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王国のブラシ事情

 組手の後、村長さんの家に戻ると丁度お風呂から出て来た奥さんと出会い有難い事にお風呂を入る事を勧められた。

 てっきり遅い時間だから貸してくれないと思っていた。汗臭かったからだろうか?

 なんにせよお風呂に入って汗を流せるのは嬉しかった。

 アイネに先に入ってもらい僕がお風呂を沸かす焚き火の面倒を見る事になった。

 アイネは自分が知覚出来る範囲ならばマナの操作に問題ないようだが、自分が知覚出来ない場所にあるマナを操るのは苦手なようだ。魔力感知が未熟なんだろう。

 アイネがお風呂から出るとアイネが焚き火の面倒を見ると言ってきたが僕には必要ないので先に部屋で休んでいて貰う。

 お風呂から出て部屋に戻ると中は暗く寝息が聞こえて来た。

 どうやらもう寝ているようだ。

 ライトの光量を抑えてアイネの様子を確認すると掛け布団がきちんと掛かっていない。

 寝相が悪くて掛け布団を押しのけてしまっているようだ。

 今は冬だと言うのにこんなんじゃ風邪を引いてしまうじゃないか。サラサがいれば気にしなくて済むのだろうけど。

 お布団をきちんとかけ直してあげてから僕はアロエが来るのを待つ。

 毎日寝る前に精霊を通して遠くにいる皆に今日の事を報告するのは前にライチーと一緒にティマイオスにいた頃からのお約束だ。

 自分の髪の手入れをしながら待っているとアロエがやって来た。


『来たよー』

「ゲイル達はもう寝ちゃった?」

『うん』

「そっか。悪いんだけどさ、僕が寝ている間アイネが掛け布団をどかしちゃったら掛け直してくれるかな?

