迷宮という魔王を殺せる不思議
時は、聖女が来た頃まで遡る。
聖女の目には、光がなかった。
蘇生魔法で蘇生をし、人間の国の知識を手に入れ、不可侵条約についても問題なくすることができたが、目に光がないことが不思議だった。
だが、条約の締結として握手をした瞬間、その目の理由がわかった。
聖女は、精神干渉系の魔法に掛けられていた。そのまま、我の意識にまで干渉しようとしてきたが、そんな事ができるはずがない。
ここまで魔王を舐め腐っているなど滅ぼしてやろうかとも考えたが、いいことを思いついた。
死に方を探し始めてからは使わなかったが、闇には、魔法に干渉することができる効果がある。
精神干渉系の魔術なら少し工夫すれば、相手の行動や周りを見ることができる全てを見る者と同じような効果を出す事ができるはず。
あまりやったことがないことなのだが、完璧な魔法だったこともあり、ほとんど成功した。
また、遠くから魔法をかけているのかと思ったが、聖女の護衛に視点が繋がったこととその護衛が魔法の反動なのか突然吐き出したことには驚いたが、天罰というか王罰ということで自業自得だ。
全てを見る者とは、比べ物にならないほど負担が大きいのはしょうがないが、我慢をするしかない。
そして、負担に耐え続けてわかったことがあった。
それは、人間の国の目的だ。
元々、人間の国に魔都へ侵攻するメリットは少ない。メリットとというメリットは、領地が増えるくらいだろう。
だが、合点がいった。人間達の目的は、迷宮だ。
もちろん、魔都に迷宮などないし、昔、魔王の情報を流した時も迷宮の情報など渡したことはない。だが、確かに人間の目的は迷宮らしい。
迷宮の宝には、世界の理すら変える力があるからだろう。我が一回攻略した迷宮には、ゴミみたいな宝しかなかったのだが。
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というわけで、我は今、魔都の地下を掘っている。
闇をドリルのような形にして、掘り続け1時間、迷宮は見つからない。
もちろん、魔都の地下に空間など無い。
だが、迷宮というのは、生命の恨み、喜び、悲しみ、さまざまな思いで出来るということが分かっている。
ぼーっとして世界の創生から生きてきたわけではないのだ。
すると、何か空間へつながった。
ドリルの開けた穴からそこに降りると、目の前にあったのは、迷宮だった。
その迷宮は不安定だった。
魔人や魔王すら魔都の地下に迷宮など無いと考えていたのだが、人間は迷宮があることを信じている。
生命の思いでできている迷宮だから起こる不具合だろう。我もこんなものは見たことがなかった。
まぁ、そんなことはいい。
魔王領で迷宮が見つかるなんて珍しいのだ。
わくわくしながら入ってみると、そこは、迷宮だった。
おそらく人の認識でできているからだが、そこは、石の壁でできた少し薄暗い洞窟でコッテコテの迷宮だった。
しかも、出てくる魔物はゴブリンなど何処かで見たことがあるような魔物だけだった。
普通の迷宮なら様々な種類の生命の思いでできているためぐちゃぐちゃな魔物ばかりで、結構気分が萎えるのだが、今は、すごいわくわくする。
魔王の命まで届く魔物がいないのは残念だ。まぁ、ゴブリンに殺される魔王というのも嫌なのだが。
迷宮の階層を降りてもあまり変化という変化を見ることができなかった。
5階ほど階層を降りた頃、上半身は人間、下半身は馬のケンタウロスと言われるような化け物がいた。
ケンタウロスという魔物は存在しないのだが、ここは迷宮なのだ。こんなことも起こる。
ケンタウロス?は強かった。別に死にはしないのだが、少しダメージを与えられた感覚もあった。
強さ的には、四騎士と呼ばれていた騎士の一人と同じぐらいだろう。
珍しいので闇で捕獲したのだが、一向に次の階層の階段が現れないため、ケンタウロス?を殺すと階段が現れた。
ケンタウロス?の死体はいつか蘇生できるかもしれないので持ち帰ることにした。
そこからも、迷宮らしい迷宮だったのだが、異変が起こったのは、4層ぐらい降りた頃だった。
扉があった。迷宮には、不思議な扉などいくつもあるのだが、その扉が放つ迫力は、それとは違ったものだった。
フルアーマーをつけていても、勇者の皮膚であってもわかる。この扉の先には、魔王を殺せる存在がいるのだと。
勇者の心臓が勢いよく波打っている。魔王の頃には、感じなかった感情が流れ出る。
恐ろしさなんかではない期待のような知らない感情だ。
もう魔王を引き留めるものなどなかった。闇による扉の解析などせず、その扉に入った。
その扉の中には、都市があった。
入ってきた扉が消えたのでどこかに転移したのだろうか?
まぁとりあえず、都市を見た。
地中なのだが、都市の端が見えず、明かりも外の世界のように確保されている。
建物に関しても様々な大きさがあり、今の技術では、作れないようなものまである。
ん……?いや、見たことがある。明かりも建物もすべての技術がこの時代より数段進んだものだろう。
だが、この技術のようなものを見たことがある。
すると、バッサバッサと大きな翼を羽ばたかせるような音が聞こえてきた。
上を見ると、見たことがないような大きさで飛んでいる生き物がいた。
その生物は、だんだんと小さくなっていき、人間程の大きさになった。
それは、ドラゴンだった。世界的にも珍しく、生物として、人間や魔人より数段上の能力を持つ怪物だ。
だが、そのドラゴンは、我と同じぐらい生きており、我と同じ死なない身体を持つ友。
回復龍と言われる怪物であった。




