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フォースの謎

 翌日の朝、アイネと会うといの一番に頭を下げてきた。

 アイネから謝罪の言葉を受け取った後僕もアイネにきちんと謝罪をした。

 これで元通り……と行って欲しいがどうなる事か。

 皆が起き出した後いつも通り魔獣達の待つ小屋へ向かった。

 その道中でアールスの今後の予定について聞いておく。

 予想通りアールスは一ヵ月後に開催予定となったお祭りまでドサイドに滞在する事になった。

 となるとやはりまた分かれる必要が出てくるか。

 一応アールスはサラサとの契約を継続しているらしいのでアールス一人が残っても連絡面では困らなくはなったのだけど……。

 簡単に皆に聞き取りしてみるとやはりレナスさんはアールスと一緒にいてくれるようだ。

 連絡の事を考えるとレナスさんは一緒にいた方が便利なんだけれど、別に一緒に来なくても問題がある訳でもないのでここは本人の意思を尊重するべきだろう。

 他の三人は僕と一緒にルーグに行くつもりらしい。その際何故かアイネが僕に対してまるで保護者のような発言をしたのが引っかかるが。

 出来る事なら魔獣達と一緒に住める家を借りたいが、まぁ無理だろうな。


 小屋に着くと僕は昨日シエル様に頼まれた事を確かめる為にまずナスに話しかけた。


「ナス。聞きたい事があるんだ」

「ぴー?」

「ナスは僕と最初に会った時のこと覚えてる」

「ぴ、ぴー……」


 最初に会った時の事が気まずいのか耳を寝かせ俯くナス。

 そんなナスの頭を撫で話を続ける。


「ナスはさ、僕のフォースを食らってたよね。あれって痛かった?」

「ぴー? ぴーぴー」


 よく覚えていないけれど痛かったのは一瞬だけだった気がするとナスは言う。

 なるほど。分解からの再構築が早すぎて痛みも一瞬で収まってしまったのか。そういう事らしいですシエル様。


(それならば効果を変える必要はないでしょうか。いえ、なんにしても魔物相手に試してもらってから考えましょう)

「ぴぃー。ぴーぴぴー」

「え?」


 痛みよりも僕の気持ちが流れてきた事が印象に残っているという。

 はて? そんな効果は無いはずだが。


(おかしいですね。もう少し詳しく聞いてみてください)

「ナス。それってどういう事?」

「ぴー? ぴーぴー」


 ナスは当時の事を思い出しながら語ってくれた。

 フォースが当たった時、ナスは何かが自分の心に触れてきたのを感じたらしい。

 それが僕の気持ちだと分かったのは直感のような物だったようだ。

 当時のナスは自分の心に触れてきたモノが何なのかを理解できなかったみたいだけれど、それでも僕に対する敵愾心は消え去ってしまったようだ。

 ここまで聞いてフォースには洗脳のような効果があるのかとも思ったのだけどそれはシエル様に否定された。

 むしろシエル様はこの時点で原因が分かったようだったがとりあえず話が終わってから話すと返してきた。

 ナスは自分の心に触れてきたモノの正体を僕と暮らす事で理解出来るようになったようだ。

 ナスの心に触れたモノ、それは僕の寂しいという感情でありナスはその感情に共感をしたようだ。

 ナスは魔獣になってから森で孤独に生きていた。かつての同族には避けられ、他の動物もナスに近づこうとする動物はいなかった。

 それでもナスは寂しいという感情を理解していなかった所為で感情を処理する事が出来なく苛立ちを覚えていた所に僕と出会ってしまったようだ。


 話が終わりナスを抱きしめた後アースにも同じ事を聞いてみた。

 アースは中々話してくれなかったが顎から首にかけてマッサージをすると仕方ないと言った様子で答えてくれた。

 アースもナスと同じようにフォースが当たった時に僕の感情が自分の心に触れてきたのが分かったようだ。

 ナスと違うのはアースは自分の精神状態を把握していたという事だ。

 アースは僕が感じていた一人ぼっちの寂しさに共感したのだと言う。

 そして、アースはどうやら寂しがっていた事が恥ずかしくて僕に知られたくなかったようだ。

 ずっと一匹で元同族を見守って生きていたのに今更寂しさを感じていたなんて知られたくなかったのにと怒られてしまった。


 これではっきりしたとシエル様は言って説明してくれた。

 どうやら僕の固有能力である『魔獣の誓い』がフォースに干渉してしまっているようだと教えてくれた。

 『動物使い』や『魔獣使い』、『魔獣の誓い』と言った他の生き物を手懐ける固有能力は仲間にしようとする際に自分の情報を相手に伝え共感を得られた時、もしくは満たされない物を相手が満たしてくれると判断した時仲間になってくれる様だ。

