナの量が多い人間や魔獣がいてくれた方がいい。

 そこで第五階位の神聖魔法を使えパーフェクトヒールで一日に数人治療できるマナの量を持つ僕と小さいが魔獣であるヒビキとゲイルに同行してほしいのだと言う。

 要は僕達でマナの壁を作って欲しい訳だな。


 しかし、治療師が同行するとなると護衛の人もついて来て結果人数が増えてしまうがそれでもいいのか、そう聞いてみると僕の役目はあくまでも後方である程度安全が確保された場所で調査をしている学者さん達の傍に居てもらうのでむしろ一緒に守って欲しいそうだ。

 そういう事ならレナスさんもつれていけるか?

 明かりの確保としてライチーがいてくれれば心強い。


 僕とミサさんは今日から早速ついて来てほしいらしく、護衛の人達も含め追加の報酬も約束された。

 とりあえず護衛の人達と要相談だな。

 そして、相談の結果僕達もついて行く事になった。

 相談の中安全性の懸念も出たけれど精霊がいるのと、後方にいるという事で先行し調査する冒険者達に何があっても態勢を整える猶予はあるだろうという事で可決された。

 ただカナデさんの様に武器の関係で遺跡内では護衛に付けない人もいるのだが、そういう人は夜の護衛に回ってもらう事になった。

 魔獣達にも話を通しておきヒビキとゲイルについて来てもらい、後は念の為に完全武装していく。

 準備は整った。遺跡へ行こう。

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― 新着の感想 ―
[一言]  おおっと?  これは何か新しい発見があるフラグ?  ただ未発見エリアを探索しただけに終わる可能性も否定できないけど、なんか期待できそう。
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