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三人の休日 その2

 ナスを小屋に帰してお昼を寮で食べた後は街中を散策するらしい。アールスは僕とフェアチャイルドさんと手を繋ぎ、北西の地区をゆっくり歩いた。

 道中アールスが最初に興味を引いたのは寮の近くにあった教会だった。

 教会は外からではどこの神様を祀っているのか分かりにくい。聖印と呼ばれるシンボルマークが入り口の上に飾られているけれど、目の前の教会聖印は何処の誰の物なのか分からなかった。僕の知っている聖印はルゥネイト様の物だけだ。

 もしシエル様の聖印を作るとしたらどんな物がいいだろう。やっぱりクジラかな?


「どの神様の教会かなぁ」

「どこだろうね」


 一応神様の話は昔ルゥネイト様の教会のシスターから聞いた事がある。

 この世界の神様は五柱いる。

 天と地を常に見守り続けている二つの顔を持った創造神ツヴァイス様。

 大地に恵みを与え、世界に緑をもたらす豊穣神ルゥネイト様。

 魔物の軍勢を常に抑え続け世界を守り、生き物に守りの加護を与えている軍神ゼレ様。

 人に知恵を授け、魔物と戦う術を授けた賢神ラーラ様。

 天秤を持ち生きとし生けるものの罪を計り罰を与え、死後の転生を管理する転秤神ザースバイル様。

 この五柱が神話の時代から天と地を支える柱として伝えられている。

 アールスが僕から繋いでいた手を放し教会の扉を開ける。


「入るんですか?」

「うん」


 再びアールスが手を繋ぎ直してきた。

 中に入ってみると人は居ないけれど、厳かな雰囲気は損なわれていない。

 僕はこういう所が苦手だ。こういう所の重苦しい空気を吸うと意味もなく緊張してしまう。


「誰もいないねー」

「うん。でも、神様は見てるよ」


 入口から真正面の祭壇の向こう側には本を片手に持った大きな女性の像が鎮座している。


「あー、ラーラ様だ。ここラーラ様の教会だったんだね」

「たしか知恵を司る神様ですよね」

「そうだよ。魔法を編み出したのもラーラ様だって言われてるらしいね」

「へー、やっぱりナギって物知りー」

「本に書いてあっただけだよ」


 シエル様に昔神様の姿について聞いた事あるけれど、シエル様はツヴァイス様以外とは面識がないらしくどんな姿をしているのかは分からなかった。

 けど、直接見たらきっと精神崩壊起こすんだろうな。シエル様と同じ存在っていう事はきっとそういう事なんだと思う。人が触れていい範囲外の存在なんだ。


「おや、人の声がすると思ったら珍しいお客様だ」


 祭壇の横にあったドアが開き男の人が出てきた。恐らく服装からして神父様だろう。


「こんにちは!」


 アールスが元気に挨拶をする。僕とフェアチャイルドさんもアールスに続いて頭を下げつつ挨拶をした。


「こんにちは。今日は何か御用かな?」

「この教会誰の教会か確かめに来たの!」

「おや、それで誰だか分かりましたか?」

「うん! ラーラ様だよね」

「ええ、そうですよ。よく分かりましたね」

「だって女の神様はルゥネイト様かラーラ様だけだもの。私はルゥネイト様を信仰してるの」

「ルゥネイト様の信徒でしたか。それなら納得ですね」

「神父様、ラーラ様の信仰魔法ってどんなの使えるの?」


 ぐいぐいと突っ込んでいくな、アールス。


「そうですね。ラーラ様の魔法で代表的な物は『情報開示(ステータスオープン)』ですね」


 ステータスか。名前は少し違うけれど僕も使える。シエル様だけの魔法じゃないんだ。


「どんな効果なの?」

「自分や他人の能力値を数値にして表すことができるんですよ」


 僕のよりも高性能だった。


「うわぁ~やってみてやってみて!」

「個人情報を晒す事になるけれどいいですか?」

「えー、んー。別にいいよー」

「分かりました。『情報開示(ステータスオープン)』」


 苦笑しつつ神父様がアールスに手をかざし名を唱えると半透明の青い板が空中に現れた。僕の魔法のよりも大きい。

 しかも能力だけじゃなくて身長や体重まで載ってるじゃないか。

 アールスは出された自分のステータスを口をぽかんとあけながら見ている。


「レベルは12ですか。まだ幼いのに素晴らしいですね」

「レベル?」


 この世界にレベルの概念あったんだ。


「レベルって何?」

「どれだけの実力があるかを数値で表しているんですよ。このレベルならそうですね、冒険者の二階位くらいの実力でしょうか」

「はぁ~、そんな事も分かるんだ。すごーい。ナギとレナスちゃんもやってもらいなよ」

「お願いできます?」

「いいですよ」


 神父さんは優しく微笑み僕とフェアチャイルドさんのステータスを出した。

 結果僕のレベルは15、フェアチャイルドさんのレベルは8と出た。

 僕の結果にはみんな驚いていた。どうやら魔力(マナ)の量や魔力操作(マナコントロール)の熟練度が高いからレベルが高いようだ。

 レベルというのはその人の総合的な強さを表していると見ていいだろう。

 しょっちゅう見てるわけじゃないから確かな事は言えないけれど、僕の『ステータス』との数値の差異はないと思う。ただ、見られるのは本当に数値だけで、スキルや固有能力は見られないみたいだ。性別すらない。


「あの、固有能力とかは調べられないんですか?」

「それはまた別の呪文です。固有能力と所持スキルを見るのは『解析(アナライズ)』ですね。ただこれはその人の経歴まで見る事になるので通常は人に使う事は禁じられています」

