戻らない日常
翌日も柊美雪の攻勢は続いた。
「橘君、いつも何を読んでいるんですか?」
「橘君、私クッキーを作ってきたんです。」
「橘君、今度のテスト範囲ですけど。」
いい加減にして欲しい・・・・・
あれから一週間経ったが、事あるごとに柊美雪が俺に話しかけてくる。
距離を取るという考えは柊美雪に悉く阻まれてしまう。
校舎裏で本を読んでいても、廊下をぶらついている時も柊美雪は俺を見つけて話しかけてくる。
当初は「ああ。」「そうだな。」など適当に応対していたが、最近はしつこさに応対が雑を通り越して悪態になってしまう。
「五月蝿いぞ変態女。」
「食べてやるから、其処に置いてどこかに行け。」
「邪魔だから少し退け。」
しつこさに苛立ち悪態を吐く。悪態を吐く度に「神の寵愛」の数値が上がる。謎の多い「神の寵愛」が上がる事で俺は余計に苛立つ。その結果更に悪態が出てくるという悪循環に陥っている。
その上、柊美雪に気の有る中野の俺に対する虐めが酷くなっていく。
特に意味も無く俺を殴ったり、俺の教科書を捨てたりなど悪化する一方だ。
柊美雪と話しているときは特に酷く、俺に蹴りを入れて床に倒すと何度も踏みつけてくる事も有った。
柊美雪の制止で止めたが、バフのかかった俺でなければ重傷だったろう。
現在のステータスなら簡単に叩きのめすことは可能なのだが、そうなると俺が学校を退学させられることになる。
ちなみに担任の教師は相変わらず見て見ぬ振りだ。
まあ、屑に期待するほど甘い人生ではなかったので、最初から期待していない。あれはただの出席を取るだけの機械だと考えているので役に立たなくともそれは構わない。
普段だったら中野のことも流してしまえるのだが、柊美雪の攻勢に辟易している俺としては中野に対しても怒りが沸いてくる。
何とかこいつを排除して柊美雪と「神の寵愛」の対策に集中したい。
ステータスを開くとやはりストレスが大になっている。
名前 :橘 悟
年齢 :16
身長 :175
体重 :63
力 :235
速さ :245
賢さ :260
容姿 :287
幸運 :270
体力 :202/257
状態異常:ストレス(大)
祝福 :神の寵愛(786)
外傷 :無し
技能 :二輪自動車運転技能
激昂が出ていないだけマシだろうが、最低でも中野だけでも何とかしてストレスの原因を減らしたい。
このままだとストレスで何をするか分からない。
放課後そんなことを考えていると、また柊美雪が話しかけてくる。
「橘君、もし時間があるならこれから買い物に付き合ってくれないかな?」
ストレスの根本原因に対して俺はいい加減にブチ切れた。
「いい加減にしろ、金持ちの道楽に付き合っている暇は無い!こっちは明日食う飯も自分で稼がなくちゃならないんだ!」
俺の言葉に流石に堪えたのか柊美雪は涙目になる。
俺も言い過ぎたとも思ったが、流石にストレスを溜め過ぎて自制出来なかった。
「これからバイトだ!!お前に構っている暇なんて無い!!買い物に行きたいのならお前を大好きな中野とでも行け!!」
そう言うと俺は鞄を持って教室を出て行く。
「ごめんなさい、私橘君のこと何も考えないで・・・・」




