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第四話:事故と霊界

 今、俺はあの世(正確には霊界というらしい)にいる。

 そして、赤鬼に連れられて、閻魔大王が住んでいるという城に向かっている。

 そう、俺は死んでしまったのだ。


    ********************************


「それじゃあ、明日な」

「うん、明日ね」

 その日、結局俺は、夕飯をご馳走になってから家路に着いた。それと言うのも、なぜか美冬が葎花の家の前にいて、成り行きで二人きりになれなったからだ。その代わりに明日二人で遊びに行くことにしたのでそれはそれでよかったけれど・・・。


 家に着いて、風呂に入り俺は早めに就寝した。家族とも少しは話したが、どんな内容だったかはよく覚えていない。


 朝起きて、いつも通りにトレーニングを終え、身支度を整えると、俺は待ち会わせ場所の駅へと向かった。駅には予定より20分位早く着いたので、近くのコンビニに入った。

「よお」

 変な店員だと思ったら、クラスメートの巽だった。

「いらっしゃいませじゃないのかよ?巽」

「細かいことは気にすんなよ。今日はどうした?まだ8時前だぜ」

「デートだよ、デート」

「ふーん。どこ行くんだ?」

「遊園地かな?」

「なんだ、ノープランかよ」

「昨日決まったばかりだからな」

「おお、それじゃあよ。今日の夕方俺ら、ライヴやるから見に来てくれないか?」

 巽は学校の仲間とコピーバンドを組んで活動している。中三の時の文化祭ライヴはなかなかに好評だった。

-というか本番前なのにバイトしてんのか?

「どこでやるんだ?」

「ああ、駅前の喫茶店」

「わかった。気が向いたら行くよ」

 そう言って俺は雑誌コーナーで立ち読みを始めた。数分して、巽は客が来ないのをいいことに自身も立ち読みを始めた。

 もはや注意する気にもなれず、そのままにして俺は立ち読みを続けた。

 それがいけなっかた。俺と巽はトラックが接近しているのに気付かなかった。暴走したトラックは店に突っ込み、雑誌の棚ごと俺たちを吹き飛ばした。俺は受身を取る事も出来ずに、頭を強くぶつけて気を失った。いや、意識不明に陥った。そして、おそらく病院に搬送された後に死んだのだろう。そこら辺のところはよくわからない。

 なぜなら、気付くとそこはもう自分の知る世界ではなかったからだ。

 空は雷雲が立ち込めているときより、夜の空より真っ黒で、青白い球体が浮かんでいて、それが世界を照らしていた。

 起き上がって見ると、橋の架かった川があった。河原では子供たちが江戸時代に着ていた様な着物でみんな石を積んで遊んでいる。子供たちの声が聞こえてきた。

『一つ積んでは父のため・・・、二つ積んでは母のため・・・、三つ積んでは兄弟の・・・』

 誰が一番高く積めるか競争するかのごとくに一生懸命積んでいる。やがてみんな飽きたのか、鬼ごっこをし始めたようだ。そこへ、顔が真っ赤で角が生えた人型の生物がやってきた。(トラ柄ではなく普通の着物着ていた) 

『赤鬼さん、こんにちわ』

『はい、こんにちわ。時間には浄土へ帰るんだよ?』

 赤鬼は風貌とは裏腹に、優しい態度で子供たちに接していた。

-本物の赤鬼?ここは死後の世界なのか?

 こちらに気付いたのか、赤鬼が近づいてきた。

『狐宮龍弥殿ですね?』

「はい、そうですが?」

 俺は立ち上がりながら答えた。

『お待ちしておりました。こちらへどうぞ』

 赤鬼は先導しようと歩き出した。俺は一つだけ聞いた。

「確認なんですが、ここはあの世ですか?」

 自分でもうすうす感じていたが、確認せずにはいられなかった。

『そういう言い方をされる方もいますね。そうです。ここはあの世ですよ。そして、正確には霊界と言います。では、こちらへ』

 再び歩き出す赤鬼さん。俺もそれを追って歩き出した。


      *****************************


 歩いている途中で、赤鬼さんが話しかけてきた。

『ただ歩いてるのも退屈ですし、霊界の説明でもいたしましょうか?』 

「はい、お願いします」

-しかし、鬼って見かけによらず、ていねいなしゃべり方だな

『まず、最初にあなたがいた場所ですが、あそこは三途の川です』

「現世と霊界をつなげてるっていう川ですよね」

『現世ではそのようなことになっていますが、実は違うんです。あそこは修羅界と霊界の境なんです』

「・・・修羅界ってなんですか?」

 修羅界なんて生きているうちは聞いたことがなかった。

『知らないのも無理はありませんね、マイナーですし。修羅界というのは修羅と呼ばれる者達が戦い続けている闘技場のあるところです。現世では古代ローマのコロッセオのような場所ですね。』

「コロッセオのような場所ということは、誰かが観戦したりするんですか?」

『いいえ、修羅たちには理性がなく、危険すぎるのでほとんど誰も近づきません』

「ほとんど?見に行く方もいるんですか?」

『はい。月に一度、毘沙門天様が視察に行かれますし、修羅界の長である阿修羅様はいつも観戦しています』

「毘沙門天?阿修羅?」

-もう何がなにやら、ちんぷんかんぷんだ。

『毘沙門天様と阿修羅様は霊界の守護神です。毘沙門天様は七福神としても知られていますよ』

「ああ、分りました」

『じゃあ、話を続けますね。』

 赤鬼さんからその後も色々と説明を受けているうちに、閻魔大王の城にたどり着いた。


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