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第二十話:擬似悪霊その1

 そこは、龍弥達の住む街外れにある廃墟だった。壁にはツタがはびこり、崩れかけているところもある。地元の人間は誰も近づかない、元は何に使われていたかなど誰も知らない。

 時刻は真夜中、そんな建物の前に、三人の高校生がいる。龍弥、巽、春華だった。

「ここなのか?」

 龍弥が巽に問いかける。

「ああ。猫又のときにとりついてた悪霊が全部はいてくれたよ」

 春華は汗をたらしながら、二人に問いかける。

「ねぇ、やっぱやめない?こういうのは、警察のやることだし、気味悪いし・・・」

「それじゃあ、帰ればいいだろ?」 

 龍弥はすました顔で歩き出す。

「ちょ、ちょっと!」

「警察に言ったって、調査なんかしてくれないぜ?」

 そう言って、巽も敷地内に入っていく。

「ちょっと、一人にしないでよ!」

 一人にされそうになった春華は、慌ててついて行く。


 ***


 時間は19時間前にさかのぼる。

 龍弥はようやく寝るスペースを確保して、2〜3時間程度眠っていたところだった。


 ピロリロリー ピロリロリー


 携帯が鳴る。龍弥は眠たい目をこすりながら、のそのそと起き上がり、携帯をとる。

「もひもひ?うちは蕎麦屋じゃありませんよ?」

『寝起きか?』

「うちはすし屋です」

『・・・寝起きなんだな』

「ところで、どちらさまで?」

『俺だよ俺』

「振り込め詐欺なら、お断りですよ?」

『いい加減に起きろよ!巽だ!』

「響さん所のお坊ちゃんで」

『いい加減目を覚ませ、てめぇは!!』

 受話器越しに大喝されて、耳がキーンとなる龍弥。そのおかげで、龍弥の目は覚めたが・・・。

「もう少し待ってくれりゃあいいのに・・・」

『電話代の無駄だ』

「けちだな」

『何が悪い?』

「それで何の用件?」

 話が脱線して無駄に長くなるのは嫌なので、龍弥は話を進めた。

『ああ、猫又は俺等で退治した』

(俺等?)

『それで、その悪霊が千絵さん殺しを依頼した人間だった』

「な!?」

 巽はさらに続ける。

『それで、その悪霊の研究をしている人間も分かったぜ。どうする?』

「決まってるだろ?」

『そうこなくっちゃな。じゃあ・・・』

「待った!」

 巽に待ったをかける龍弥。強い語調だったので、巽も言葉が止まってしまう。

「もうちょっと寝かせて」

『ちょ、てめー!』


 ピ


 龍弥は通話を終了し、電源も切って、また眠りについた。


 *** 


 龍弥たちは廃墟の中を当ても無く歩いて・・・、もとい、探索していた。

 懐中電灯で辺りを照らしながら、龍弥は不思議そうに話し出した。 

「にしても、契約者なのになんでお前は、幽霊とか怖いんだ?」

 春華は巽に引っ付き、びくびくしながら歩いている。声も震えている。

「急に出てくるのが嫌なのよ。幽霊自体が怖いんじゃないわ」

「ふーん、じゃあこれは?」

 龍弥はふざけて、のっぺらぼうに変化して、春華の方を向く。

「いやー!」

 

 ばすん!


「いて!」

 ハリセンで叩かれる龍弥。巽は冷ややかな目で二人を見ながら、さっさと先に進む。 

「ちょ、無視すんなよ」

「無視はしてねぇよ。軽蔑してるんだ」

「そうよね。軽蔑もんだよね」

 巽は、春華の顔を見つめながら・・・。

「お前もだよ。ってか、お前ら何しにきたのか分かってんのか?」

 春華は、石化したように固まる。一方、龍弥はじと目で巽を睨みながら、鋭く切り返す。

「分かってるけどな・・・、二時間も歩いて、何も見つからないのはどういう意味だろうな?」 

「迷ったんだろ?」

 さも当然のように言う巽に対して、龍弥は怒鳴りつける。

「誰のせいだと思ってんだ!」

『ねぇ』

「なんだ!?」

 九尾にさえ怒鳴りつける龍弥。どうやらイライラが限界に達しているようだ。だが、九尾は軽く流して先を続ける。

『近くに、悪霊のにおいを感じるんだけど』

「悪霊か、まあ、悪霊を研究していた場所だし、これだけの廃墟だ。出てもおかしくは無いが・・・」

 巽は、九尾が異変を察知したのに気づいて、言葉を濁す。龍弥も自分なりの推論を話す。

「悪霊にはなっていない地縛霊じゃないのか?」

『うーん・・・、なんか地縛霊とも違うんだよね・・・』

「近づいてみるしかないな・・・」

 ここにいたのでは、これ以上の情報は入らないと判断したのか、そんな事を提案する巽。

「確かにそうだな・・・」

「私は、反対よ!」

 ようやく会話に参加してきた春華は、断固として反対した。巽と龍弥は異口同音に発言した。

「「怖いんだろ」」

「べ、別に、怖くなんか・・・、って置いてくな!」

 龍弥と巽はまた無視して歩きだしてしまったので、またもや春華はついていくしかなくなってしまった。

番外編の「エイト・アイズ あなざー・すとーりーず」も連載を開始しました。よければそちらも読んでみてください。(まだ一話目ですが)

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