勇者を信じる者
人間の国と契約を結んだのは二年前のことだ。
今の勇者が台頭していた頃、偶然にも勇者を見てしまったからだった。
決して、勝てない相手に立ち向かい、最後には、必ず勝つ主人公のような姿。
そして、それを必然にする。
そんな力を持っていると分かった時、私は、その勇者という存在に魅了され、感じてしまったのだ。
魔王は負けるのだと。
==============
魔都は強い。
魔都大門という完璧な門、そして、魔都には、4つの戦力がある。
いつもは魔王城にいるが、魔王やリズ、人間であるが、レイ、そして、魔都兵である。
魔王やリズは、言わずもがな、レイは、魔王が本気を出しても、数分は殺せないような怪物だ。
魔都兵は、全隊で攻撃すれば、リズやレイでも負けるだろう。
だが、魔王が殺されれば、絶対に魔都は負ける。
たとえ、魔王を殺した怪物と相打ちになったとしても、人間の国には、四騎士がいるのだ。
四騎士全員で魔都を攻められれば、魔王がいない魔都など一日で滅ぼせるだろう。
だから、私は、持っているすべてのコネを用いて、人間の国とコンタクトを取り、人間の国に魔王や魔都の情報を流す。その代わりに、私の命や地位の保証、ミカの安全の保証を契約した。
そこから先は簡単だった。
順調に勇者は育ち、まだ、魔王城へ乗り込むのは、早いと思ったが、勇者なら勝てると信じていた。
リズが勇者が魔王城に行く直前に魔都に来たのには驚いたが、
「魔王城に帰るついでに寄った。」
というのは私にとってちょうどよかった。
それは、魔王城は魔王の力が強すぎるがあまり、通信ができるような精密な魔導具は使えず、使えてもよほど特殊な魔導具しか使えない。
だが、リズが守ってくれるのなら問題なく使えるのだ。
魔王城につくと、魔導具越しからでも魔王の気配が小さくなっていて、もうすぐ死ぬのだろうと理解できた。
そして、リズが魔王の間のドアを開ける。
魔王の間の中央に立つ勇者、傍らに倒れる魔王。
完璧だ。すべてが計画通りにいっている。
勇者なら、リズだとしてもすぐ殺せる。
もうここには用がない。
一応、長い付き合いなのでリズに魔力を渡すが、まず勝てないだろう。
どうにか逃げれれば御の字だ。
逃げれても、リズは魔王に強い執着がある、魔王が死んでいることを整理できれば勝手に死ぬだろう。
人間の国に連絡用魔導具で魔王が死んだことについて送ると返信が来る。
「了解した。数日後、魔都へ四騎士と兵を送る。」
この瞬間、私の計画が完璧に遂行された
数日後、リズが来た。完全にイレギュラーだった。どんなに傷を追っていても、最後に勝つのが勇者だ。リズを殺せないわけがない。
何かが起きている。とりあえず、魔王城に魔導具を送る。
魔王がいなくなった今なら入れるはずだ。予想通り、魔王城にはいることができた。
魔王の間に入ると、魔王の死体が入っている棺桶だけがあった。リズが作ったのだろう。
だが、勇者の死体はない。
ならば、逃げてきたのだろう。魔王と戦った後なのだ、逃がすのも仕方がない。
そして、リズが来ても問題はない。
リズがいたとしても魔王の力がない魔都など四騎士がいれば絶対に勝てる。
しょうがない、長い付き合いだ、最後に顔を見てもいいだろう。
リズに会いに行く。すると、先ほどまでいなかった人影が見える。
それは、寝ているのだろうか倒れているレイとフルアーマーを着ている魔人?がいた。
フルアーマーはリズと話をしている。だが、私の記憶では、あんなフルアーマーを着ている魔人など見たことがない。
直接聞くしかないか。
「悪いな、リズ。待たせてしまったようだ。」
完璧と思っていた自分の計画にイレギュラーが発生したことが自分が思っているよりも大きかったのか、少し声が震える。
「おや?そちらのフルアーマーの方は?」相手が誰なのか探ってみる。
だが、もしかしたら、すでにわかっていたのかもしれない。
声が震えるのも、ショックなどではなく、恐怖していたのかもしれない。
リズは言う。
「魔王様だ。」
この瞬間、足腰とともにすべての計画が崩れてしまったのである。
セイは、ようやく気づいたのだった。敵に回したのは、怪物を超越した怪物なのだと。
====================
同時刻、人間の国の兵が魔都の外にいた。
[魔王の死体が発見されたようです。]
魔導具で連絡が送られてきた。
[勇者はどうした。]
勇者、魔王を倒した張本人であり、魔王領の征服の立役者である。
[いません。]とまた連絡が送られてくる。
「何をやっているのだ。勇者は」
魔王を倒したその力があれば、魔都攻略も容易になっただろう。
「だが、いい。こっちには、四騎士がいる。」
四騎士は何をするでもなく、ただ立っている。
「ついてこい。」
何も言わず、ついてくる。その従順さが怖いくらいだ。すると、線が見える。
「総帥、ここからは危険です。魔都大門が発生します。」
下級兵だろうか。ちょうどいい。
「ありがとう、だが大丈夫だ。で君、下級兵だろう。頼み事なんだが、三人だけ下級兵を連れてきてくれないか?」
総帥という立場の人間から頼まれ事をしたのがとても嬉しいのだろう。すぐ、行ってしまった。
数分後、三人の下級兵を連れて戻ってきた。
「では何をすればいいのでしょうか。」
一人の下級兵が目をキラキラとさせながら言う。
「やれ。」
すると、四騎士は、下級兵達の後ろに回り、兵を線の内側へ押す。三人の下級兵が消え、一人残った。
それを見た四騎士は間髪入れず、魔都へ向かう。
魔都大門は、魔都を攻略するための一番の難所になると思われていたが、内通者の情報によると三つ以上同時に発生しないこと、魔都へたどり着けば、魔都大門は発生しなくなるという欠点があるらしい。
だが、中にいる者が死ねば、魔都大門は再び現れる。
そんな短い間で魔都へたどり着けるのは、四騎士だけだ。
そして、四騎士なら絶対に魔都を攻略できるはずだ。
そう心の中で応援しながら、線から出ようとする残った用済みの下級兵の首を切った。




