表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/24

第十七話:敵その3

 その日は土砂降りの雨だった。家路を急ぐ人々と同じように、葎夏も急いでいた。

 葎花は雨の日が好きだった。周りからは少し変わっていると言われた。 でも、雨の日が好きだった。雨が傘を打つ音が好きだった。雨に濡れた街並み、風景が好きだった。そして、雨の日はいいことが起こるから好きだった。

 でも、今日は違っていた。


 ***


 家に帰り着き、葎花はドアノブに手をかける。


カチャカチャ


 ドアは開かない。鍵がかかっているようだ。

『あれ?明かりついてるのに・・・』

 葎花は疑問に思いながら、鍵を開けて家に入る。

「ただいま」

 返事は無い。

 聞こえなかったのだろうか、それとも電気をつけっぱなしで、どこかに出掛けてしまったのだろうか?

 葎花は自分の部屋に行き、荷物を置くとリビングに向かった。

 リビングに続くドアを開け、足を踏み入れる。


ぴちゃっ


 水溜まりを踏んだ感触がした。葎花は足下を見る。真っ赤な液体が有った。不安に駆られ、誰かに電話しようと、電話機に目をやると、そこには喉を喰い破られたようになり、血を垂れ流した母がいた。

 葎花はその場にへたれこみ、呆然となり、しばらくして電話をかけた。


 ***


ピロリロリー ピロリロリー


 龍弥が部屋で夏休みの宿題をやっていると、携帯の着信が鳴った。

「もしもし?」

『龍弥?』

「葎花か。どうした?」

『今、ひま?』

 葎花の声は消え入りそうなほど弱々しかった。

「ひまだよ。それより大丈夫か?」

『ちょっと大丈夫じゃないかも・・・』

「今、どこにいる?」

『家にいる』

 それを聞いて龍弥は、すぐさま決断を下し、葎花が安心できるように、話し掛ける。

「じゃあ、今から超特急で行くから待ってろ」

『わかった』

 電話が切れると、龍弥は、母親に断りを入れて外に出る。

 そして、龍王の能力を発動する。

「龍王開眼・転映」


 ***


ピンポーン


 インターホンが鳴った。葎花は相手を確認して、ドアを開ける。

「葎花。なにがあった?」

 ドアが開くなり龍弥は聞く。葎花の顔には血の気が無く、服には赤いしみがあった。靴下は赤く染まっている。

「たつや・・・」

 葎花はそうつぶやくと、龍弥にもたれかかる。

「葎花、とりあえず部屋に行こう」

 部屋に入り、葎花をベッドに腰掛けさせる。葎花はまだ少し茫然自失の状態だ。

「何があった?」

「リビング・・・」

「リビングに何かあるんだな」

 葎花は、こくんとうなずく。そして、顔を伏せて、固まった。

 龍弥は、一度状況を確認しようとリビングに向かった。

 数十秒後、龍弥が戻ってきた。

「隣、良いか?」

 葎花は、何も反応しなかったが、龍弥はそっと隣に座り、葎花の肩を抱く。

「う、う、う、・・・」

 葎花は安堵したのか、現実を受け止めたのか、むせび泣き始めた。

 

 ***


「とりあえず、君は帰ったほうがいいんじゃないか?」

 現場検証に来た刑事の一人が龍弥に話しかけてきた。

「心配しなくても、彼女はきちんと保護するから」

「母には許可とってありますから」

「いや、しかしだね」 

「そばにいてあげたいんです」

「わかったよ」

 そう言って、渋い顔をしながら刑事は去って行った。葎花は泣き止みはしたが、顔を伏せたままだ。 

「龍弥?」

「なんだ?」

「帰ってもいいんだよ?」

「なんで?」

「何も食べてないんでしょ?」    

「それは葎花もだろ」

「そうだけど・・・」

「いちゃ駄目なのか?」

 しばしの沈黙、龍弥は優しい声音でささやく。

「そばにいるよ。・・・ずっと」

 

ピロロピロロ ピロロピロロ


 龍弥の携帯が鳴る。

『メール?』


 ***


差出人:霊界

件名:指令

悪霊に取り付かれた猫又を鎮めよ。

  

 ***


『こんなときに・・・』

 龍弥は舌打ちをしたい気分だった。

『指令は指令ですから・・・』

 龍王はなだめるように言ってくるが、任務遂行のためなのはバレバレだった。

『ったく、仕方ないな。龍王さん』


ピロリロリー ピロリロリー


「もしもし?」

 龍弥はイライラを表に出さないように努めた。

『龍弥か?指令がきたよな?』

「ああ」

『お前は来るな』

「?」

『お前は染井のそばにいろ』

「なんで俺が葎花のそばにいるのが分かるんだ?」

『ニュースだよ。ニュース。それにしても行動が早いなぁ』

「ニュース?」

『見てないのか・・・。とにかく、今は染井のそばにいてやれ。いいな?』

「・・・ありがとう」 

『別に、礼には及ばねぇよ』

 電話が切れると、葎花がこちらを見つめているのに気づく。

「どうした?」

「・・・ニュースになってるんだね」

「ああ、そうらしいな」

「学校行けるかな?」

「大丈夫だよ。葎花は一人じゃないだろ?」

 葎花はしばらく逡巡して、躊躇いがちに話す。

「あのさ、しばらく龍弥の家に泊めてくれないかな?」 

 その瞬間、龍弥の思考は停止した。


 ***


 すでに雨は上がっている。月明かりがあたりを照らしていた。

 駅の近くのビルの屋上に二人の人影がある。一人は巽だった。巽が携帯で話し終わるともう一人に話しかける。

「これでよかったんだな?春華」

 春華と呼ばれた少女は、龍弥たちと同じ学校の制服をきて、腰まである長い髪をポニーテール状にしている。

 その整った顔立ちは月も恥じるほどだろう。

「ええ、今回の事件は私が解決すべきなのよ」

 その一言には、固い決意が込められていた。  

三人目の契約者、乾春華の登場です。巽と春華の活躍は次回をお楽しみに。(龍弥の活躍を期待された方ごめんなさい)

ついでに言うと、巽の苗字はひびきです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