「なんだー」


 経歴ってどこまで見れるんだ? シエル様や前世の事ばれたら面倒なんだけど。


「あの、学校で固有能力を調べた事がありましたけど、あれってラーラ様の力なんですか?」

「ええ、そうですよ。アナライズの力を水晶に込めて作った魔力道具(マナアイテム)です。アナライズで調べられる項目を一つずつ水晶に分けているんですよ」

魔力道具(マナアイテム)……」


 この街のお店じゃ見た事ないけれど非売品なんだろうか?それとも高級品で、僕達の行った事のない高価なお店でしか売ってないのかな。


「神父様、今日はお話ありがとうございました。もうそろそろ行かなくちゃ」


 アールスが丁寧にお辞儀すると再び僕とフェアチャイルドさんも同じようにお辞儀をする。


「三人の幼子にルゥネイト様のお導きがありますように」


 神父様はルゥネイト様の様式で祝福をしてくれた。三人ともルゥネイト様の信徒だと思ったんだろうけれど、態々信仰している神様以外の方法でやってくれるとはいい人に違いない。

 アールスもその事に気付いたのか笑顔で返した。

 神父様に手を振って別れ、教会から出るとまた目的の無い散策が始まる。


 時に薄暗い路地裏を歩き、時に友人と出会い、時にお店を覗いた。

 アールスが特に興味を見せたのは武器も扱っている鍛冶屋だった。鍛冶屋の店内に入りアールスは興味深そうに武器を眺めている。

 僕も興味がない訳じゃない。将来どんな武器を手に冒険をするのかと考えると胸が高鳴ってくる。

 僕が使うとしたらどんな武器がいいだろう。魔獣使いになるんだからやっぱり杖がいいかな?後ターバンとマントをつけて……。


「おじょーちゃん。触っちゃ駄目よー」

「えー」


 大人には見えない女の子の店員さんにアールスが注意されていた。学校を卒業したら働けるようになるから本当にまだ子供なのかもしれない。

 そんな店員さんにアールスは首根っこを掴まれている。よほど触りたいのか。


「アールス、駄目だよ。店員さんに迷惑かけちゃ」

「はーい」


 僕が注意すると大人しく聞いてくれた。

 アールスが商品から距離を取ったのを確認すると今度はフェアチャイルドさんの事が気になった。

 フェアチャイルドさんは精霊魔法を使うから武器には興味がないかもしれない。そう思い視線を動かしてみると、案の定フェアチャイルドさんは武器には目もくれず銀細工の商品を眺めている。

 この鍛冶屋で作っているのは主に金属を使ったアクセサリーだ。武器はついでに作っているだけらしい。

 フェアチャイルドさんは銀細工の中でも宝石のついている物を中心に見ているようだ。

 宝石は精霊の住処になると言っていたけれど、その為だろうか?


「フェアチャイルドさん何見てるの?」

「ペンダントを見ていました」


 さすがにアクセサリーは無防備に置かれているわけではない。ガラスのショーケースに入れられている。

 アクセサリーはどれも綺麗だけれど、前世の記憶がある僕からしたら特に細かい細工が施されているようには見えなかった。

 値札に書かれている値段は僕らでも届く物から十年位毎日依頼を受けてようやく買えそうな物まで様々だ。


「意外と安いんだね」

「安い……ですか?」

「だって僕らにだって手が届く値段だよ?」

「それは……たしかに?」


 学校を卒業し働きに出ればお給料は今の収入よりも上がるはずだ。高い物でも気安くは買えないかもしれないけど、たぶん手が届かない値段じゃないだろう。


「ナギさんは、これとこれどっちの方がアールスさんに似合うと思いますか?」


 フェアチャイルドさんが指差したのは二つのペンダントだった。

 一つはなんか赤っぽい金色の鎖と、同じ色の金属で出来ているハートの中に透明な宝石が煌いている。

 もう一つは銀色の鎖に、銀の円盤に赤い宝石が中心から左上にズレた位置に配置されている。たぶんこれは月と太陽を意識してるんじゃないだろうか。

 アールスへのプレゼントだろうか?僕達でも買える値段だから本物の宝石じゃないだろうけど、どちらも大人びたアクセサリーだと思う。


「この二つなら……月と太陽の方かな?」


 フェアチャイルドさんがプレゼントするのなら月と太陽が、二人に似ていて合っていると思う。

 太陽がいつも元気なアールスで月がそんなアールスの傍にいたフェアチャイルドさんって感じだ。


「ん……私もこっちがいいって思いました」


 それなら態々聞かなくても、と思ったけれど口にする事はなかった。きっと後押しが欲しかったんだ。うん。

 どうやらお金を持ってきていたらしくフェアチャイルドさんは早速店員さんを呼びその場でペンダントを購入した。

 いくら安い方のペンダントとはいえそれでも僕達の稼ぎじゃ半年くらいは働かないと稼げない値段だ。それを惜しみなく出すとは、フェアチャイルドさんの懐は広いな。


「あれ?レナスちゃん何買ったの?」

「ん……秘密です」


 意地悪そうに人差し指をマスク越しに唇に当てるフェアチャイルドさん。その仕草がちょっと色っぽいとか思ってしまった……九歳児なのに。フェアチャイルドさん九歳児なのに!

 フェアチャイルドさんは包装された箱を受け取る。アールスはしつこくフェアチャイルドさんに中身を聞くけれど秘密の一点張りだ。

2016/10/03

ステータスオープンから

情報開示(ステータスオープン)

アナライズから

解析(アナライズ)

に変更しました

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