第五話:試練その1
赤鬼さんと俺は閻魔大王の城、閻魔城に入って廊下を進んで行く。城内は外と違ってかなり明るかったが、かなり質素な感じであった。
『ここは、仕事場もかねておりますから』
気持ちを察してか赤鬼さんが説明してくれる。
「じゃあ、ここで地獄行きか天国行きか決まるんですね」
『ええ、そうなりますね』
どんどん歩いていくと『審判室』という部屋があり、何人?かの霊が並んでいた。
「結構並んでますね」
『いえ、狐宮殿はこちらへ』
「え?ここで・・・」
『狐宮殿は特別なのです。ささ、こちらへ・・・』
-俺が特別?一体どういうことだ?
赤鬼さんについて行くと今度は『執務室』と書かれた部屋の前にやってきた。
『さ、お入りください』
「わかりました。失礼します」
赤鬼さんがドアを開け、俺は中に入った。
-会社のような場所だな
執務室の中は数十のデスクが並びスーツを着た人?がモニターを見ながら、何かを書いている。
「あの、ここは?」
『死んだ人々がどのような人生を歩んできたかを見ているんです。それを報告書にまとめて閻魔様に渡し、それを基に閻魔様は天国行きか、地獄行きか決めるわけです。』
「でも、僕は何でこんな所に連れて来られたんでしょうか?」
『もうすぐ分かりますよ』
そう言いながら、さらに奥へと進んでいく赤鬼さん。仕方なくついて行くと『特別調査室』という部屋の前にやってきた。ここが目的の場所のようだ。
赤鬼さんがドアを開けて、僕を促す。俺が中に入ると、最後に一言声をかけてきた。
『がんばってください』
そしてドアが閉められた。
-死んでるのに『がんばってください』って・・・
訳が分からなかったが、とりあえず部屋を見回してみる。
どことなく、学校の校長室に似ている場所だった。
ただ一つ違うのは、机が二人分あることだった。
「ようこそ。狐宮龍弥殿」
いきなり後ろから声をかけられ、全く気配がなかった事に少し驚いて振り向くと、顔に龍をイメージしたかのような刺青のある男と九本の尾がはえた美女が立っていた。
「あなた達は?」
「これは失敬。私は霊界の守護神である龍王難陀。こちらは九尾玉藻」
「よろしく!」
青の男、龍王が丁寧なのに対し、美女、九尾の方はなれなれしい感じだった。
「俺は閻魔大王の審判を受けるんじゃないんですか?」
「貴方にはまだ生き返るチャンスがある。ゆえに審判はまだ受けなくてもいいんです」
「俺が生き返れる?本当なのか?」
思わず俺は龍王に詰め寄った。
「落ち着きなさいよ。チャンスがあると言っただけで生き返れると決まったわけでは無いわ」
さっきとは打って変わって、冷たい感じで九尾が
「俺は何をすれば良い?教えてくれ」
俺は九尾の目を見ながら聞いた。
「・・・あなたがするべきことは二つ。一つは私たちが出す試練をクリアすること、二つ目は私たちと契約すること」
「契約?」
九尾が顔を近づけてくる。俺も目をそらさずに見返す。
「そう、契約。生き返っても、地獄に行った方が楽なんじゃないかなと思うようなね。ま、試練をクリア出来なきゃどうにもならないけど」
かなり挑発的な九尾。
「やってやるよ。生き返れるならどんなことでも!」
-俺は約束したんだ。あいつらの分も生きると・・・
「狐宮殿、試練も契約も選択するのはあなたの自由だ。しかし、どちらもかなり厳しい道です。このまま死んだままなら、あなたは確実に・・・」
俺は笑顔で龍王に言う。
「たとえ修羅の道だとしても、俺は生き返りたい、いや、生き返らなくてはならないんです。だから俺は・・・」
「第一試練ごーかくー!オメデトーー!」
「は?」
俺はさぞかしマヌケな顔をしていることだろう。
-でも、仕方ないよな。
「なんと!今のが君の心を試す最初の試練だったのです!」
「はぁ」
-九尾さんキャラ変わり過ぎでしょ!
龍王さんが申し訳なさそうに話し掛けてきた。
「騙すような形になってすまない。だが、こうでもしないと感づかれそうだったからね。それと、早速第二の試練に移りたいのだが・・・」
「はい。お願いします」
「ここから先が本当の試練だ。覚悟はいいかね?」
「はい!」
「そうか、では・・・」
龍王さんが手をかざすと、どこからともなく漆黒の扉が現れた。