 つまり僕の『魔獣の誓い』には魔獣に自分の気持ちを伝える効果があり、それがどういう訳かフォースにも影響を与えてしまっているようだ。

 他の魔法にも影響があるのかは分からないが回復魔法以外は試すわけにはいかない。

 回復魔法だって怪我をしないと効果がない物は使うことは出来ない。確かめる為に魔獣達に怪我をさせるのはありえない事だ。

 インパートヴァイタリティで試してみるか。


 とりあえずフォースの謎は解けた。そしてもう一つ分かった事がある。

 僕の仲間になった魔獣は皆寂しさを感じていたという事だ。

 ナスとアースが僕から感じてとった寂しさというのは多分異世界に一人でやって来て前世の世界の家族や友人と別れ離れになった事に関する物だと思う。

 ヒビキも家族と離れ離れになっていて僕はヒビキの鳴き声に強く共感した。

 ゲイルもそうだ。大森林の魔獣仲間に仲良くしたかったようだけれど交流の仕方を間違え寂しさを抱えていた。

 僕も皆との接し方を間違えていたらゲイルのように……いや、ゲイルよりもひどい事になっていたかもしれない。

 僕自身はと言えば、今も寂しさを感じているかと言えばそうだと言えるだろう。

 昔ほど前世の家族と友人たちに会えない事に悲しんでいるわけではないけれど寂しさがないわけじゃない。

 それに今世の家族に会えないのもやっぱ寂しいものだ。


 どうやら僕は寂しがっている魔獣達と共感する事で仲間にしていたらしい。

 しかも大森林でゲイル以外に仲間になった魔獣がいなかった事を考えると僕は寂しさを強く抱いている魔獣しか仲間にできないのではないだろうか?

 なんてひどい力なんだろう。仲間を望むって事は寂しがっている魔獣がいる事を望むという事じゃないか。

 寂しがっている生き物なんていない方がいい。だけど……予言では後一匹仲間になる魔獣がいるらしい。

 寂しがっている魔獣がまだいる。そんなの放っておけるわけないじゃないか。

 だけど居場所は分からない。漫画やアニメでよくあった気を感じて相手の居場所を探る、みたいな事が出来ればいいのだけど。


 とりあえずシエル様も把握していなかったフォースの効果については分かった。

 フォースに僕の気持ちが乗ってしまう問題についてシエル様はすぐに対応すると言ったが、固有能力が原因とは言え干渉している理由が不明なためすぐに直せるとは保証されなかった。

 そもそも直す必要があるのかと疑問に持ったが仕様に無い効果はとりあえず無くしといた方が安全らしい。

 それを聞いて仕様に無い、というか不都合な仕様になっているアールスの固有能力の事を思い出し聞いてみた。

 するとその話はツヴァイス様の方にすでに話は通してあるのだけど、転生者の魂に植え付けられた固有能力の効果を変えるには一度死んで魂だけの状態にならないといけないらしい。

 生きている間にアールスの固有能力を何とかする術はないという事だ。

 その内アールスが死に転生した際に分かりやすいように生きているうちに魂に目印をつける為に僕達の住む星に神様が降臨する事になるだろう、そしてその際にシエル様のお披露目をする事になるだろうとシエル様は語った。

 ……大騒ぎになるな。この事は誰にも話さない方がいいだろう。

インパートヴァイタリティの事を忘れていたので一部文章を改めました

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― 新着の感想 ―
[一言] じー………………(ヒビキを凝視) 寂しかったのも有るだろうけど、そうじゃない部分にも引き付けられた気がするんだ。 奴がよく飛び込む場所を、そして抱え上げられた事に対して抵抗した相手とか考え…
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