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首都グライオン

いつの間にか三周年が経ちました。

時間が流れるのが早く感じます。これからもどうかよろしくおねがいします。

 二つ目の都市になると異国情緒という物が出てきた。

 まず建物の壁の色の種類が多い。

 赤だったり黄だったり青かったりするのだ。しかも単色でだ。

 隣同士の建物で同じ色をしたものが見られない。

 カラフルな光景を目の当たりにして僕は旅先で聞いた笑い話を思い出した。

 グライオンの街並みが彩り豊かなのは酒を飲み過ぎた酔っ払いが帰る家を間違えない為だ、という話しだ。

 たしかに宿や預かり施設のある商業地区を見ると今まで見てきた旅の都市よりも酒場やお酒を扱っているお店が多い。

 食事処も食事だけをするためというよりお酒を飲むついでに食事をするという雰囲気だった。

 さらに昼間から街中で酔っ払いをよく見かけられ、カナデさんが良く絡まれたが鎧を着たミサさんが仲裁に入ってくれたので事なきを得た。


 三つ目四つ目の都市も同じようなものだった。

 流行りの服が違うだけで商業地区に酔っ払いが多い事に変わりはなかった。

 僕も何度か絡まれたがミサさんに助けて貰ったり一人の時に巡回中の兵士さんに助けてもらう事が出来た。

 軍事国家という事もあってか兵士さんは皆真面目で見るからに屈強な人が多かった。

 そして兵士さんから聞いた話によると大通りを歩けば酔っ払いに絡まれることはないらしい。

 たしかに、と思い返してみれば大通りで酔っ払った人を見かけた事がない。

 馬車が通るから酔っ払いを見かけたら兵士さんが即座に対処しているようだ。

 たしかに酔っ払いがふらりと馬や馬車の前に倒れたら危険だ。

 だけど僕には魔獣達がいるからいつも大通りを通るという訳にはいかない。

 とはいえアースのお陰か魔獣達と一緒にいる時は話しかけてくる人はいないのだけれど。





 依頼を受けて遠回りをしつついくつもの都市と村を通り過ぎてようやく僕達は首都グライオンにたどり着く事が出来た。

 首都グライオンは首都アークとはまた違ったつくりをしていた。

 大きな違いは首都を囲う壁の存在だろうか。

 首都アークでは街の外に一つだけ分厚い壁があったが、首都グライオンでは街中にも壁があり十以上の区画を作っている。

 首都グライオンの中心に位置する軍本部を中心にまず一定間隔で作られた四重の壁が囲っている。

 さらにその四重の壁の間を蜘蛛の巣と同じように縦の壁が規則的に作られている。

 明らかに首都アークよりも防衛に重きを置かれた作りだ。

 中心に近い区画には食料用の家畜用の牧場に畑などが軍によって管理運営されているようだ。


 そして、区画を分けている壁は通行人の制限も行われているらしい。

 軍関係者以外は先ほど述べた牧場や畑含めた軍の関連施設にははいれず、また住民以外の人間は居住区及び学校施設のある区画には入れず、製紙や製糸関連の工業区画も関係者以外は入れないようになっている。

 僕達のようなよそ者が入れるのは商業関連の区画だけだ。

 その商業関連の区画も二種類存在している。

 一つは宿や食事処、組合に預かり施設など健全な施設が集まった区画。

 もう一つは酒場や劇場、遊戯施設、娼館等の娯楽施設が集まった区画だ。

 両区画は隣同士で存在し東西南北それぞれに存在している。

 僕達が入るのは東側の商業地区だ。


「この街のめんどーなとこって真っ直ぐ反対側までいけない事だよね」


 などとグライオンの検問所に着く前にぼやくのはアイネだった。


「不便だよねぇ。反対側に向かうには入ってきた所からまた出ないといけないんだもの」


 それもこれの通行規制の所為だ。

 僕は魔獣を連れたまま検問所近くまで行って近くの兵士さんに大型の魔獣用の検問所の場所を確認する。

 何せ今までの都市とは作りも大きさも全く違う。確認しないと分からないのだ。

 首都グライオン自体は広すぎて目測では僕は愚かカナデさんでも分からない。

 だけど昔学校で教えてもらった所によると大体首都アークよりも一回り程広いそうだ。

 広い理由はもちろん中央付近にある軍事関連施設が多いからだ。


 皆と別れ無事に検問所を抜け街中に入るとやはり建物は今までの都市のように色にあふれていた。

 しかも壁だけじゃない。でかでかと文字が書かれたのぼりがいたるところに置かれ、遠くにはサソリのようなハサミを持った生き物を模した巨大な看板や派手な色光を放つまるでネオンのような看板。さらには巨大な塔まである。

 位置の関係上壁の外からは見えなかったが、グランエルにある時計塔よりも二回りは大きいかもしれない。

 監視塔のようなものなのだろうか? それとも観光用だったりするのだろうか?

