承
学校が終わって自宅に帰ると、部屋に一通の手紙が置いてあった。
それは結花からの手紙でした。
私は二階の部屋から一階のリビングに走っていく。
「お母さん。お母さん!結花から手紙きた!」
「そう、よかったわね。なんて書いてあるの?」
私は手紙を急いで、でも丁寧に開けると
愛理へ
明日、お昼頃に愛理の家へ向かいます。
そう書かれていた。
「明日のお昼頃来るんだって!たのしみだなぁ」
「そう。ならはやくご飯食べて、お風呂入って、はやく寝ないとね」
「うん!今日の晩御飯は?」
「焼き魚よ」
「えぇ~。魚~?」
「明日はオムライスにするから。我慢」
「むぅー。分かった。我慢する」
その日はあっという間に過ぎていった。
そして、土曜日。
「久しぶり!会いたかったよ!結花~」
「うん。先週も会ったけどね。私も会いたかったよ、愛理」
結花が家に着きました。嬉しくてハグもしちゃいました。
「はやく家に入ろう?」
「うん、分かった。今日はね、晩御飯オムライスなんだよ」
「そうなんだ。嬉しい」
もう二人とも笑顔だけど、もっともっと笑顔になるんだ。
話したいこといっぱいあるし。聞きたいこともいっぱいあるし。
「いらっしゃい。結花ちゃん」
「お邪魔します」
結花は礼儀正しく挨拶すると荷物を玄関においた。
「愛理。結花ちゃんの荷物を部屋に持って行ってあげて」
「うん。任せて」
いつも結花は服とが入った大きなバックを持ってきます。
中にはあんまり物は入ってなくて、そんなに重くはないけど、体が弱い結花のために私が二階まで荷物を持って行ってあげます。
「ありがとね。愛理」
「ううん。へっちゃらだよ」
そのまま結花と一緒に二階の部屋まで行きます。
すると、下からお母さんが話しかけてきて、
「何かお菓子食べる?それともお昼がまだ?」
「結花、お昼は?」
「食べてきたよ」
「お母さん!お菓子で!」
「分かった。すぐもってくよ」
そうして、晩御飯の時間まで二人で話ながら過ごします。
授業のこと、明日どこに行こうかなってこと、テレビのこと、マンガのこと、友達のこと。
そんなとき、思い出したのでこの話をしました。
「そうだ。結花、私っておかしいかな?」
「おかしいって?」
「なんかね、璃子ちゃんが私はおかしいって。たしかによく結花のことばっかり考えてるし、授業中とかぼーっとすることあるけど」
「そうなの?嬉しいけど、でも、学校のことはちゃんとしないとだめだよ?心配なんだから」
「心配してるの?」
「もちろん。愛理はちゃんと授業聞いてるかな~とか。みんなと仲良くしてるかな~とか」
「そっか。そうだよね。私も結花のこと心配だもん」
もしかしたら、璃子ちゃんも私のこと心配してくれてたのかもしれない。
結花が引っ越して、こんなになっちゃったから、心配して。
「璃子ちゃんにひどいことしちゃったかな・・・」
「だったら、ちゃんと謝ればいいんだよ。そしたら、璃子だって許してくれるよ」
「そうかな?」
「うん。愛理なら大丈夫!」
そっか。なら、謝らなきゃ。月曜日にでも、会ったときにちゃんと。
そして、晩御飯。
帰宅してきたお父さんとお母さんと、結花と私。
四人で食卓を囲む。
今はまだ家族じゃないけど、いつかは。
そんな風になれたらなって。
「ん~。お母さんのオムライス美味しいなぁ。ね?結花」
「うん。とっても。こんな料理作れたらなぁ」
「今度一緒に作ってみる?」
「いいね、今度作ってみよう」
「いいよね?お母さん?」
「ええ、なに作りたい?」
そうだな、親子丼もいいけど、
「私はオムライス!結花は?」
「私は・・・、オムライスかな?」
「一緒だね!」
「ならオムライスで決まりね」
「やったー!楽しみだね。明日作る?」
「え、明日は・・・」
「明日は結花ちゃんの好きな親子丼でしょ」
「あ、そうだった」
「ひどーい」
結花は親子丼が好きなんです。前に家族で食べたのが美味しくて好きになったみたいです。
楽しい時間ははやく過ぎていくもの。
気付けば、お風呂に入る時間。
「結花、一緒に入る?」
「愛理。お風呂くらい1人ではいりなさい」
お母さんに止められました。
「はーい。じゃあ、待っててね。結花」
「うん。部屋で待ってるね」
愛理がお風呂に入っている間、家には静寂が訪れます。
「愛理。大丈夫だろうか」
心配する父。
「大丈夫よ、結花ちゃんが近くにいるもの」
信じる母。
それもまた、愛なのだろうか。
お風呂から出たあと部屋に行くと、結花が漫画を読んでました。
その部屋を見て、
「あ。結花、部屋を片付けておいてくれたの?」
自慢ではないけど、私の部屋はいつも汚いです。
読みかけの漫画、お菓子やジュースのごみ、服。いろんな物が散らかっています。
それを結花はくるたびに、掃除してくれるのです。
「だめだよ。使ったら片付ける。いらないものは捨てる」
「むぅー。だって、掃除してると、いろんな物が出てきて進まないんだもん」
「だってじゃないよ。私に頼ってばっかだとお母さんに怒られちゃうよ」
「あ、お風呂どうぞ」
「ごまかさないの。入ってくるから、散らかさないでね」
はーいと返事をすると、結花は部屋を出て行った。
好きな漫画を読みながら待っていると、30分ほどで戻ってきた。
「ふぅ~。おまたせ。いいお湯だった~」
普通のお風呂だけど、いつもそう言ってくれる。
「寝るまで何する?」
「何って。もう、寝ましょうよ」
「えぇー、まだ10時だよ。あ、トランプしようよ」
「わかった。イヤになるまでしてあげる」
いつも負けてばっかりだけど、今日こそは。
しかし、
「もう~。結花強すぎ~。全然勝てないし~」
「ふふ。愛理が単純過ぎるのよ。いいとこでもあるけど」
ふぁ~、と欠伸をすると、結花からもう寝ようと提案された。
明日はどこに遊びに行こうかな、聞いてなかったや。
まぁ、いいか。また明日で。
ベッドに倒れるように転がると、
「おやすみ、愛理」
結花もベッドに入ってくる。
「うん、おやすみ結花」
2人はいつも通りキスをして眠りについた。
日曜日は、思い出の場所を二人きりでまわった。
公園、デパート、学校、ゲームセンター。
やっぱり、どこでも二人なら楽しいや。
「それじゃあ。愛理。私はもう行くから」
「うん・・・」
寂しい。
「愛理、また来週もくるから」
「ほんと?」
「うん。ほんと。だから笑って?」
「うん。またね、結花」
笑わなきゃ。
「それじゃあ。さようなら」
なぜか、その後の記憶が曖昧で。気付いたら部屋で眠ってた。
でも、夢なんかじゃない。
ちゃんと、結花はそこにいて、話をして。
でも、時々悲しくなる。
なぜか、涙が止まらなかった。