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話し合いの結果

総合評価が1,000pt超えました。

ブクマ、評価してくださった皆様のおかげです。

今後ともよろしくご愛顧のほどお願いいたします。

 男の子を見張り始めて数日が過ぎた。

 フェアチャイルドさんが仕事を辞めたと聞いた次の日から二日間男の子はフェアチャイルドさんを組合で待ち構えたり街中を探し回っていた。

 もちろん僕とサラサが見張っているから二人が出会う事はなかった。

 依頼を無事に達成できたフェアチャイルドさんは男の子がいない間に組合へ相談をし、話し合いの際の立会人の要請と部屋を借りる事に成功した。

 そして、今日その話し合いが行われる事になっている。

 今日ばかりはライチーは宝石の中に入っていて貰っているので姿は見えない。

 フェアチャイルドさんと一緒に組合へ行くと、中にはすでに男の子がいてフェアチャイルドさんを見つけるや否や駆け寄ってきた。

 なので僕はすっとフェアチャイルドさんと男の子の間に割って入る。

 男の子は足を止め僕を睨みつけてきた。


「なんだよお前」


 僕は男の子の問いには答えずに代わりにフェアチャイルドさんが応える。


「話は用意した場所でしましょう」

「ねぇこいつ誰?」


 その問いには答えずにフェアチャイルドさんは受付に向かって歩き出した。


「無視するなよ!」


 男の子がフェアチャイルドさんに触れようと動くので僕が盾になる。

 フェアチャイルドさんは受付のお姉さんと一言二言話すと受付から離れ受付横の廊下を歩いていく。

 その間に男の子の動きが乱暴になっていきついに拳で殴って来たので受け止める。


「建物内での暴力行為はお控えください」


 受付のお姉さんから注意が入ると男の子は顔を真っ赤にして喚きだした。


「こいつが邪魔するんだよ!」


 これにはさすがに僕も黙っていられなかった。


「話は部屋の中でするから落ち着きなよ」

「お前何なんだよ!」

「それも後で」


 蹴りをしてきたので脚を上げて受け止める。


「この!」

「ほら、早く追いかけないよ彼女が行っちゃうよ」


 フェアチャイルドさんはこちらを振り向く事なく応接室へ入って行った。


 僕は男の子の手を放し脚も降ろして応接室へ足早に向かった。

 男の子は僕よりも先に応接室へ入る気なのか走って応接室に入って行った。

 僕も中に入ると、男の子は立ち止まっていた。

 部屋の中にはフェアチャイルドさんの他に強面のお兄さんがいて、フェアチャイルドさんはお兄さんの斜め後ろに立っているからあまり乱暴な事は出来なかったのだろう。

 この人が今回の話し合いの立会人で、冒険者に問題が発生した時に表に出てくる人らしい。

 僕はお兄さんにお辞儀をしてから男の子の横を通り抜けフェアチャイルドさんの隣に立つ。


「この人はダリエル=ウェスターさんです。組合の職員の方で今回の話し合いの立会人になっていただきました。

 そしてこちらは私の友人で冒険者仲間のナギさんです。ナギさんも今回の話し合いの立会人となっていただきました」

「なんだよ立会人って。話したいから会ってくれたんじゃないのかよ?」

「その通りです」

「それに関しては俺からも確認させてもらう。が、その前に座ろうか」


 お兄さんに促されて僕らと男の子は机を挟んで向き合ってソファーに座る。


「レナス=フェアチャイルドはベイジル=ファルシアの迷惑行為についてきちんと話し合いをして解決したいという事でいいんだな?」

「間違いありません」

「迷惑行為? ってなんだよ」

「仕事の途中に何度も話しかけ、あまつさえ何度も何度も断っているのにしつこく誘ってきた事です」


 相当怒っているのか後半は怒気が篭っていた。

 

「それの何が悪いんだよ?」


 男の子は何が悪いのか本当に分かってないのか不機嫌そうにフェアチャイルドさんを責める口調で言った。


「貴方の頭の中には迷惑と言う言葉が存在していないのですか? 私は他のお客様の相手をしなければいけないんです。仕事中あなただけを相手にするわけにはいかないんですよ?」

