マナの共有
《ヘラジカ・ペネトレイトウォーターが仲間になりました》
いつものだ。もしも種族名を確認する前に仲間にしていたらどうなるんだろうか?
《魔獣の誓いが強化され魔獣とのマナの共有が可能となりました》
「ほわ?」
今……何? まなのきょーゆー?
「ほわわ?」
「な、ナギさんどうなさったんですか」
「いや、今神託が降りたんだけどちょっと理解できなくて……」
「理解できない……ですか?」
「う、うん……なんか魔獣とのマナの共有が可能になったとか言われた」
「マナの共有!? すごいじゃないですか!」
「こ、声大きいよっ」
周りに魔獣達以外に誰もいない事を確認し話を進める。
こんな事が知られたらどんな目で見らるか分からない。
「す、すみません」
「とりあえず共有の仕方を確認してみる」
固有能力というのは所有者なら意識すればどんな効果があるのか、そして使い方が何となくわかる。だけどあくまでもなんとなくであって能力の詳細までは分からない事が多い。
とにかくマナの共有に意識してみる。すると何となくだがわかった。
マナの共有は恐らくだが相手の許可を得れば出来るはずだ。
対象も僕と魔獣だけでなく魔獣同士でも共有は可能なはずだ。ただ魔獣同士の場合は意思の疎通が図れないと共有は出来ない。それも一方通行ではなく互いにだ。
僕の仲間の魔獣で互いに意思の疎通が図れるのはナスとゲイルだけだ。
「とりあえず試してみるか」
問題は誰に試すか、だけれど……折角だからヘレンにしようか。
「ヘレン。早速だけどマナを共有してみてもいいかな?」
「くー?」
「マナが分からない? じゃあ今から教えるよ」
どうやらずっと一人でいた弊害かそれとも魔獣になって意外と日が経っていないのかマナという物が分からないみたいだ。
たしかに固有能力や生活魔法を使う際にはマナを意識する必要はないし、スキルに魔力感知や魔力操作がなかったからマナの存在に気づかなくてもおかしくないか。
そうなるとナスが普通にマナの事を知っていたのは魔眼を持っていたからだろうか?
取り合えず考察は横に置いといて幸いな事に仲間になった時点でスキルは共有され魔力感知や魔力操作は僕やナスと同等まで引き上げられているはずだ。
まず行うのはマナを感じさせることだ。
「じゃあヘレン。まずは気分を落ち着かせる為に息を大きく吸ってゆっくり吐くを繰り返すんだ」
ヘレンは僕の言う通りに深呼吸を繰り返してくる。
それにしても身体が大きいだけあってすごい肺活量だ。
息をゆっくり吐いているはずなのに僕の肩に乗っているゲイルが吹き飛ばされそうになり僕にしがみついてきた。
「落ち着いた? 落ち着いたら今度は自分の身体の周りにあるものを感じ取るんだ。今の君なら出来るはずだよ」
「くー」
「出来るって信じる事が大切だからね」
そう言ってヘレンのマナに変化がないかどうかを注視する。
変化はすぐに起こった。
ヘレンのマナがうごめいている。
「くー? くーくー?」
「大丈夫。それでいいんだよ。マナを感じ取れたら脚を伸ばすような感覚でマナを動かしてごらん」
「くー」
ヘレンのマナの一部が僕に向かってくる。
そのマナを僕は自分のマナで受け止め繋げる。
「くー?」
「こうやってマナ同士を繋ぎ合わせて相手のマナを感じ取る事も出来るんだ。でも親しい人以外には勝手にやっちゃ駄目だよ? 相手に驚かれちゃうからね」
もっとも気づくのは魔力感知が出来る人だけだけど。
「くー」
「次は僕がやっているようにマナを動かしてみようか」
試しに自分のマナを動かすとヘレンは同じように自分のマナを動かす。
まだまだ拙いが今日初めてマナを認識した事を考えれば十分だろう。
「ヘレンは魔法って知ってる?」
「くぃー?」
「そっか。知らないか」
野生動物でも水分補給には魔法を使っている。それは親や仲間から水を生み出している所を見て学んでいるのだろうと言われている。
だけどそれは魔法を知っているという事にはならないのかもしれない。
願えば水が出てくる。そういう現象として認識している可能性がある。
「望んだ時に何もない所から水が出た時がある?」
「くー」
名前にペネトレイトウォーターと付くだけあってさすがに生活魔法で水を出した事くらいはあるか。
「それは魔法の力でね、今動かしているマナを使って生み出しているんだ。こんな風に」
水の玉を生み出してみせる。
「これぐらいじゃ大きくは減らないけど一杯出すとマナはなくなって時間が経たないとマナの量は元に戻らないんだ。
僕のマナの量は繋がってるから分かるだろうけどヘレンよりも少ない。
けどマナの少なさを解消できるかもしれない能力が使えるようになったんだ。試してもいいかな?」
「くー」
「ありがとう。じゃあヘレンのマナと僕のマナを共有してもいいかな?」
「くーーー」
ヘレンが了承してくれると同時にマナが広がる感覚を覚えた。
分かる。今ヘレンと僕のマナが一つになっている。
「ヘレン。どこでもいいからマナを動かしてみて」
そう頼みマナを動かしてもらい、その動いているマナを僕の方からさらに動かそうと試みる。
最初は抵抗があったがすぐに抵抗がなくなった。
「ヘレン。譲らないで最後まで抵抗してみてくれないかな」
そう頼めば今度は僕がどう動かそうとしてもヘレンの動かしているマナは動かせなかった。
どうやら主導権は先に動かした方にあるようだ。マナの消費についても調べたいが、それは後でいいか。
「じゃあ次はゲイル。ゲイル、僕とマナの共有をしてくれるかな?」
「きー」
了承を得てマナの共有をするとまたマナが広がった。
「ゲイル、ヘレンのマナと僕のマナ区別つく?」
「きぃ」
「じゃあヘレンはゲイルのマナの区別つく?」
「くぃん」
魔獣同士が共有しなくても僕が仲介すればマナは共有できるのかな?
「じゃあまずはゲイル、全部のマナを操ってみて」
「きー」
何の問題もなく全てのマナが動く。
「ゲイルもういいよ。ありがとう。じゃあ次はヘレンが同じようにやってくれるかな」
「くー」
こちらも問題なく動く。
つまりいつ誰が誰と共有したかは関係なく、共有しているマナは全て問題なく動かせるという事か。
共有を破棄するのは簡単だ。共有をやめる意思を相手に伝えればいい。
「じゃあヘレン。共有は一度やめるね」
そういうだけで一気に半分以上のマナが少なくなるのを感じた。
僕とゲイルのマナを合わせてもヘレンの量にはかなわないから喪失感を強く感じるんだろう。
「ゲイル。ヘレンの分のマナが無くなったのは分かった?」
「きー」
「うん。じゃあ次はゲイル、僕から離れてみようか具体的には本来何もしていない状態だとお互いのマナが届かない位の距離ね」
「ききー」
ゲイルが空を駆けて離れていき、ある程度まで離れるとマナがぷつりと途切れた。
それでもまだ繋がっている感覚はあり、ゲイルのマナを操れる様だ。
とりあえずマナを操りゲイルに合図を送って戻ってきてもらう。
はたして有効範囲はどれぐらいなのだろう。
精霊のように距離に制限がないのだったら連絡に使えるかもしれないな。
それに精霊のように離れた場所からでもマナを引き出せれば便利だ。色々確かめないと。




