閑話 別れ、想い、決意
どんどんナギが遠ざかって行く。
今すぐ馬車から飛び降りたいという気持ちを我慢するのはすごく苦しい事だった。
ナギは私にとってはとても大切な人だ。
他に遊び相手がいなかったというのもあるけれど物心ついた時から私は何時もナギの傍にいた。
ナギは最初の頃は簡単な遊びを教えてくれた。鬼ごっこやかくれんぼ。○×ゲームやけんけんぱなんて言うのも教えてもらった。
○×ゲームとけんけんぱは学校の友達に聞いても誰も知らなかったからナギが考えたのか、ぜんせっていう所で覚えた遊びなんだと思う。
算数を教えてもらったのはいつの頃からだったかな。もうよく覚えてないけど、算数が始まってから私が九九を覚えるまでは殆ど勉強してたような気がする。
私はナギが分かるのに自分が分からない事が悔しかった。運動なら負けてなかったのに、頭を使う事には絶対に勝てなかった。今思うとそれは当然なんだけど。
ナギは村にいた頃の私が大人しかったというけれど、私はただナギの真似をしていただけだ。私と同い年なのに大人っぽい雰囲気のナギに負けたくなくて私は精一杯背伸びしていた。
けど、グランエルに来てから私の好奇心が刺激されて大人っぽく立ち振る舞う事を忘れてた。
レナスちゃんにフラフラするなって注意された時があるけれど、自分でもこんなに好奇心が強いとは思わなかったんだから仕方ないよね。
元々村の外の世界には興味があって冒険者になりたいと思っていた……ううん、今でも思っている。
できれば私もナギと一緒に……でも、それはできない。私は魔物を倒してお母さんを守らなくちゃ。お父さんの代わりに私が守るんだ。それがお父さんへのせめてもの償いなんだから。
そのためにも私は強くなる。私は勇者なんだからできるはずだ。ナギだって私を褒めてくれたんだ。絶対にできる……絶対に。
馬車が大きく揺れて懐からレナスちゃんから貰ったペンダントが零れ出た。
太陽と月の飾りはレナスちゃんを思い出させる。
太陽の赤はレナスちゃんの瞳の色、薄水色の月はレナスちゃんの髪。これさえ持っていればきっと私はレナスちゃんをいつでも思い出せる。
レナスちゃんはナギとは別の意味で大切な人だ。
たぶん、私にとっての初めての友達。初めての親友だ。
最初の頃は何を言っているのかよく聞き取れなかった。けれど、それが私には面白かったんだ。
この子は何て言ってるんだろう。この子は今どんな気持ちなんだろう。この子は何をしたいんだろう。すごくすごく気になった。
ナギはすぐに言葉が通じ合ってて、それが悔しかったっていうのもある。
ナギに負けたくなくて、レナスちゃんと仲良くなりたくて……私は一生懸命レナスちゃんの話す言葉を覚えた。
もっとも、話せるようになった頃にはレナスちゃんも普通に話せるようになったから無駄になっちゃった。
せっかく覚えた妖精語なんだからと、私は皆には内緒でこっそりと妖精さんと契約しておいた。生活魔法使うなーってうるさかったけど、無視した。そんな命令聞く理由なんてないもん。
結局その事を伝えそびれたけど秘密のままにしてもいいか。
次に会う時に自慢しよう。成長した私を見てもらおう。そして……。
アールス的には二人との関係は
レナス 親友
ナギ 友達ではなく家族でもなく、よく分からないけど特別で大切な憧れの人
といった感じです




