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第六話:試練その2

 俺は暗闇、いや、暗黒の中を歩いている。そこは光が全くなく、何も見えない、自分がこの暗黒の一部で、本当は存在していないんじゃないかという感覚さえする。本当に進めているかどうかもわからない、そんな中、俺はひたすら出口を目指して歩いている。『絶対に生き返る』その思いだけが俺を支えている。


 ***


 龍王さんは漆黒の扉を指しながら、第二の試練を説明してくれた。

「第二の試練は、この扉から続く道を通って最後の試練の会場まで向かってもらう」

「たったそれだけですか?」

「ああ、それだけだ」

「・・・わかりました」

 何か裏がありそうな感じがしたが、龍王さんの表情からは何も読み取れなかった。

「それじゃあ、第二のシレン!闇の道、いってみよう!」

 そう言うと、俺に向かってしきりにウィンくしてくる九尾さん。

-俺に一体何を求めているんだ?

「んもう、そこはやってみようだよ。狐宮君!」

 シリアスな雰囲気ぶち壊しの一言だった。

 龍王さんは、引きつった笑顔になり、青筋を立てていた。

「九尾、貴様ー!真面目にやれ!真面目に!」

「ええー?私はこれでも充分マジメにやってるよ?」

「てめえ、本当に燃やされてえのか?ああ?」

 堪忍袋の緒が切れたのか、龍王さんの口調は滅茶苦茶荒れていた。

「上等よ!やれるもんならやってみろってのよ!」

「言ったな?覚悟しやがれ!」

 売り言葉に買い言葉、とたんにけんかが始まった。二人はもうすでに人間の姿ではなく、龍と狐になっていた。これが本来の姿なのだろう。

 俺は呆れてしまって、さっさと扉を開けて第二の試練を始めた。



-龍王のやつ、本気ね。いいわ、こっちも本気でって、何で私視点なのかしら?まあ、いいか、とりあえず今はこいつを倒す!

 龍王の目が赤く光り、咆哮するとあちこちから火柱が上がる。私はそれをかわしながら、九本の尻尾のうちの一本を竜巻に変え、龍王に放つ。

「龍が竜巻をくらうなんて、滑稽ね」

 私が言い放った言葉を歯牙にもかけず、龍王は目を青くして咆哮し、竜巻を凍りつかせ、自らの爪で粉砕する。

 私はその隙をついて無数の槍に変化させた尾で龍王の胴を一突きにするが感触がない。たちまち霧のように消えてしまった。

「ふん!どこを見ている」

 龍王の言葉に気づくと同時に、私の体が氷結し、動けなくなる。

-しまった!龍王の策にまんまとはまってしまったみたい・・・、なーんてね。

「今謝れば許してやらんこともないぞ」

 龍王は余裕しゃくしゃくだ。

「どうした?早く謝れよ?」

-ふん、あんたの敗因は、それを私だと思ったことよ。

 龍王の背後から、不意打ちをかける。と同時に自分自身に変化させた氷結した尾を自爆させる。無数の氷の破片が龍王に向かって襲い掛かる。

-これなら!

 しかし、龍王は一枚上手なようで、私の攻撃も氷の破片も龍王の光の障壁に阻まれてしまった。

「ふん、貴様の考えなどお見通しだ!」

「くっ!」

 戦況は圧倒的に不利だった。相手は全くの無傷、私のほうは九本の尾のうち、二本を失ってしまった。

-こうなったら・・・

 私は覚悟を決めた。全身の霊力を牙と脚に集中させる。龍王のほうもこれを最後の攻撃とすべく霊力を高めていた。そして、私たちが激突しようとしたまさにそのとき。

「なああああにやっとるんだああああ!きさまらあああああああああああああああああ!」

 激しい一喝に動きを止める私と龍王。

-や、やややややややばい!!!!!!!!

 特別調査室の入り口には、私達の上司、閻魔大王が仁王立ちしていた。


 ***


-俺はもうだめなのか?

 見えない出口に諦めかけた時、葎花の顔がよぎった。

-あいつとも約束したじゃないか!俺はあいつのためにも・・・

 そう強く思ったとき、急に光が差してきた。あまりのまぶしさに目を瞑る。

 目を開けると、そこは、ローマのコロッセオのようなところだった。

目の前には無数の修羅が牙を向く・・・。

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