「他に客なんていなかったじゃん」

「そういう問題ではありません。迷惑なんです」

「いいじゃん。お前が俺とデートすれば済む話なんだから」

「嫌です」

「そんな事言うなよ。俺お前が欲しいんだよ」

「お断りします」

「連れない事言うなよ。なぁ、俺の女になれって」

「不愉快です」

「なんでさ」

「貴方の事が嫌いだからです」

「そんな会ったばっかで判断してほしくないな」

「もう二度と私に近寄らないでください」

「嫌に決まってんじゃん。俺はお前が欲しいの。分かる?」


 怒鳴りたくなる気持ちを押さえられているのはひとえに今はフェアチャイルドさんの戦いだからだ。

 僕はカナデさんに僕が下手に出たら話が余計にこじれるかもしれないから男の子が手を出してくるまで手を出してはいけないと言い含められている。

 ああでも、抑えるのが本当につらい。よくもこんな自分勝手な口を叩けるものだ。


「私は貴方の物にはなりません」

「そんな……」

「あー、ちょっといいか?」


 お兄さんが手を上げて二人の会話に入り込んできた。


「今回は話し合いの立会に俺が呼ばれたんだよな? これ、話し合いか?」

「! ……すみません」

「俺は別に話し合いなんてする気ないぞ」

「んー……それだとなぁ、お前には彼女の言う事に従ってもらわないといけなくなるんだ」

「はっ? なんでだよ」

「今までのやり取りからお前に非があるのは一目瞭然だ。

 どう見てもお前は人の話を聞くような人間じゃないし、人の迷惑を考えるような人間には見えない。少なくとも俺はそう判断するし報告もする。

 そして組合としてはだな、彼女の言い分を認める。お前には彼女に近づかないよう組合から命令が下るだろう。

 これを破った時には冒険者の資格を一時はく奪させてもらう事になるんだ」

「はぁ!? なんだよそれ! 俺何にも悪い事してないじゃん」

「うん。お前がそう思うのは勝手だがな、客観的に見てお前にしか非がない。違うと言うのならまず彼女と話しをしてくれないか? さっきみたいに一方的に自分の都合を押し付けるんじゃなくてさ」

「なんでそれをお前に指図されなきゃいけないんだよ!」

「俺が職員だから」

「横暴だ! 組合に俺の資格を取り上げる権利があるのかよ!」

「あるからな? 冒険者になる為の最初の説明であったよな? 冒険者の品位を落とすような真似をすると資格のはく奪される事もあるって」


 確かにあった。登録の際の書類に書かれた規約にもきちんと載っていた。


「はっきり言って今のお前は何の擁護も出来ない。ただひたすらに自分の格を下げているだけだ」


 男の子は歯ぎしりをしてお兄さんを睨んでいる。握り拳も作っており今にも飛び掛かりそうな雰囲気だ。


「俺は! こいつに惚れたんだ!」

「そんな事は知らん。俺には関係ない。そういう話がしたいのなら終わってからにしろ。

 さぁ話し合いを始めろ。次はないぞ」


 そう言って手を叩き話を再開させようとする。


「私は先ほども言った通り貴方の行為は迷惑です。出来ればもう私にかかわらないでください」

「嫌だ! 俺はお前と結婚するって決めたんだ」

「勝手に決めないでください。私にその気は全くありません」

「どうしてだよ? 俺みたいなかっこいい男の女になれるなんて運がいいだろ?」

「かっこいい……?」


 フェアチャイルドさんが訝し気に男の子の顔を見た後僕に視線を合わせてきた。

 男の子の顔は……お世辞にもかっこいいと呼ばれるような顔ではない。かといって別に不細工と言うほどでもない絵に描いたような平凡な顔をしている。

 もしもかっこいいというのが立ち振る舞いや言動の事なら勘違いしているとしか思えない。それともティマイオスではこういうのが流行りなのだろうか?

