第9話 鍛冶屋大乱闘!事故から戦闘へ
トーグラムが凛を鋭く見つめながら言った。
「…あの変な人間はここに近づけたくないのだが――」
ガキッ!
鍛冶屋の床、散乱する工具の上で凛は大きなボルトにつまずき、体がぐらりと揺れる。
「うわっ――!!」
レオモードもトーグラムも思わず声をあげた。
アーデリアは振り返った、その瞬間凛がバランスを崩す。
ドサッ!
凛はそのままアーデリアの体にぶつかってしまった。
両手で顔を避けようと必死に支える凛。しかし――
無情にも、手はとんでもない場所に着地してしまった。
プルプル…
沈黙が三秒ほど続く。
アーデリアの目が見開かれ、顔が紅潮する。
羞恥ではない――怒りの炎が、まるで地獄から立ち上るかのように燃え始めた。
赤い炎がアーデリアの周囲にちらつき、髪が逆立つ。
「…貴様…触ったな…」
凛は顔が真っ青になる。
「ち、違う!私は――落ちただけだ!!」
「ムニュ――」
「言うんじゃない!!」
バキッ!!
炎を纏ったアーデリアのオーラはまるで爆発するかの如く。
赤髪が逆立ち、周囲の空気が焼け焦げる匂いを帯びた。
「死ね、この変態!!」
アーデリアは細剣を一閃で引き抜く。
シャキィィンッ!!
レオモードは素早く二人の間に飛び込み、凛を守った。
「アーデリア、待て!これは事故だ!」
「そんな手に偶然があるか!!」
凛は必死に叫ぶ。
「動いてもないのに、重力のせいだ!グラヴィティィィ!!」
トーグラムは後ろでため息をつき、巨大なハンマーを掲げる。
「まあ…これで死ぬなら、俺のせいじゃない。」
アーデリアが剣を振るう。
レオモードは最初の斬撃を受け止め、火花が飛び散る。
「やめろ、アーデリア!」
「守るのか?あの変態を!?」
「触っただろうが――!!」
「言うな!!!俺は顔で散々侮辱されている!新たな事件は勘弁だ!!」
レオモードは笑いをこらえる。
「篤原、どうしてお前にはいつも問題が降りかかるんだ…」
凛は天井を見上げ、肩を落とす。
「僕にもわからない…この世界では顔が災厄を引き寄せるらしい…」
アーデリアはただため息をついた。
その間、トーグラムはペンチでレオモードの剣を慎重に調べていた。
「ふむ…内部の亀裂は予想以上だ。高品質の金属芯が必要だ――」
ドゴォォォン!!
突然、鍛冶屋の壁全体が大きなハンマーで叩かれたように揺れる。
凛は思わず工具箱を落としそうになる。
アーデリアは剣を地面に突き刺し、構える。
レオモードも反射的に身構える。
ドゥォォン!ドゥォォン!ドゥォォン!
トーグラムは目を細め、懐かしい音を聞き分ける。
「…あの音は知っている。」
レオモードが振り向く。
「知ってるのか?」
トーグラムは深く息を吐く。
「ええ。あの音は愚か者の足音だ。」
バァァァァン!!
鍛冶屋の扉が蹴り破られ、粉塵が舞う。
光が煙の合間から差し込む。
鎧に身を包み、右手に黒いガントレットを装着した大男――
グレッグ――
トーグラムのかつての生徒、今や危険な剣術士。
傷だらけの顔に冷酷な笑みを浮かべる。
「ふはは…やっと見つけたぞ、トーグラム!」
トーグラムはハンマーを構え直す。
「グレッグ…何年経った?まだ生きていたとは残念だ。」
凛は目を丸くする。
「え、知ってるの!?なんで、まるで追加章の悪役みたいな言い方してるの!?」
アーデリアは一歩前に出て、グレッグの鎧を睨む。
「黒い鎧…腐敗している。先週、街の守備隊が追っていた人間ね。」
グレッグは高笑いする。
「トーグラム…俺のものになるべき技『リーバーフォージ』を奪いに来たのだ。」
トーグラムは歯ぎしりする。
「まだお前は『リーバーフォージ』を欲しがるのか。欲深く、我慢できなかったから、俺は教えなかったのだぞ。」
レオモードは身を引き締める。
「リーバーフォージ…?伝説の技か。」
グレッグは右手を上げ、ガントレットが闇のマナで光る。
「お前に拒まれたせいで、全てを失った。今度は復讐だ。そして、この場所もろとも生徒共を焼き払う!」
凛は自分を指さす。
「な、なんで僕まで生徒扱い!?まだ“マナの開放”も学んでないのに!!」
アーデリアは剣を握る。
「この場にいる者は誰一人、触れさせない。」
グレッグはアーデリア、凛、レオモードを順に睨む。
「ほう…若き剣士、王国の騎士…そして、顔が悪い奴。」
「…なんで僕はいつも最後なの!?!」
グレッグが右手を振り上げ――
ドゴォォォン!!
闇のマナの爆発が鍛冶屋を襲い、机や鉄床を粉々にする。
レオモードは凛を押しのけ、安全な距離に避ける。
「後ろに下がれ、範原!」
凛は咳き込み、煙の中で泣きそうになる。
「いや、でも、どうして僕だけ、顔で狙われるんだよ!」
グレッグはレオモードを睨む。
「本物の剣士なら…まずお前の力を試す!」
嵐のように攻撃が襲う。
クラァァッシュ!!
レオモードは剣を構え防ぐ――
だが衝撃で後ろに飛ばされる。
凛は叫ぶ。
「レオモード――!」
その瞬間、ホログラムが凛の目の前に浮かぶ。
ピンポン!
[警告:主人公が危険に晒されています。緊急クエスト発動可能]
[スキル「ミニ・ファイアボール LV.1」を使用しますか?]
—消費:マナ2
範原は体が震える。
「また小さいスキルか…」
アーデリアも横から攻撃を仕掛けるが、黒い鎧にほとんど弾かれる。
トーグラムは巨大ハンマーで一撃、岩を割る力で襲う。
グレッグは一瞬止まり、薄笑いを浮かべる。
「相変わらず重いハンマーだな、師匠!」
凛は三人の苦戦を見て、拳を握る。
「本物のクソ作家でも、この世界の主人公だ!黙ってはいられない!」
小さなスキルを選択する。
「ミニ・ファイアボール LV.1、発動!!」
ウィッシュ!
掌に小さな火球が現れる。
グレッグが振り返る。
「…何だこれ?誕生日の花火か?」
凛は震えながら投げる。
プルプル…「小さいの忘れてた…」
それでも火球は顔に直撃。
プルプルッ!
水鉄砲のような炎が顔に当たり、グレッグは手で顔を払う。
「…本当に痛めるつもりか?」
凛は涙目で叫ぶ。
「少なくとも、挑戦はした!!」
しかし――
何かが起こる。
グレッグが顔の焦げた部分に触れる。
「…この炎…普通じゃない」
トーグラムは鋭く見る。
「これは…!鎧の呪いを貫通したぞ!」
レオモードも気づく。
「篤原…スキルでグレッグの鎧を壊せる!」
凛は凍りつく。
「え、マジで?!小さい火球で!?」
アーデリアは半分驚き、半分憤慨。
「効果あるなら、なんでLV.1がこんなに小さいのよ!?」
グレッグは怒鳴る。
「なるほど…お前たち三人まとめて相手か。なら、全部潰す!!」
全力で襲いかかるグレッグ――
――つづく




