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魔力操作

「ふぅ……」


 魔力操作(マナコントロール)の訓練を始めて二か月。ヒールの時に使う魔力操作(マナコントロール)は上手になったと思う。けれどまだ魔力(マナ)を何もしてない時でも感じる事が出来ないでいた。

 先生が言うには魔力(マナ)を感じるようになるにはかなりの時間がかかるらしい。何かヒントになるような物はないだろうか。


 人差し指の腹をナイフ斬ってヒールをかける。魔法を使っている間だけは魔力(マナ)の流れが分かるんだけど……。

 ヒールの効果が切れると途端に魔力(マナ)がわからなくなる。

 大きい傷にした方が分かりやすいのかと思い腕を思いっきり斬って治してみた時もあったけど収穫はなかった。

 気分転換にライトを使ってみる。魔力操作(マナコントロール)の練習を始めてからライトの扱いが上手くなった。前のライトは出したら魔力(マナ)が尽きるか自分の意志で消すまで設定した光量で魔力(マナ)を消費し光り続ける。後から光量を変える事は出来なかった。

 今は光源から魔力(マナ)を切り離すことによって自分の意思じゃなくても込めた魔力(マナ)の量で持続時間を調整出来るようになった。光量も出ている間に光源に触れて魔力(マナ)を再接続することで自由に調整できる。

 今回使うのは昔のやり方で出すライトだ。魔力(マナ)を繋げたままなら魔力(マナ)の流れが分かりやすい。

 試しにこの状態で光量を変えてみる。僕の体中から魔力(マナ)が光源に動き出したのが感じられる。

 魔力(マナ)の流れを逆流させたらどうなるんだろう?

 やってみたいとは思う。けどどういうイメージをしたら魔力(マナ)は逆流してくれるだろう。

 一先ず吸うイメージで試してみる。イメージしやすいのは口からか。息を吸う様に魔力(マナ)を吸うイメージをする。だが魔力(マナ)が動く気配はない。

 なら光源に触ってみてはどうだろう。ライトの光源は熱がないから火傷の心配はない。火傷したとしても回復できるけどね。

 光源を触ってみるがすり抜ける。当然か。なら魔力(マナ)を掴むイメージをしながらライトに触る。触れれば魔力(マナ)を掴み取って自分の物にできるかもしれない。


「ん?」


 なんとなく違和感があった。


「あっ、そうか」

「どうかしたの?」


 二段ベッドの上からアールスが聞こえてくる。


「なんでもないよ」

「そう?」


 ……そうだ、魔力(マナ)に触るっていう事は今まで試してなかった。

 ライトが出て魔力(マナ)を感じられるうちに魔力(マナ)を動かし僕の手に集めてみる。


「おお……」


 魔力(マナ)が集まるにつれて掌に圧力みたいな物を感じる。


魔力(マナ)が集まるとこんな感触がするんだ。よし)


 ライトを消しもう一回魔力(マナ)が掌に集める。


(イメージだ。ライトが出てた時と同じ様に魔力(マナ)が動いているイメージをするんだ)


 すると掌にさっきと同じ圧力を感じた。


「できた!」


 今分かった。僕はただ魔力(マナ)を操っていた事に気づかなかっただけなんだ。

 そして魔力(マナ)を感じるって事は……。

 今度は魔力(マナ)が身体中に留まるイメージをする。そうだ、先生が言ってたじゃないか。ヒールを使った時魔力(マナ)を抑えた所が素晴らしいって。きっとそれがヒントだったんだ。