 お兄さんに視線を向けて見ると我関せずと言った様子だ。


「私は貴方の事をかっこいいとは思えません。むしろ人の話を聞かず人の迷惑を顧みない傲慢な人間だと思います。私は貴方みたいな人嫌いです」

「俺の魅力が分からないの?」


 馬鹿にした目つきでフェアチャイルドさんを見てくる。

 ぶん殴りたい。

 前世含めて初めてだ。人を殴りたいと思ったのは。

 

「……ふぅ。話を戻しましょう。もう私には関わらないでください」

「嫌だって言ったら?」

「関わらないでください」

「嫌だね」

「ならば話はここまでですね。もう貴方とは話す事はありません。ウェスターさん」

「ああ。さて、ここからは俺が話そうか。組合としては元々二人の事情に深入りするつもりはなかったが」

「だったら黙ってろよな」

「……さすがにここまでひどいと口を出さざるを得ないな。ベイジル=ファルシア。今ここに俺に対して誓え。今後一切レナス=フェアチャイルドには近づかないと。でなければ冒険者としての資格を一時はく奪する」

「ふざけるな! 俺はただレナスを俺の女にしようとしただけだろ」

「……ごめん。フェアチャイルドさん。もう黙ってられない。

 君さ、フェアチャイルドさんの名前を気安く呼ばないでくれるかな」

「お前には関係ないだろ」

「フェアチャイルドさんは僕の友達だ。彼女を道具扱いするな。彼女は君の思い通りになる道具じゃない。これ以上彼女を侮辱するな。僕にも我慢の限界はあるんだぞ」

「僕? ははっ、女が僕なんて言ってるのか。気持ち悪」


 男の子が笑った瞬間部屋の中の温度が上がり、パンッという乾いた音が鳴り響いた。


「なっ」

「フェアチャイルドさん?」

「貴方、死にたいようですね」


 机の上に乗り出していたフェアチャイルドさんが姿勢を正すと周りに三人の精霊が姿を現す。


「てめぇ、殴ったな!」


 男の子が立ち上がり殴りかかろうとしたので僕はとっさに机を蹴り男の子の弁慶の泣き所に机をぶつけた。

 そして立ち上がりフェアチャイルドさんを後ろに立たせる。


「フェアチャイルドさん。魔法を使っちゃ駄目」

「嫌です。ナギさんを侮辱した者を許す気はありません」

「駄目。さすがにここで魔法を使ったらフェアチャイルドさんの方が犯罪者になる。サラサ達も悔しいのは分かるけどここは抑えて」


 そう言うとサラサは僕と視線を合わせた後他の二人と一緒に後ろへ下がった。宝石の中に戻る気はないようだ。


「てめぇ!」


 痛がっていた男の子はヒールで痛みを消しもう一度立ち上がり今度は僕に殴りかかってきた。

 僕は拳を取りそのまま取った右手を引っ張り男の子を地面に倒し、うつぶせの状態で男の子の右腕を背中に回し拘束する。


「ウェスターさん。騒がしくしてすみません」

「相手を挑発した上に逆上か。こりゃ誓いの話云々抜きに一時はく奪は決定だな。とはいえ職員が立会いの話し合いの場に先に手を出したのはフェアチャイルドだ。一応罰則はつくぞ」

