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北の遺跡で その5

今日は二話投稿します


今話はその一話目です

 整備隊の遺跡の滞在予定は三日。作業の進み具合で前後する可能性はあるが食料は馬車に詰めて持ってきているので余裕はある。

 整備の内容は遺跡の状況を把握しつつ魔物が隠れられそうな物陰をなるべく減らす事らしい。

 遺跡はとても広く雪に埋もれている状況で三日で回り切れる規模ではない。

 けれど春になれば雪が溶ける。時折雪の中に魔物が潜んでいたりして雪が解けたら早めに駆除しないと増えてしまう様で去年はそれで苦労したんだとか。

 だから今の内に出来るだけ調査し遺跡調査の拠点となる場所の雪を排除しておきたい様だ。



 整備隊が遺跡にいる間は僕達が野営地に魔物が寄ってこないように警備をする。

 壁はアースよりも高く人が歩ける厚さを持った物を用意した。もちろん階段も。

 しかしこれはちょっとやり過ぎたかもしれない。もう片方の警護している冒険者の一団の魔法使いに引かれてしまったのだ。

 ミサさんは今後の為のいい宣伝になったと前向きに捉えていたが……。


 壁の上を交代で巡回していると時折遠くに魔物の影が見える。僕が見つけた場合はなるべく倒しているが倒そうとすると矢を消耗するカナデさんの場合は僕かレナスさんかミサさんを呼ぶように指示を出してある。

 フォースだと中級以上の魔物を倒すのは難しいが別にフォース以外の魔法なら倒すのには問題ない。そう考えるとフォースやサンライトは別にいらない気もしてくるが……いやいや。魔法陣や神の文字の情報が失われた時フォースやサンライトがあればきっと役に立つさ。


 高階位の神聖魔法であるサンクチュアリも試したいのだけどこれは未だに試す機会がない。

 サンクチュアリは指定の範囲に魔物も魔素も入り込めない結界を張る魔法なのだけど展開には結構マナを使い、魔獣とマナを共有できる今でも狭い範囲でしか無理だ。

 一度範囲を指定するとその場から動かせないので移動しながら維持する事も出来ない。

 結界にはもう一つ特徴があり物理攻撃はもちろん魔素由来の魔法以外の魔法を通す事で一方的に攻撃が出来るようになるのだ。

 多分本来は味方を守りながら中から攻撃させる魔法なんだろう。僕がマナの共有できるようになったから重要度が格段に上がった魔法だ。

 一応移動の最中にサンクチュアリがある事を思い出し魔物に襲われたら使ってみたのだが毎回効果を試す前に魔物を倒せてしまった。

 使いたいけど使う時は割と危険な状況になりそうであまり使う状況になって欲しくないという板挟みの状態なのだ。


「はぁ……」

「溜息をついてどうしました? なにか問題でもありましたか?」


 一緒に見回りをしているレナスさんが心配そうに繋いでいる手を強く握りしめてくる。


「いやほら、僕シエル様に特殊神聖魔法の試用してほしいっていわれてるじゃない。けどサンクチュアリがなかなかねぇ……」

「効果を聞いた限りでは非常に強力な効果だと思いますが」

「でも使いどころが限られててマナの消費が激しい。試用って言う目的からするとちょっと使いにくいんだよ。あったら絶対に役に立つ魔法なんだけど」

「思ったんですが魔物を始点に範囲は決められないのですか? そうすれば閉じ込められますが」

「それがね、始点が自分から離れるとその分強度が減るかマナの消費量が上がるんだ」

「その実験はまだしていないですよね? 実際に試してどの程度なのか確かめてみたらどうでしょう?」

「むっ。たしかにそうだね。本来の使用用途に拘り過ぎてたな。ありがとうレナスさん。レナスさんの助言でいつも助かってるよ」

「い、いえ……そんな」

「それにしても魔物が来なくて平和だね」

「そ、そうですね」


 氷の壁の外側に目に見える範囲の三分の一の範囲の地面には雪は無く、雪が残っている場所もすべて均してあり魔物が身を隠せるような場所もない。

 ……我ながらやり過ぎたと反省してる。


「天気もいいし風も穏やか。このまま何事もなく時間が過ぎて欲しいよ」

「少し退屈ですけどね」

「やっぱり遺跡見たい?」

「見たいです」

「調査が終わったらせめて入り口から中を見る位の許可貰おうか」

「いえ、やめておきます。中途半端に見ると余計に悔いが残りそうですので」

「そっか……」


 この子の笑顔をみたいな。

 やはり春から大規模に募集が行われるという依頼を受けられるように調整しないといけないな。

 他の皆にも受けたい依頼があるかもしれないからそこらへんを……。


「ナギさん。あそこに怪しい影が」


 レナスさんの指さす方を見るとたしかに遠くて小さく見えるが四足獣らしき怪しい影がある。

 この距離では魔物か普通の動物か見分けがつかない……が、蜘蛛の糸を伸ばし探ってみれば正体がわかる。

 マナは感じないので魔物だ。伸ばしたマナをそのまま魔物に巻き付けるようにしサンダーインパルスを使う。

 遠くて見えないが強力な電撃は魔物の身体を破壊して核も破壊できる。


「フォースいりませんね」

「そういう事言っちゃ駄目だよ」

「すみません……」

「まぁ割と適当に選んで授けたみたいだけどさ……」

「適当なんですか!?」

「うん……本来はシエル様って神聖魔法を授ける役割じゃなくてさ、一応は用意してたけど自分の力が使われることはないだろうって思ってたみたいだよ」

「それで試して欲しいとナギさんに言い渡したんですね」

「うん。他の神様の神聖魔法との調整とか難しいみたいだよ。僕としては人にはあまり効かないから安心して攻撃出来るからいいと思うんだけど」

「ああ、たしかカナデさんに試し撃ちさせてもらっていましたね」

「そうそう。マナの量で痛みも変わるんだけど、実際どれぐらい差があるのか分からなかったからね」


 もちろんまず最初に自分で試してみたが肌が焼かれたような痛みが一瞬ある程度だった。

 しかし、カナデさんはほとんど痛みを感じていなかった。

 カナデさんに頼んだのは一番マナの保有量が少なかったからだ。

 マナの保有量が少ないという事はそれだけ魔素での身体の変化が少ないという事だ。

 これに関してはサンライトも一緒だ。

 マナが少ない相手ならほとんど痛みを感じないから乱戦時でも誤射を恐れずに使えるのは強みだ。

 逆に僕位マナを持っていると集中力が乱されるだろうから難しい所ではあるのだけど。


「後、他人のマナに邪魔されないって言うのも長所だよね」

「そう考えるとフォースはやはりあった方が便利なんですね」

「そう、便利なんだ。中級以上は倒せなくても足止めは出来るしね」

「その足止めも他の人の魔法の邪魔にならない。強いですね」

「強いんだよ」

「サンクチュアリはツヴァイス様の特殊神聖魔法と被る所がありますが消費マナの差で区別がつきますね」

「ツヴァイス様はこの世界そのものだからね。神様の力を他の神様よりも引き出しやすい分マナの消費が少ないんだよ」

「ツヴァイス様だけは特殊神聖魔法に魔法陣を使っていて特別ですよね」

「そうだね。そう言えばレナスさんってまだ第一階位までしか神聖魔使えないけど、まだ授かれないの?」

「はい……やはり気持ちの問題なのだと思います。どうも信じきれないというか……」

「そっか……」

「すみません……」

「謝る事じゃないよ。見えない存在ってやっぱ信じにくいだろうし」


 これでルーネイト様大好きなアールスと話が合うのも不思議なんだよな。

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