第十五話:敵その1
朝、五十嵐千絵の遺骨が納められている寺の前に、長身の少年が二人立っている。
一人は女好きのする顔で、黒髪を無造作にセットしていて、もう一人はこれまた整った顔に眼鏡をかけ、こちらはきっちりと髪をセットしている。
眼鏡の少年がもう一人の少年に話しかける。
「んで、どうするんだ?」
「ああ、九尾に霊子のにおいを嗅がせて犯人を見つけるんだよ。頼むよ」
『ほい』
「間の抜けた返事だな」
眼鏡の少年が揶揄する。
『別に危険じゃないんだからいいでしょ?』
「そうだよ。くだらない事は置いといてさっさと終わらせよう」
少年はずんずん進んでいく。
『くだらないこと・・・』
「九尾、仕方ないって」
『巽君、ありがとう』
先に進んでいた少年は振り向いて、言う。
「早く来いよ」
「わかってるよ龍弥」
***
五十嵐千絵の墓前に立つ龍弥と巽、宙に浮くミニマム九尾。龍弥と巽は墓前に手をあわす。
九尾が墓ををかぎまわる。
『ふん、ふんふん。わかったよ。行こう』
九尾が歩き出し、それに二人が続く。
***
古いアパートの一室で男が寝ている。一人暮らしでものぐさなのか部屋の中は散らかり放題。ごみ屋敷と言っても過言では無い。
コンコンコン
部屋のドアが叩かれる。男は起きない。
ドンドンドン
ドアを叩く音が強くなる。男の体がびくっと反応するがまだ起きない。
「安藤昌也さんいないんですか!?」
声がかかるが、男は全く起きない。
静かになる。外の人物は立ち去ったのだろうか。
カチャカチャ、カチャリ
鍵が開き、二人の少年が入ってくる。男はまだ起きない。
少年のうちの一人が男の腹を蹴飛ばす。
ぼすっ
「!?えほッえほッ」
ようやく男が起き、セキをした後、悪態をつく。
「お前ら一体なんだ!?どこから入ってきたんだ!?ああ!?それとよう。いきなり腹に蹴り入れるとは・・・」
少年の一人がのどもとに刀をつきつけると男は黙り込む。
「安藤昌也。あなた、五十嵐千絵を殺しましたね?」
刀を突きつけた少年は男に問いかける。
「ふん、確かに俺は安藤だが、殺しなんかやっちゃいねぇよ」
「嘘を言うと為にならねぇぜ?今の状況わかってるだろ?」
もう一人の眼鏡をかけた少年が嫌味ったらしく、問いかける。
「お前らこそ、分かってねぇな。誰か!助けてくれ!」
安藤の叫びに反して、誰も来ることは無かった。
「何でだ?何で誰も来ない!?」
安藤は狼狽し、パニックに陥る。
「安藤さん、正直に話してくれれば、僕らも悪いようにはしませんよ」
「分かった。話すよ!確かに女を一人殺した。地下鉄のホームから突き落としてな。ようし、話したぞ!だから助けてくれ!」
刀が引かれほっとする安藤。
「どうして、殺したんですか?」
刀を持った少年が安藤に問う。
「金のためさ。依頼が来て、それを俺が遂行したまでだ」
「その依頼主は?」
「見ず知らずの男さ。そういえば、悪霊の研究がどうのと言ってたが・・・、まあよくわからねぇよ」
「巽?」
「ああ、嘘はついていない」
刀を持った少年は笑顔になり、安藤に話しかける。
「すいませんね。それじゃあ、お邪魔しました。」
「ちゃんと自首しろよ」
眼鏡の少年にそう言われると、なぜか安藤は素直に従い、電話に手をかけ110番通報をした。それを確認すると二人の少年は部屋から出て行った。
***
「あれでよかったのか?」
巽は龍弥に問いかける。昨日の事を考えれば当然のことだった。
「ああ。昨日は、頭に血が上ってたし、それに、人に人を裁くことなんか出来ないからね」
「ずいぶんと哲学的な考え方だな」
巽は苦笑する。
「そうだな」
龍弥も苦笑する。
「どうする?依頼主も探すか?」
巽は少し疲れた表情で言った。
「ああ。でも、霊子のにおいが無かったから、地道にいくしかないな。それにしても、悪霊の研究者か・・・」
何か引っかかりを感じながら龍弥たちは家路に着いた。
作:今回龍弥が転映を使わなかったのは、能力の使いすぎによるものです。なお、ピッキングは犯罪ですのでくれぐれもしないでください。
龍弥:誰もそんな事せんわ!
ズバシーン!
作:ぐはっ、って君達は・・・
ドバシーン!
龍弥:失礼しました。では次回もお楽しみに!