 今冬だから風邪引いたら困るからね。あっ、出来たらでいいから」

『まっかせて! 掛け布団位なら持ち上げられるから』


 アロエは長年生きているからかライチーとは違って夜一人になっても苦にはならないようだ。

 朝まで起きてなくていいのはありがたいが一人にする事に抵抗が無くなるわけではない。もっと精霊がいてくれればいいんだけど……そう上手くはいかないだろう。

 僕は精霊と契約する事が出来ないし、結局の所精霊が仲間になってくれるかは精霊の好みの問題だから気軽に増やすなんて事は出来ないのだ。


「お願いね。それで今日の報告だけど……」


 今日あった出来事と訓練の内容をアロエに伝えるとそれに対するミサさんからの返答が返ってくる。

 電話よりも必要な工程が多く正確性にも欠けるが、それでも遠くの人と連絡を取り合えるというのは有難い事だ。

 ミサさんからの報告ではアールスは明日組合に登録し、フェアチャイルドさんと二人で研修の旅に出るようだ。

 ミサさんは夜酒場の店員として働きつつお昼は五柱の教会を周り勉強をしていると言っていたっけ。

 確認を取るとやはりミサさんは当初の予定通り二人が研修の旅を行っている間は首都に滞在し勉強を続ける気のようだ。

 別行動を取るって事はしばらくはフェアチャイルドさんが何をしているのか聞く事が出来なくなるのか。まぁ研修の話は会った時に本人達に直接聞けばいいだろう。


 報告を終えると僕は手入れの終わった髪を緩く編んでからアロエにおやすみの挨拶をした。


「じゃあ僕はもう寝るね」

『おー。おやすみー』

「おやすみ」


 寝る前にアイネの掛け布団がまたずれていたのできちんと直してから僕もベッドに横になりながら本当に眠くなるまでシエル様とのお喋りを楽しんだ。。




 朝、僕が起き出して編んだ髪を解かし櫛で梳いているといきなりアイネが寝ているベッドからガバッという布団がめくれる音がした。


「朝だ! ねーちゃんおきろー!」


 僕はすでに起きているというのにアイネはベッドの上に立ち僕が寝ていたベッドへ飛び込んだ。

 ライトの光はアイネの眠りの邪魔にならない様に光量を抑えているから気づかなかったんだろう。

 僕は櫛を机の上に置き椅子から立ち上がる。


「朝だー……あれ?」


 戸惑っているアイネの背後に立ち僕はアイネの頭を両手でがっしりと掴む。


「ア・イ・ネ? 何してるのかなー?」

「あ、あれ? お、起きてたの?」


 僕の方を向こうとするアイネを抑えつける。


「アイネ? 何をしようとしていたのかな? 僕に教えてくれる?」

「ね、ねーちゃんを起こそうと思って」

「んふふふふふ。それでベッドの上から飛び跳ねて僕が寝ていたベッドの上に飛び込んだんだ?」

「は、はい……」

「……お説教だね」

「ごめんなさい~」


 とはいえ髪の手入れがまだ途中だし朝の訓練もある。お説教の時間はかけられない。

 なので内容は厳しめにしつつ一時間弱でお説教は終えた。

 まだ反省しきっていないように見えるが、仕方ない。


「そだ、アイネ。今日はお仕事終わったらそのまま村出るから準備しておいてね」

「そのまま? 暗くなっても?」

「そう。野宿する為にね。日が暮れるまでに村に近づけたらそのまま村で泊まるけど、無理だったら野宿するから」

「ふぅん?」

「アイネはどれ位野宿した事がある?」

「んー。二十回くらい? 大勢でやる都市外授業の時しかやった事ない」

「そっか。とりあえずこの研修の旅で野宿に慣れてもらう為に積極的に野宿するからね」

「いいよ。そっちの方が早く研修終わりそーだし」

「うん。じゃあ訓練の準備しようか」

「うん! ……って、なんでねーちゃん櫛持ってんの?」

「何でって髪梳かなきゃ編めないじゃない。アイネが変な事するから途中だったんだよ」

「むぅ。短くすればいいのに」

「アイネだって短くないでしょ」

「あたしの髪はくせ毛だから短いと逆に面倒なの」


 アイネのくせ毛はあちらこちらの方向にまとまりなく曲がっているけど癖が強い訳じゃないので伸ばせば重さで癖が弱くなる。

 だけど髪の量が多くボリュームがある為整えるのは確かに手がかかりそうだ。

 普段アイネが前髪以外の髪を頭の左右両側で無造作に二つにまとめているのは整えるのが面倒だからに違いない。

 

「梳いてあげようか? どんな櫛使ってるの?」

「手でやってる」

「……僕の貸すから手でやるのは止めな」

「えー。いいじゃん別に」

「痛むから駄目」

「めんどーい」

「僕がやるから」

「んー、まーやってくれるならいーよ」


 しかし、アイネのようにボリュームのある髪は櫛ではなくヘアブラシを使いたい所なんだけど……無いんだよなぁ、ヘアブラシ。

 残念な事に三ヶ国同盟内で売られているブラシはあくまでも動物の身体の汚れや抜け毛等の余分な体毛を取り除くための物で、毛が硬く体毛を梳きケアするという事が出来る代物ではない。

 だからグランエルにいた時アースとナスには特別なヘアブラシと櫛を注文して作って貰ったりした。

 ただ、アース用のヘアブラシは毛の部分が駄目になってしまってから新しい物を作って貰う余裕がなく一年くらい櫛で代用している。今は鍛冶屋にゲイルの分も含めすべて木製で作った物を注文してある。研修の旅が終わる頃には出来上がっているだろう。

 東の国では櫛ではなくヘアブラシを使っている事はミサさんから聞いてはいるが、アーク王国のきめ細やかな細工や模様の施された櫛が上流階級の人に人気が出て広まった。

 そして、上流階級での櫛の人気が中流階級以下の人達にも伝わり徐々に櫛の需要が増えているらしい。

 逆にアーク王国ではブラシは動物に使う物として認識され偏見を持たれている為人用のブラシは全く出回っておらず、輸入しようにも需要が見込めないから持ち込んでくる商人もいないのだ。

 だから魔の平野を渡らない限りはヘアブラシは手に入らないだろう。

 いっその事変な目で見られる事を覚悟して人間用のブラシを作って貰おうか。

 だけどお店に頼もうにも今はそんな時間はない。魔獣達の分と一緒に注文しておけばよかった。

 グライオンで拠点を見つけられたら時間も取れるだろうか?

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