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魔王は死ぬ

魔王は死ぬ。


勇者に選ばれ、仲間を探し、死闘を越え、力をつけ、今、魔王の胸に刃を突き立てている。


どんな怪物もこの聖剣を突き立て殺してきた。 


必ず死ぬのだ。どんな怪物でも、この聖剣突き立てれば、死ぬのだ。


世界を滅ぼす力を持つ怪物であり、怪物の中の怪物である魔王もこれで死ぬはずなのだ。


後ろで倒れている魔王にやられてしまった仲間たちのことを思いながら涙ながらに勇者は乱暴に言う。


「早く、早く死ねええええええ。」


普通ならこれから死ぬ者にかける言葉ではない。


だが、ここにいるのは文明の始まりから世界に恐怖陥れてきた化け物であるのだ。そんな言葉をかけるのも必然である。


だが、「ひっ」


そんな恐れのような、憐れみのような声が聞こえた。


それは勇者の出す声ではなく、勇者が出していい声でもなかった。


しかし、声が発せられたのは、勇者の口の中からだった。


自分の声だと気づき、驚くが、そんな場合ではなかった。 


なぜなら、その瞬間、魔王が動いたからである。否、   正確には、魔王の操る闇そのもののような物質が動いただけだった。


その闇は、すぐに勇者の周りを囲む。少し戸惑ったが、すぐに力を込め直す。だが、手が震え、力は少ししか入らない。


しかし、関係ないのだ。相打ちでもいい、無理矢理、魔王の胸の奥深くまで聖剣を突き立てる。


早く、もっと早く殺そうとする。


だが、その力もあまりに弱々しい、そして、その間にも、闇は、勇者の穴という穴から体の中に入っていった。


そして、魔王は死んだ。


生命に必要な活動も行われておらず、あと何年も経てば、体も消えていくだろう。


だが、精神は、なくなっていない。


勇者の身体ながら勇者と魔王の力を持ち、世界を滅ぼそうとすると言われる意思を持つ。


怪物の中の怪物の中の怪物の中の怪物の中の怪物は

静かに言った。


「死にたい」と。

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