個人戦
埒が明かない。我にできる最大の攻撃をし続けているが、魔物は一向に減らない。増えてくばかりだ。今は、民が逃げる時間を稼いでいるが、それもすぐ難しくなるだろう。
すると、リズとレイが見えた。リズは剣、レイは素手で殺し続けているが、焼け石に水だ。
「リズ、レイ大丈夫か?」
「まだまだ行けるよー」
「結構キツイですね。増え続けてます。魔王様の攻撃で一掃できませんか?」
レイは例外だとしてもリズは乱戦にあまり向いていない。
「一応いけるが、集中しなければならない。我の周りだけでいいから魔物を倒してほしい。できるか?」
「やってみます。レイ、そこはいい。魔王様を守ってくれ。」
レイが頷く。
そして、レイが我の周りの魔物を殺していくと、魔王の周りに静寂が現れた。
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リジェと戦う前、いや、何千年ぶりの魔法を使う前の魔王では、魔都中から現れる魔物の対処などできない。
それは、闇を操る力の練度が足りていない訳でも魔都全域を攻撃できる力がない訳でもない。
民がいる、それが原因だった。
だが、今は違う。それは、魔王は何千年ぶりの魔法を一回使った、それだけで自分の間違いに気づいたからだ。
その間違いとは、魔法とは操る力ではないという点だった。魔法は、どこまでいっても想像し、この世ならざる物質、エネルギーを創造する力である。
決して操る力ではない。創造したものを操ることも性質を変換することも元は自分の魔力からできたものであるからなのだ。
だが、魔王は想像ができず、魔法を使える状態ではない。魔王は考えた、ならば自分の魔力を物体に込めておけば操れるのではないかと。
普通、できることではない。創造した物質は自分の魔力が純度100%だからこそ操れるのだ。
だが、魔王には闇を操る力がある。闇を操る力の本領は、魔法の干渉、つまりは魔力の消去にある。
それならば可能になる。物質に存在する魔力、それを消去し、自分の魔力を入れ直す。
これでもバカみたいな量の魔力と制御能力が必要になるが、理論上はできる。だが、それは理論上の話、成功させるには難しい。
しかし、それをするのは魔王なのだった。
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集中する。魔都の建物は魔力でできている。その建物全部に我の魔力を込めた。できるはずだ。
地面が揺れる。すると、建物が動いた。伸びる、伸びる。もう原形すらない。そして、その建物だったものは生き物のように動きながら圧倒的な質量で魔物たちを潰し始めた。
「できたか。」
リズとレイは目の前の光景が信じられないのか目を見開き、動かない。
「セイ、もうすぐ雑魚は片付く、すぐに魔道具と魔都兵に民の救助をさせてくれ。残っている市民は丸いドームの中にいるはずだ。」
「………あっ、はい。わかりました。」
「リズ、レイ、今は大丈夫だが、我の魔力が尽きてしまえばおしまいだ。我は、魔物を転送させてる存在を見つけるから、2人は今ので死んでない強めの魔物を倒しに行ってくれ。」
二人はハッとした後、任せてと言って、すぐに二手に分かれていった。
探しに行くと言ったがホントはもう見つけた。この黒い魔力を抜けた先、そこに魔法を使っているヤツがいる。
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魔王様に転送魔法を使う魔物は任せ、レイと分かれ、小さなドームの中にいる魔都民を助けながら進んでいると見つけてしまった。
「なんだあれ?」
化け物だった。手足が4つずつ縫い付けられ、合計6本ずつ手足があり、ハンマー、剣、弓、槍、鞭、鎌が手に1個ずつ縫い付けられている。そして、切られ、叩かれ、潰された魔物を喰っている。
すると、こっちを向いた。気持ちが悪い。まるで子供が書いたような笑顔、いや、顔とすら呼べるかも怪しい。
そして、魔物と呼べるかも怪しいナニカは自分の手を見ながら「1,2,3,4,5,6」と数えた後、こっちに笑顔を向け「1,2」と数える。というか話せるのか。
すると、次は自分の手に縫い付けられた武器を見て「1,2,3,4,5,6」と数え、私の持っている剣を見て「1」と数える。そして我の顔を見た後、笑った、子供の書いた絵ではなく、自分より下の存在をみるように嘲笑った。
ナニカはこっちを見て「エラクナイ」そう言うと全身が燃え盛った。




