閑話 死を想う
本日は二話投稿します。
本話は本日一回目の投稿です。
「気持ちいいねー」
最初はナギとレナスちゃんとの思い出作りになればと思っていただけだった。
だけどこの涼やかな風を運んでくれる開放的なお風呂場は予想外に気持ちのいいものだった。
ナギも目を細めて外の景色をずっと眺めてる。きっと気持ちいいんだ。ナギの言う前世の世界にもこういう場所はあったのかな。
「来てよかったですね」
「山の反対側にある村にも露天風呂あるのかな」
反対側の村は今日山を降りる途中で泊まる予定。ナギの言う通り夜に露天風呂に入るのもいいかもしれない。
「どうでしょう。後で受け付けの人に聞きましょう」
「そうだね」
私の隣には今レナスちゃんとナギがいる。同じお風呂に入って、同じ景色を見てる。二人と同じものを共有出来てる。
幸せだ。
今回はナギにはちょっと悪い事をしちゃったかもしれないけど、ナギなら許してくれるよね?
心配になりナギの横顔を見てみるけれど相変わらず遠くの方を見てる。
そんなに風景を気に入ったのかな?
「ねぇナギ」
「……え? 何?」
ぼーっとしてたのかナギの反応が悪い。返事はしても私の方を見ない。どうしたんだろう?
「大丈夫? ぼーっとしてたみたいだけど疲れてる?」
「ん……そうかも。風が気持ちよくてぼーっとしちゃうんだよね」
「そうなんだ。じゃあ疲れが取れる様にゆっくりしよう」
「あはは、そういう訳にもいかないよ。あんまり長湯すると観光する時間が無くなっちゃうよ」
「そっか。レナスちゃん古い家見るの楽しみにしてたもんね」
「でも疲れが残っていたらこの後の登山が辛くならないですか?」
レナスちゃんの懸念ももっともだ。
「それは大丈夫だよ。身体的にはそこまで疲れてないからね」
「身体的にはって心が疲れてるって事?」
そう聞くとナギはさらに遠くを見るかのように目を細めた。
「皆がまぶしすぎてね……」
「何それ?」
私が首をひねるとレナスちゃんの方から指先で肩を叩かれた感触を感じた。
レナスちゃんの方を見てみると左手を口の横に添えて内緒話のように小さな声で話してきた。
「恐らく皆さんの裸を見ないように気を使っているせいではないでしょうか」
「あー……」
見ちゃいけない物が周りにあったらそりゃ落ち着かないよね。
ミサさんの事すけべな目で見てたしナギも本心では見たいのかな。
ナギはミサさんみたいな人の方が好みなのかな。ミサさんの身体すごいもんね。同性の私から見てもすごい迫力だもん。
あんなの見ちゃったらアイネちゃんや私の身体をすけべな目で見られなくても仕方ないのかな。
それともただ単に私やアイネちゃんに色気がないだけ?
私の胸も結構大きいと思うんだけど……それだけじゃ駄目なのかな。
まぁ私に色気があろうがなかろうがどうでもいいんだけど。男の人と付き合う予定なんてないんだからそんな事気にしても仕方ない。
私にとってはナギとレナスちゃんの幸せを守るのが何よりも優先されるんだから。
二人の幸せを奪う存在を私は許さない。
幸せを奪う最たる存在が魔物だ。
あいつらは絶対に許さない。ナギ達が旅を終えたらすぐにでも魔の平野に向かって駆逐してやりたい。
と言ってもさすがに一人でやるのは効率が悪いか。軍に入って魔の平野の魔物達の駆逐を指揮できるだけの権力を握った方がいいんだろうな。
でも私はそこまで生きていられるのかな。
勇気ある者の所持者は先代を除いて平均寿命まで生きた人はいないって聞いている。初代勇者であるアークだって四十半ばで亡くなったって聞いてる。
勇者は早死にする。私がその法則から逃れられるとは思わない。
自分の事だからよくわかる。私は死ぬ事を一切怖がってない。ううん。怖がれない。
まだ死ねないとは思ってる。やりたい事が沢山ある。ナギ達と思い出を一杯作りたいし、魔物を駆逐したいとも思ってる。
でも死を恐れるっていう感覚が未だに分からない。最後まで死なないようにあがくとは思うけど最後の瞬間でも死を恐れないんじゃないかって思う。きっと私の死に場所は戦場になるんだろうな。
最後はナギとレナスちゃんに看取られながら逝けたら幸せなんだろうなって思うんだけど……二人には戦場とは無縁の所で生きて欲しいから無理だろうなぁ。
だから今のうちにナギとレナスちゃんとの思い出を一杯作りたいんだ。




