プロローグ
世の中には選択した事を後悔する事なんて山のようにある。
あの時ああしていれば、あんな事を選ばなければ。
僕はなるべく後悔の無いように生きたつもりだった。けど先の事なんて見えないわけで、そんなに長くない人生でも選んだ事を後悔したなんて多々ある。
けれども今こうして一生を終える事になってまぁ概ねいい人生だったのではないかと思っている。
ただ心残りなのは、僕が助けた男の子は無事だったのだろうか。
『ご安心ください。あなたの助けた男の子は無事ですよ』
(ああ、そうなんだ。それはよかった)
僕はその言葉に安心した。
死んだら一体どうなるんだろう。この意識はどこに行くんだろう。生まれ変わったりとかするのかな。
『清き魂を持った有栖川那岐さんには三つの選択肢があります』
(へ~三つもあるんだ一体どんな選択なのかな)
『一つ、このまま天国へ行く。二つ、記憶をなくし同じ世界に転生する。三つ、記憶を持ち異世界に転生するの三つです』
(異世界? 一体どんな世界なんだろう)
『あなたの異世界の転生先は、あなたの世界で言う所の剣と魔法のファンタジー世界です』
(剣と魔法の? 魔王とかいるのかな。いたら怖いなぁ)
『はい。おります』
(ん~。怖いなぁ。もっと安全な所はないの?)
『申し訳ございません。異世界へ転生する際は危険な世界へお送りしなければならないという決まりがあるのです』
(なんでそんな決まりが?)
『はい。世界は星の輝きよりも遥かに多くあります。その一つ一つの世界には存在できる魂の総量に決まりがあります。
安全な世界ではその総量が減りにくくたやすく新たに魂を受け入れるわけにはいかないのです。ですが危険な世界は魂の総量が減りやすいのです。
もしも魂の総量が一定量未満になってしまったら魂の循環もままならずその世界は滅びてしまうでしょう。そうならないために私は魂の斡旋を行っているのです』
(なるほどなるほど。でもわざわざ危険な世界に行きたいなんて人いないんじゃないかな?)
『それがそうでもありません。平和に退屈した人が刺激を求め危険な世界に行く事は多いのです。
それに特典として優れた能力が一つランダムで与えられます。
これは同じ世界限定ですが何度死んでも同じ種族に転生し、異世界転生する際に得た能力を持ち越す事ができます。
ただし記憶は失われますが』
(危険っていうのもよく分からないんだよね。どういう基準なの?)
『端的に言えば自然現象以外の事柄で人が生きていく上で死亡率の高い世界です。先ほど述べた魔物のいる世界、人と人が争う世界。弱肉強食の獣達の世界などがありますね』
(動物達に殺されるのは自然現象じゃないんだ?)
『はい。命あるモノに殺されたら、と考えればわかりやすいかもしれませんね』
(人以外には転生できないのかな?)
『希望があれば人以外にも転生はできますが、その場合の転生後の世界で転生を繰り返すのは希望した生物となります』
(もし天国に行ったら魂の総量ってどうなるの?)
『天国はあなたの世界の天国なので総量は変わりません』
(じゃあ最後にもう一つ。どうして魂の総量って減るの? 魂が同じ世界で転生するんだったら減るのっておかしくないかな?)
『清き魂のまま転生するとその魂は力を得ます。そして、清き魂のまま転生を繰り返すと力が大きくなりすぎて世界が耐えきれなくなるのです。
世界が耐えきれないと判断された時世界から虚空へ解き放たれ、虚空で清き魂は新たな世界へと生まれ変わるのです』
(え~と、世界って宇宙って考えてもいいのかな)
『よろしいかと思います。そして、戦乱の続く世界には清き魂が生まれやすいのです』
(じゃあ僕宇宙になっちゃう可能性があるって訳か。スケール大きいなぁ。どうしようかなぁ……異世界面白そうではあるんだよなぁ。僕十七で死んじゃったしもうちょっと生きたい気もするんだよね)
『どうなさいますか?』
(う~ん。じゃあ異世界転生で)
『かしこまりました』
僕はこの時、どうせ今際の際の夢として軽く考え選択してしまった。
本当に軽い気持ちだったんだ。素直に同じ世界に転生していれば……僕は『後悔先に立たず』。この言葉を転生した後の世界で心に深く刻み込んだ。