 少なくとも学校の授業で出た記憶はない。

 時間があったら見に行くのも悪くないかもしれない。


 僕達はこの街にしばらく滞在する事になる。理由は武具を新調するのと首都グライオンの西にある山を越える準備をする為だ。

 レナスさんの今着ている全身を覆うローブは二年前に新調したものなのだけど身長が伸びたおかげで丈が合わなくなってきている。

 革製品という事もあって袖や裾に細かい傷が出来てきたのでいい機会だろう。

 カナデさんは弓と矢を山に入る前に本格的に点検し問題があったら買い換えたいと言っていた。

 ミサさんは僕と合流する前の首都アークで必要な事は全て終わらせていたから武具に関しては問題ない。

 しかし、グライオンは軍事国家なだけあって三ヶ国同盟の中で軍神ゼレ様を最も信仰していて研究もかなり進んでいる。

 そんなグライオンの中心地である首都グライオンは軍神ゼレ信仰の総本山と言っても過言ではない。

 そんな首都グライオンでミサさんは時間が許す限り教会で話を聞きたいのだそうだ。

 僕は武具の全てを金属製にするつもりだ。ミサさんのような重々しい重厚な鎧にするつもりはない。ミサさんとの差別化を図って局所だけを守り動きやすい物にする。

 盾も自分の胴体が隠れる程度の物にする予定だ。

 最後にアールスとアイネ。この二人は買い換える予定はない。

 アールスは小母さんに結構いい装備を整えて貰っているので必要がない。

 アイネも冒険者になる前に買った物がまだまだ使える。替えの装備がないのが少し心配だが、越える予定の山に魔物はいないはずだし、野生の動物なら僕のサンダーインパルスで対処できる。

 でもやはり心配だから替えの防具ぐらいは買っておきたいところだ。


 魔獣達を預けた後一緒に来てもらっているアロエに皆の状況を聞いてみる、

 するとどうやら他の皆はまだ検問所を抜けていない様だ。さすがは首都だけあって人が多いらしい。

 皆と合流するまでの間に依頼や宿の確認をしておこう。

 全員で同じ宿に泊まれるといいのだけれど。

 そして、宿を五件ほど回った所でアロエを通じて検問所を抜けたとの連絡が来た。

 僕達全員が泊まれる宿は三つ見つけた。後は皆と相談してどこがいいか決めたらいいだろう。

 合流場所に一足先に着いた僕はのんびりと周囲の様子を眺める事にした。

 この街には色があふれている。建物や看板の他にも人々の着る服はアーク王国に比べ統一性はなく原色をふんだんに使い派手だ。

 まるで街全体がここに住む人の活気の良さを表しているかのようだ。

 検問所のある方をぼうっとしながら待っていると遠くの方にミサさんの頭が見えた。背が高い上特徴的な格好なお陰で非常にわかりやすい。

 人波を一番に超えたのはアイネだった。アイネは僕を見つけると手を振ってきたので僕も手を振り応える。

 アイネは一回後ろを見た後後方の皆を呼んでいるのかまた手を振っている。 

 他の皆もすぐに人波から抜け出した。

 皆のいるところへ向かって駆け出すとアイネとアールスも同じように駆け寄ってきた。

 そして、距離が近づくとアイネは僕に抱き着いてきて、さらに興奮気味に話し出した。


「ねーちゃんねーちゃん! あのとー上れるんだって! いこー!」

「ナギ、いいでしょ? 私も上りに行きたい!」


 アールスも興奮を隠せない様子だ。


「分かったから落ち着いて? 見に行くのは良いけどまずは宿を決めてからだよ」

「えー、でもそれじゃあ遅くなるよ」

「塔に行ってる間に部屋が埋まったらどうするんだよ。まぁアイネ達だけで行くんなら別にいいけど」

「やだ。ねーちゃんと一緒に行くの」

「私もナギも一緒がいい!」

「じゃあまずは宿からね。一応探しておいてあるけど、まだ部屋が空いてるか分からないから早く行こう」

「あーい」

「ちぇー……」

「にしてもやけにはしゃいでるけどそんなに高い所好きだったけ?」

「別に好きってわけじゃないけどあんな高いとーに上れるのって珍しいじゃん」

「そうそう。街を上から見られるなんて楽しそうだしね。それにこの街変な看板一杯あるからきっと上から見たらもっと変なのあるよ!」

「んふふ。たしかにそうだね」


 二人を落ち着かせ僕達は宿へと向かう。

 だけどその最中アールスとアイネが道端にある屋台や変わった看板を見つけるとすぐにはしゃぎ駆け寄っていってしまって宿を取るどころではなくなってしまった。

 結局二人の事をミサさんとレナスさんに任せ宿を取るのはカナデさんと僕が行う事にしたのだった。

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