幕間その1
龍弥が男と口づけをした夜が明け、朝。
龍弥はいつも通りにトレーニングを終え、朝食をとる。今日は日曜日なので龍弥以外は誰も起きていない。
もむもむ
龍弥が朝食をとっていると、リビングの扉が開く。
「お兄ちゃん、おはよー」
「ああ、おはよう」
「ねぇ、お兄ちゃん?」
理緒菜は冷蔵庫から牛乳を取り出しながら、龍弥に話しかける。
「昨日、デートから帰ってきてからはずっと家にいたんだよね?」
「ああ、それがどうした?」
「なんか、私を昨日助けてくれた人がお兄ちゃんに似てたんだよ」
龍弥は、厳しい顔になった。
「蜘蛛に襲われたってあれか?夢でも見てたんだろ?見つかったとき、寝てたって言うし。それよりも母さんが心配するから、金輪際危ない真似はしないようにな!」
牛乳をコップに入れていた理緒菜はむすっとした顔になる。
「危ない真似なんかしてないよ。それに、あの人は・・・」
「!」
「あの人は、本当の母さんじゃないじゃない」
理緒菜は龍弥に背を向け、牛乳を一気に飲み干す。龍弥と理緒菜の今の母親が起きていたらどうなっていたか。
気まずい雰囲気に耐えられなくなったのか、龍弥が口を開く。
「理緒菜。もう、いいだろう?確かに、今の母さんは、本当の母さんじゃない。けど、俺たちの母さんであることに間違いは無いんだから」
理緒菜はさびしげな声で答える。
「・・・私はお兄ちゃんみたいに割り切れないよ。・・・もうちょっと寝てくる」
理緒菜は自分の部屋に戻っていった。朝の日差しがうっすら差し込む中で、龍弥一人が取り残された。
「今日も晴れかな?」
龍弥は食器を片付けながら、ぽつりと独り言を言った。