「構いません。あそこで何もしないという選択は私にはありませんでしたから」

「まぁそんなに厳しい罰にはならん。ファルシアの資格の一時はく奪もまぁ初犯だし長くはないだろう」

「放せよ!」

「君はもう少し人の話を聞くべきだな」


 腕を抑えたまま立ち上がらせる。力は僕の方が上で余裕をもって拘束したまま立たせる事が出来た。


「話し合いは決裂。いや、元々成り立っていなかったか。

 ベイジル=ファルシアに組合からレナス=フェアチャイルドへの接触を禁止する。

 これは法的措置には至らないが逆らったら冒険者の、組合員の資格を一時はく奪だ。こちらのは長いぞ。なにせ初犯ではなくなっているからな」

「なんで俺だけ! その女とこいつは俺に暴力を振るってるだろ!」

「レナス=フェアチャイルドにもちゃんと罰則はある。後で正式に通達するが、少しの間依頼を受ける事は禁止されるな」

「さっき重くないって言っていませんでしたか?」


 依頼を受けられないとなるとその間の収入がなくなる。これが軽い罰則だとは思えないが。


「おっとすまんな。言葉が足りなかった。正確には第一階位の依頼を除いてだ。まだ第二階位のフェアチャイルドなら軽いだろ」

「上の階位になるにつれて重くなる罰則か……」


 食い扶持は稼げるけれど、中級以上だと武器の手入れとかでもお金が必要になるから結構死活問題な気がする。期間によっては罰の間生活水準も下がるだろうから高階位の冒険者にとっては辛そうだ。


「それとそっちの……ナギだったか。ナギは殴りかかってきたお前を止める為だからな。元々フェアチャイルドの護衛として話が通っているから問題はない」

「なんだよそれ!」


 僕の拘束を振りほどこうと暴れるが男の子程度の力ならば抑え込めた。


「あのな、ここで暴れてもさらに立場を悪くするだけだぞ?」

「ぐっ……」

「とりあえず二人には追って沙汰を出す。明日には結論が出るから明日は必ず組合に来るように。時間についてはフェアチャイルドは朝に、ファルシアは昼に来るように。

 それともしもファルシアが組合でフェアチャイルドと会って問題を起こした場合は当然罰則は与えるが、組合で会っただけならフェアチャイルドが迷惑でない限りは組合としては不問にしたいがどうか?」

「それは」

「まって」


 フェアチャイルドさんが否定しそうな勢いだったので一度僕が止めて彼女に助言をする。


「組合の中まで接触禁止にすると依頼を受ける時に不都合がでる。いらない恨みを受けるかもしれないからここは言う通りにした方がいいと僕は思う」


 彼女は少しの間考える仕草を取った後顔を上げてお兄さんの目を真っ直ぐ見た。


「それで、いいです」

「ではそういう事で。組合を除くいかなる場所でもファルシアがフェアチャイルドと接触を図った場合は冒険者の資格を一時はく奪する。しかし、組合内でも問題を起こした場合はさらに重い罰則を与えるものとする。以上」

「フェアチャイルドさん。先にこの部屋から出て。まだこの子落ち着きそうにないから」


 男の子はまだ暴れている。


「……分かりました」

「待てよ!」


 フェアチャイルドさんは振り返る事なく部屋を出ていく。

 扉が閉じて十分時を待ってから男の子を解放する。


「お前……絶対許さないからな」

「こっちこそ許さないよ。好き勝手言ってくれて、僕も怒ってるんだからね」


 折角フェアチャイルドさんとの大事な約束を果たした地だというのに余計なケチがついてしまった。


「いいじゃねぇか勝負しろよこのブス」

「力で僕に負けてるのに勝てるつもりでいるの?」

「当り前だ! ちょっと油断してただけだ!」

「いいよ。なら今から戦おうか。ウェルターさん。組合の訓練場空いてますか?」

「ああ、空いてるな。今の時期はあんまり利用する冒険者はいないからな」

「それと一応立会人を要請したいのですが」

「あー、いいよ。面倒だから俺がこのまま引き続きやってやる」

「よろしくお願いします。場所と立会人は僕が決めたから勝負のルールは君が決めていいよ」

「はっ、もちろん何でもありだ。死んでも知らないからな」

「さすがに死者を出すような試合は認められんぞ」

「……ちっ。じゃあ参りましたって降参した方が負けだ。それでいいな」

「いいよ。降参させれば勝ちなんだね」

「覚悟をしろよ」

「そっちこそ」

ナギが男の子とお兄さんの名前を地の文で出さないのは正式に名前を交わしていないからです。

読み難いかとも思いましたが一先ずはキャラの設定を優先させていただきました。

もしも読み難く変えて欲しいという場合はお手数ですがご連絡ください。

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