2、「ヘンゼル」
俺は妹を愛していた。両親だって好きだった。
「だから、守りたかったのに。」
妹が産まれ、幼い俺は「兄」という役割を強いられた。妹であるグレーテルを守り、どんな事があってもコイツだけは守ってやると父さんから強く言われた。
妹、「グレーテル」は可愛らしく成長し、母さんはそれに「依存」していた。まるで着せ替え人形のようにゴシックでロリータなファッションしか着せなかった。本人も可愛いから良いと言っているが、その姿で外に出る事を考えたりしないのだろうか。俺は周りの目を気にして、グレーテルにはなるべく外に出ない様にさせていた。
グレーテルが小学生になる時、入学式に着る服を家族みんなで選ぶはずだったのに母さんは認めなかった。誰よりも目立つその格好で式に挑んだグレーテル。俺には不安しかなかった。
そして不安は現実になる。グレーテルは学校で浮いた存在になっていた。友達も出来ず、学校がつまらないと言って家に引きこもってしまった。甘い両親はグレーテルを慰めるのに必死で、まるで「ヘンゼル」の事を忘れているかの様だった。
母親は童話が好き。そのおかげで俺には「ヘンゼル」って名前が付けられた。次に産まれてくるのが男だったらどうしたのだろう。運よく「グレーテル」が産まれたから母親はさぞ喜んだだろう。
そして可愛がり「過ぎた」。俺には目もくれないしグレーテルの事は理解しようともしない。父さんも母には甘い。
……俺はヘンゼル。グレーテルを導く存在。どうにかしてこの状況を変えたかった。そんな時にある記事が目に飛び込んだ。「ジグになって思い人と一緒になる」という胡散臭い物だった。「小牙」という筆者の、とても現実的では無い方法に目を疑った。そしてこの記事は一年近く更新されていない。もしかしたら成功して思い人と一緒になってしまったのだろうか。変に信憑性が上がってしまう推理に胸が大きく鼓動する。……いや、冷静に考えて可笑しいだろ。
『思い人の両親を殺して、思い人の目の前で自殺』だなんて。




