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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

彼氏がいる男を好きになってしまった。

作者: 悠里

 彼氏がいる男を好きになってしまった。別に誤字ってるわけではない。至って本当だ。彼には、愛する彼がいるのだ。あぁ、なんだか頭がおかしくなりそうだ。


 別に、彼が世間一般で言うゲイだと初めから知っていたわけではない。彼は笑顔の素敵な大学の人気者だ。そんな彼に恋する私はおかしくないと思う。叶うわけもないのに彼が恋人になったら…なんて妄想したこともある。いいじゃないか、考えることくらい。

 そんな彼には、親友らしき男がいた。茶髪の彼に反して黒髪の彼は、殆ど彼と行動を共にしている気がする。気がする、ではなくて実際そうなのだけど。私の友達に男同士の、俗に言うBLというジャンルが好きな子がいて、彼等二人を見て「どっちが攻めなのかしら…」なんて言っていた時にはそんなのないわよと軽くあしらったのを覚えている。女の子にモテモテの彼が、そんなわけないって。


 それを見たのは、確か雨が降っていた日だったと思う。

 講義の最中に降り出してきて、私はその日傘を持ってきていなかった。天気予報では曇りだったので、天気予報を恨んだ。雨が降るまで大学にいようかな、と大学内をふらふらと歩いていた時だった。

 あまり人気(ひとけ)のない廊下の曲がり角を曲がろうとしたとき、声がしたのだ。


 「…やばい、って…こんな、んっ、ところで」

 「…大丈夫、安心して。誰もいないよ」

 「んぅ、!」


 男女の乳繰り合いならまだ理解できた。こんなところでするようなことではないが、異性同士、たまにはこういうこともあるのではないかと思う。でもそれは初めに言ったとおり、その対象が男と女の場合だけだ。

 両者どちらも、声が完全に男声だったのだ。…まあ、若干喘ぎが多いほうが高めのような気がするが、それを差し引いてもその声は男だった。

 

 「…ぁ、んん、は」

 「…はぁ、」


 そんなことを考えてるあいだも、ふたりの行為は終わりを迎えない。え、何してるの?キスでしょ?キスがいいってわけじゃないけど、それ以上なんて公序良俗に反してる。キスがギリギリ。

 私はその場から動けなくなっていた。彼らの声が耳を摺り抜けてくれない。ちゃっかり私の頭はその声を奥の方までこびり着かせる。あの友達に言ってあげれば酷く喜ぶかもしれない、なんて現実逃避もしてみるが、逃避しきれなかった。


 (…どうしよう)


 パニックだ。私は生憎例の友達のようにアブノーマルな関係に笑顔を向けられるほど耐性はついていない。正直、気持ちが悪い。

 とうとう私は足が動かず、その場にしゃがみこんでしまった。

 顔を上げず、それが終わるのを必死に待つ。


 「も、…むり」

 「…んー、じゃあ続きは俺の家でってことで」

 「えぇ、もうやだ…」

 「あはは」


 幸運なことに彼らは私に気づかなかった。そばの自動販売機のおかげかもしれない。そう思うことにする。だけど、不幸なことでもあった。

 ちらり、と彼らの後ろ姿を見た。私は目を見開いた。そのふたりは、彼らだったのだ。茶髪の彼は、黒髪の彼に愛おしそうに、これまで見たことのない微笑みを向けていた。吐き気がした。


 思いもよらない彼らの関係に、私は軽く欝になった。直ぐに元に戻ったが、大学内でも茶髪の彼を今まで以上に直視することができない。特に二人でいるところなんか、先日の音声が脳内リピートでやっていられない。

 このことを誰かに、もういっそのこと例の友人に話そうかと思った。でも彼が黒髪の彼以外の友人と仲良さげに話している様子を見ると、それは思い止まってしまう。

 

 (私が、勝手に聞いただけ…)


 彼らはきっと、隠していると思う。だってみんなの前では決して手を繋いだりしないし、キスなんてもってのほかだろう。だったら私はきっと、このことは誰にも言うべきではない。

 諦めようと思った。彼氏がいる男なんて、女の私に勝ち目なんて微塵もないじゃないか。でも、彼は優しいから、時偶触れる彼の優しさにどうしても心が揺れ動くのも事実。


 あぁ誰か、彼氏がいる彼を振り向かせる方法を教えてください。




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