ステータス
唐突な話だが、俺はステータスを表示出来る。
一般的に言われるステータス表示画面を俺の視界にだけ投影することが出来る。力、速度、賢さなど一般的なパラメータを100を一般人の基準値として表示され、風邪などのバッドステータスも表示される。
しかしこれらは俺の能力の一部でしかない。
ステータスと言っているがそれは便宜上そう呼んでいるだけで、実際には「現在から過去の自分の全ての情報を閲覧することが出来る能力」と言った方が良い。この情報には細胞の個数から記憶までありとあらゆる自分に関する情報を閲覧することが出来る。
小さい頃は誰でも出来ると思っていたが、そうでは無いと気付いてからは誰にも教えていない。誰にも信じて貰えず嘘吐き呼ばわりされたからだ。特に両親を亡くし養護施設に引き取られてからは、他人に知られないように努めてきた。
小中学校の時は炎を出すとか空を飛べるだといった、格好の良い能力だったら良かったと何度も思ったが、高校受験と共にその考えは消え去った。
何せ過去の全ての記憶も閲覧できるのだ、一度でも頭に入った記憶ならどれだけ経っても忘れることは無い。いや、忘れてはいるのだ、忘れていたとしても簡単に記憶のサルベージが出来る為、記憶力が物を言う教科は簡単にテストで高得点を取れる。数学など自分で考える必要のある教科は努力が必要だったが、それでも暗記にかける時間を廻すことが出来たので助かった。
日常生活でもバッドステータスも兆候の段階から表示されるので、風邪などは自覚症状が出る前に対処が出来る。それに炎や飛行と言った目立つ能力とは異なり、この能力を使えることは俺が教えない限り誰も知ることが出来ない。
つまり、俺の能力は地味であり、視認できないからこそ、現代社会で完全にノーリスクで乱発出来るのだ。
その所為か、最近は起きたらステータスを表示、買い物に行くのもステータスを表示と言ったように、事有る度にステータスを表示している。
唯一の難点は意識的に表示を更新しないと、表示内容が最新の情報に更新されないことだろうか?
俺はこのステータス表示を駆使して受験戦争に打ち勝ち、学区内の進学校に入学することが出来た。
高校入学と同時に施設を出て一人暮らしを始めた。アパートに関しては奇特な資産家の爺さんが貸してくれた。何でも同じ学校の卒業生で、俺の話を聞いたら格安で貸してくれることになった。別に俺に限った話では無いらしく、同じ学校の新入生で俺のように身寄りが無いとか、一人暮らしすしか無い生徒には貸し出しているらしい。
ただ、学費は奨学金が取れたので問題ないが、生活費はバイトで稼がなくてはならない。学業とバイトの両立は何かと大変だが、まあ養護施設よりは自由があってはるかに良い。
(ステータス表示)
俺はステータスを表示させる、通常表示している簡易表示だ。
詳細を表示しようとすると情報量が多すぎて何の参考にもならない為、表示内容を限定している。こう言った表示内容のカスタマイズもある程度可能なのがこの能力の優れたところだ。
名前 :橘 悟
年齢 :16
身長 :175
体重 :63
力 :105
速さ :110
賢さ :102
容姿 :98
幸運 :43
体力 :110/130
状態異常:眼精疲労(低)
外傷 :左手薬指にささくれ
技能 :二輪自動車運転技能
まあ、平均よりは多少マシ程度の数値だ。幸運については察してくれ。
ちなみにヒットポイントは存在しない、どうやっても表示出来なかった。力などは恐らく全身の筋肉量や密度から、速度は走る速度から、賢さはIQから出しているようなので、ヒットポイントに関しては表示する為の基準が無いためだと考えている。
逆に失血量から求めた残り時間は表示出来たので、明確な基準を設けることが出来ればヒットポイントも表示出来るのだろう。ただ明確な基準を設けるということは限定的な情報になるので、いつも表示させる意味は無い。代わりに状態異常と外傷を表示しているので、自覚症状が無いことでも即座に把握することが出来るので問題は無い。
ただ気になるのは容姿だ。これがどのような基準で算出されているのかが分からない。それこそヒットポイントの方がまだ分かりやすいと思うのだが・・・・
俺はそんな地味だが便利な能力を使って、地味に楽をして生きていけると考えていた。
あの女と出会うまでは・・・・