閑話 アイネは守護りたい
本日は二回更新します
今話は一回目の更新です
言っちゃってた! あたしねーちゃんの事好きだって前に言っちゃってた!
どーしよどーしよ! 恥ずかしくてねーちゃんの顔見られない!
なんだよ身体が女で心は男って! あのねーちゃんがそんなだって予想出来る訳ないじゃん!
「ゲイル……どーしよ。あたし前ねーちゃんが男だったら自分の男にしたいって言っちゃったよ~」
「きー……」
嘘じゃない。嘘じゃないけど物事は順序ってもんがあるし、それにねーちゃんは身体は女だからお付き合いできないし!
……そう。そうだ、出来ないんだった。
いくら心が男だからってねーちゃんとは結婚できないしお付き合いだってできないんだ……。
あの時言った言葉は本心からだったけどあれでもしもあたしの事意識してたらどうしよ。
女同士だからお付き合いなんて出来ないんだよってねーちゃんに言わなきゃなんないかな?
うう、そうなったらねーちゃんを傷つけちゃいそうだ。
「ねーちゃんどー思ったかな……迷惑だったかな……」
どうしたらいいんだろ。傷ついてたのかな。
「あっ、そーいえば逃げたみたいじゃん……後で謝んなきゃ」
うん。こっちもいけない事だよね。謝んなきゃ……でも今は顔見れない。
「アイネちゃん。ココにいたのデスネ」
名前を呼ばれた方を見るとそこにはミサねーちゃんがいた。
そうだ。シスターのミサねーちゃんならいい答えを教えてくれるかも。
「ミサねーちゃん……あたし……あたしねーちゃんに傷つける事言ってたかもしれない」
ミサねーちゃんは首を傾げた。
「ドウいう事デスカ?」
昔ナギねーちゃんに言った事を全部話すとミサねーちゃんはあたしの頭を撫でてきた。
撫で方がちょっとナギねーちゃんに似てる気がする。
「アリスちゃんのソノ時はどうでしたカ? 変わった所はありまシタカ?」
「なかったと思う……」
「ナラ大丈夫デース。アリスちゃんは嫌な事はハッキリ嫌と言いマス。きっと本気と受け取らなかったのでショウシ、アイネちゃんに悪意が無かったのも分かっていマスヨ」
「そーかなぁ……」
「ソチラに触れるよりは逃げ出してしまった方を謝った方がいいと思いマース。気にしていましたカラ」
「うっ。そーだよね……ううっ、でも……無理! 今は恥ずかしくて会えない~。
ミサねーちゃん代わりにごめんって伝えてきてー」
「ンモー。仕方ないデスネ。ちゃんと後でアイネちゃんから謝らないと駄目デスヨ?」
「うぅ……分かってるよぉ」
明日の朝きちんと謝らなきゃ。
「あっ、きょーはミサねーちゃんのとこで寝たい」
「んっ。分かりマシタ。今日ぐらいはいいでショウ。カナデちゃんにも伝えておきマスネ」
「うん……ゲイル。今日は一緒にいてくれる?」
「ききっ? きー……『ナギに言わないと駄目だと思う』」
ゲイルが精霊語で何かを言った。けど、あたしはまだ精霊語は断片的にしか分からない。
多分ナギねーちゃんに許可を貰う的な事だと思うけど。
「ソウですネ。アリスちゃんに許可を貰わないといけマセンネ」
「そっかぁ……」
それだったらあたしが行かないと駄目かな。ミサねーちゃんと話してて少しは落ち着いた……いや、やっぱ無理。ねーちゃんに合わせる顔がない!
「フフッ、大丈夫ですヨ。ワタシから聞いておきまマス」
「ほんと? ありがと!」
「きー。『おいらもついて行って聞いてくる!』」
何を言ったのかは上手く聞き取れなかったけどゲイルはあたしから離れてミサねーちゃんの肩に乗った。
「デハ行ってきマスネ」
「うん」
ミサねーちゃん達を見送った後そっと息を吐く。すると息を吐いたおかげか頭が少し冷静になってきた。
冷静になった頭でまず最初に思った事はナギねーちゃんに裸を見られていた事だった。
その事については特に恥ずかしいと思わない。むしろたいして興味向けてなかったように思えてちょっと腹が立つ。
でも思い返してみればナギねーちゃんは皆の裸を極力見ないようにしてたような気がする。
ねーちゃんの事だからどうせ罪悪感があって目を逸らしてたんだろうな。一緒に入ってる時点で手遅れなのに。本当馬鹿。罪悪感覚える位なら誘いなんてはねのければ良かったのに。
まぁそういう自分の罪悪感より他人の願いを聞いちゃうような馬鹿なとこがかわいいんだけどね。
やっぱねーちゃんはしっかりしてる人がついてないと駄目だな。
じゃないとアールスねーちゃんとかレナスねーちゃんみたいな押しが強いのに流されちゃうんだ。
カナデねーちゃんはナギねーちゃんと同じような性格だから頼りにならないし、ミサねーちゃんもどっちかっていうと振り回す方だからちょっと信用できない。
となるとしっかりしているのはあたししかいないじゃないか。まったく……仕方ないな。あたしがついててあげなきゃ駄目なんだ。
ふへへへ、本当仕方ないな~。ちゃんと守ってあげないとな~。