 身体中に圧力がかかるのが分かる。これが魔力(マナ)の感触。けど、なんとなくこのままじゃ圧力がかかり続けて危ない気がする。


「ん~……はぁ。とりあえず今日はここまでだな」


 魔力(マナ)を抑えるのを止めると身体中にドッと疲れが襲ってきた。


「できたの?」

「ヒントは掴めたって所かな」

「すごいなー。私全然だよ」

「コツは魔力(マナ)を身体に留める事だよ。ただそれだけじゃ身体に負担がかかるみたいなんだよね」

「私まだ魔力(マナ)動かせないよ」

「そこは練習あるのみだよ。さて、疲れたからもう寝るよ」

「……じゃあ明かり消します」

「ごめんねフェアチャイルドさん。魔法使ってもらって」

「いいんです……精霊さんにお願いしているだけですから……ケホッ」

「大丈夫?」

「はい……消したら、私も寝ますね」

「うん。お休み」

「お休みー」


 ベッドの中に入ると部屋の明かりが消えた。




 次の日、僕はいつもの時間に起きた。

 窓から朝日が差し込んでいる。今日はいい天気になりそうだ。

 日課であるランニングをするために服を着替えるためにベッドから出ると、二段ベッドの上から衣擦れの音がした。


「う~……ナギ、おはよ」


 アールスも起きたようだ。


「おはよう。アールス。今日もいい天気だよ」

「ん~そろそろ暑くなってきたね」

「たしかに」


 と言ってもこの辺の気温は前世の世界よりも四季の気温差が少ない。たぶん夏は二十℃前後、冬は十℃前後といった所だ。当然この世界で雪なんて見た事がない。

 正直僕にとってはこの世界の夏の暑さは大した事はない。

 服を着替え終わると、フェアチャイルドさんの方から音が聞こえた気がした。

 寝てるのだから音が聞こえてもおかしくないけれど、呼吸音のように聞こえたんだ。普通呼吸音なんてちょっと離れていたら聞こえるはずがない。

 僕は気になってフェアチャイルドさんのベッドを覗いてみた。


「!? アールス、すぐに先生呼んできて」

「! わかった!」


 フェアチャイルドさんのおでこに手を当ててみると熱があった。

 フェアチャイルドさんが熱を出したのはこれが初めてじゃない。春季休暇の時も熱を出して故郷に帰れなかった。

 取り敢えず僕はタオルを出して、桶を持って来るために部屋を出る。

 桶は一階の物置に置いてあるから、駆け足で一階へ行き桶を持って部屋へ戻る。

 戻るとレノア先生がフェアチャイルドさんを診ていた。


「『クリエイトウォーター』」


 魔法で桶に水を貯めてタオルを桶に漬ける。そこでふと思い出した。もしかして魔法でこの水を冷たくする事が出来るのではないだろうか。お風呂だって魔法でお湯を出しているんだし……いや、それは後だ。


「先生、タオルを」

「ありがとう」

「レナスちゃん大丈夫かな……」

「大丈夫よ。ちょっと熱が出ただけ」

「はい……皆さん……ごめんなさい……」

「フェアチャイルドさんは寝ていなさい」

「はい……」

「あなた達二人も、風邪が移るかもしれないからロビーに行っていなさい」

「はい……」


 後ろ髪を引かれる思いで僕達はレノア先生の言う通りにロビーへ向かった。

 ロビーに着くと僕はもう一度物置にいき桶を持ってロビーに戻る。


「それどうするの?」

「魔法の練習に使うんだ。水を冷たくできれば、フェアチャイルドさんも喜ぶかなって」

「!! 私もやる!」


 アールスは慌ただしく物置の方に走っていき、桶を持って戻ってくる。

 さて、取り敢えず冷たい水が出るイメージでウォータークリエイトを使ってみる。


「『クリエイトウォーター』」


 桶が水で一杯になる。触ってみると冷たい水が出来た。


「結構簡単にできた」

「私も!」


 生活魔法は本当に簡単なイメージだけでできる。名前を唱えているのはあくまでもイメージの補完のためだ、と魔法を教えてくれたお母さんが言っていた。

 試しに何も言わずにライトをイメージだけで発動させてみる。

 ……普通に発動できた。前はすぐに消えたんだけど、魔力操作(マナコントロール)が上手くなったからなのかそれとも慣れたからなのか。

 じゃあ次は氷をイメージして発動を……発動? どうやって?

 僕はそこで初めて発動のさせ方が分からない事に気づいた。今までは名前を唱えて発動させていたから名前が分からないと発動させる事が出来ない。

 名前を口にださず出したライトはどうだ?心の中でライトと唱えた。

 つまりスイッチのオンオフみたいな物だ。名前がボタンで、名前が分からないというのはボタンの場所が分からないみたいな。


「名前か……」


 自分のイメージしやすい名前を名付けてみたらどうだろう?


「『アイス』」


 目の前に氷が出るイメージ。

 ……できた。僕の掌に収まるほどの大きさだけど。クリエイトウォーターの水も安全らしいし、この氷も大丈夫だろう。けど、問題なのはだ。


「なぁに? それ」

「あ、あはは、何だろうね」


 僕は生まれ変わってから一度も氷を見た事がない。魔法で出せるって事は存在しないって事はないんだろうけど、この辺は自然に出来るほど寒くならないんだ。

 一度も見た事がないはずの僕が氷を出せるのは不自然だろう。

 アールスに気づかれない様に氷を桶の中にいれ水を捨てに行ってくると言ってその場を離れた。


 水を捨てる道すがら他にも何か出せないかと思い試してみる。

 出すのは電気、土、金属の三つ。適当に名前を付けてイメージをする。

 結果は出せたのは電気と一つまみほどの土で、金属は無理だった。電気を出した時バリっと大きな音が出たのは驚いた。

 出せるものと出せないものの差は一体何だろう?

 いや、後で先生に聞けばいいか。今はとりあえず目標の冷たい水はできたんだ。よしとしよう。

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