0-0 プロローグ
※この話は一部、強制完結させた「猩々緋の異世界人」の設定を流用していますが、読んでいなくても全く問題ありません。別の作品と考えて下さって大丈夫です。
警告タグで既に警告しているので、残酷描写・R15シーンの入る話について、前書きでの警告は致しませんので、ご了承ください。
―― この世界の生命は全て、原罪を抱えて生き存えているのです ――
そんな謳い文句から始まる絵本が語るのは、この世界の起こりと規則、子供向けに言葉を柔らかくした、けれどこの出だしだけは子供には硬い言い回しの、創世記のお話。
原初の世界には一柱の神様がいて、その何もない場所に命の種を植えたという、そんな話。
種は何もない場所で神様の血肉を糧に成長し、広大な『大地』へと変貌を遂げた。
神様の血肉はそれ自体に恩恵でもあるのか、大地は良く肥え、青々とした草木を茂らせる。
一番大きな樹が感激した神様の涙を受けて魔力を帯び、『神樹』となり、葉から滑り落ちた涙は低地に流れ込み、これまた広大な『海』となった。だから海の水は塩辛く、感激に流された水は多くの命を孕むのだという。
神様は大地と海、それぞれに命の種を撒き、自分の目となるように『太陽』をおいて、薄い紗のような『空』で蓋をした。
やがて、太陽と大地と海の恵みが合わさり、多くの命が生まれた。
けれど同時に多くの命が潰え、大地に還り、神様は太陽の目を瞬かせた。
神様がこの『世界』を『観察』する為の目が強すぎて、海も大地も干からびていくせいだ。
そこで神様は常昼だった世界に『時間』を作り、一日を『朝』と『昼』と『夜』に分けた。
けれど夜は真っ暗で、これでは何も見えはしない。
新たに光源を作り出そうにも、神様が作ったものはみんな太陽になってしまう。
そして芽吹いた命も、神様のように明確な意志も、育った心も存在しない、人形のような存在だった。
『箱庭』の『お人形遊び』は、いよいよ行き詰まってきていた。
そこで考えに考えた神様は、ここで一つの間違いを犯してしまった……
その結果生まれたこの世界の生命は皆、常に『原罪』を抱えて生きている。
罪を贖う術は無いに等しく、できる事といえばこの罪悪感を軽くするために日々の生活や糧に感謝するしかない。
それでも出てくる不平不満に不穏な考え、欲に満ちた薄汚い心は、明確な形を成して私達に襲いかかる。
身から出た錆の集合体に、それでも私達は必死になって抗い、生を勝ち取るべく剣を振るう。
私達は罪人の子。生まれながらに罪を負いながらも死を恐る矮小な存在。
それでも私達は生きなければならない。
私達の先祖が罪を背負ってなお叫んだ言葉を。
『生きたい』と望んだその声を。
神様が見捨てた、この声を。
私達ごと包んでくれた『あの方』に報いる為に。
私達は、生きる事を諦めてはならない。
~ とある神学者の手記より抜粋 ~
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