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贖罪

今回は区切りのいい所で終わらせたので短いです。

 フェアチャイルドさんとの話し合いの結果、今晩一緒に眠り問題がなかったらそれ以降も続けるという事になった。


「私が……私が……ナギさんに……なんて、なんて恐れ多い事を……なぜ……おぼえ……」


 フェアチャイルドさんは話し合いの後ずっと僕にした事について悔いている。

 その姿は痛々しく胸に来るものがある。


「フェアチャイルドさん。もう怒ってないから朝ごはん食べに行こう?」

「わ、わた、私はナギさんを怒らせてしまったのですね……」

「い、いや別に怒ってたわけじゃないというか、怒ってるっていうのは言い過ぎたかな!

 ちょっと困っただけだから!」

「ナギさん……もし私が同じ事をしたら……私の腕を切り落としてください」

「しないよそんな事! 僕にそんな残酷な事させようとしないで!?」

「そ、そうですね……ならば自分で……」

『だめー!』

「ほ、ほらライチーだって駄目だって言ってるよ?」

「大変な事になってる」

「まったく……レナス。いい加減になさい。ナギもライチーも困ってるじゃない」

「でも……」

「でもじゃないの。いつまでも落ち込んでないで、朝ご飯でも食べに行きなさい」

「そ、そうだね。サラサの言う通りだよ。お腹減ってると落ち込みやすくなるからね」

「……わかりました」

「じゃあカナデさん起こして朝ごはん食べに行こうか」


 結構うるさくしていたと思うのだけれど、カナデさんは起き出す気配がない。

 普段は眠りが浅いと言っていたけど、疲れていたのだろうか?

 確かめてみると目は瞑っているけれど口元を抑えて肩が震えていている。


「……カナデさん起きてます?」


 聞くと小さく頷いた。


「起きれます?」


 今度は首を横に振った。

 意識はあるけど身体が動かないという事だろうか?


「じゃあ先に朝ごはん食べに行っていますね」

「う~……それはいやですぅ……」


 カナデさんは口と腕を重たげに動かすけれど力尽きたのか動かしていた腕は力なくベッドの上に落ちた。


「一緒に行きたいなら、起きてください」

「う~……」


 カナデさんは腕を使って起き上がろうとするけど、力が入らないようで起き上がる気配がない。

 もしかして低血圧なのだろうか? いや、あれは女性に多いと言っても虚弱な人がかかる物だった気がする。カナデさんは虚弱ではないだろう。

 しかし念の為だ。生命力を分けてみよう。


「ちょっと失礼しますね」


 熱を測るふりをしておでこに手を当てて生命力を送ってみる。

 するとカナデさんの表情が少し和らいだ。

 かわりに僕の方には疲労感がつのる。すでにフェアチャイルドさんにも分けていたから、いつもよりもけだるさを感じる。


「ん……ふぁ……おはようございますぅ。なんだか急に体が軽くなったような~」


 カナデさんは小さな口を開けてあくびをした後ゆっくりと瞼を開け僕に挨拶をしてきた。

 なんというか非常に可愛らしい。

 考えてみれば成人してていくら頼りになると言ってもまだ十六だ。

 前世の世界との時間の流れの違いの差がどれほどあるか分からないからはっきりした事は言えないけれど、単純に年齢だけで考えれば前世での僕よりも年下。

 まだまだ青春真っ盛りな年ごろだ。前世で同じ年頃のクラスの女の子達は恋や遊び場や勉強への愚痴、いろんな話をしていたっけ。

 

「アリスさん。どうかしましたかぁ?」


 じっと顔を見ていた僕に疑問を抱いたのか寝ぼけ眼を手の甲でこすりながらカナデさんは聞いてきた。


「あー、いえなんでもないです。おはようございます」

「はい~」


 カナデさんはゆったりとした動作でベッドから起き上がる。


「顔洗ってきます~」


 そう言いながら手を振りながらふらふらとした足取りで部屋を出ていった。




 朝食を食べた後すぐに魔獣達の所には向かわず食休みもかねて部屋で今日と今後の予定を話し合う事にした。


「えとぉ、まず最初に確認しておきましょうかぁ。ナギさんお金がどれくらい残っていますかぁ」


 特に決まっている訳ではないがこういう話し合いの場合まず年長者で経験豊富なカナデさんから口を開く事が多い。


「カナデさん達と別行動していた間は治療の依頼はありませんでしたから大して変わっていませんよ」


 と前置きをして銀行に預けてある金額含めてカナデさんに申告しておく。

 今の所僕の銀行口座には五年は遊んで暮らせるだけの金額が入っている。これは殆どは去年の前線基地での報酬だ。治療費の他に危険手当も入っていたから教会や療養所に寄付をした後でもすごい金額になったのだ。

 これだけ貰えるんだったらもっとみんなパーフェクトヒール覚えればいいのに。もっとも、増えたら単価が減るだけか。

 僕の答えにカナデさんは頷いて答えると続いてフェアチャイルドさんに同じ事を聞いた。

 フェアチャイルドさんは朝食を食べて少しは落ち着いたのかいつも通りのすまし顔で支出が書かれた帳簿を出して持ち金の額を告げた。

 几帳面な彼女はお金の出入りの度に帳簿に記入を行っている。

 ただし、荷物が多くなったら古くなったものは燃やすらしい。あくまでも自分の確認用の物だから残しておく気はないらしい。

 彼女の告げた金額は半年は何もしないでも暮らせるだけの金額だった。彼女はあまり無駄使いをしてないうえ依頼を精力的にこなしているから結構溜まっているみたいだ。

 最後にカナデさんは自分の通帳を見ながら金額を言う。


「全員当分は大丈夫そうですねぇ」


 金額を聞いたのは旅をする余裕があるかを確認するためだ。全員首都に行くまでの資金は依頼をこなす事も視野に入れないでもきちんとあるようだ。


「しばらくこの都市に滞在できるけど、みんなはどうする?」

「私は雪像を見て回りたいですねぇ」

「そうですね……私も見たいです。あれがいないのならゆっくりしてもいいのではないでしょうか?」


 あれって……あの男の子の事だろうか?


「そういえばアリスさん~。雪像祭ではアリスさんは何もしなくていいんですかぁ? 一応雪像の製作にかかわっていますよね~?」

「それは大丈夫です。制作を終えたら後は特に何もないそうです」

「じゃあ安心ですねぇ」

「はい。えと、じゃあ三日後に出立という事でいいかな? 明日明後日はお祭を楽しむという事で」

「いいと思います~」

「ではナギさん。一緒に見て回りましょうね」

「うん」


 んふふ。この日の為にアース以外の雪像は見ないようにしていたのだ。


「カナデさんも一緒に行きましょね」

「あ……」

「はい~」 


 あぁ、皆と一緒に見て回るの楽しみだな。

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