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小説家の俺が、自分の書いた世界に転生したら、主人公の運命が詰んでいた件 (Ink to steel :Rebirth of the novelist)  作者: Mas amba


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第7話:知らないモンスターが出てきた件

 紫色の光は、消えなかった。

 それどころか――さらに、大きくなっていく。

 空中に走る次元の亀裂が、まるで巨大な心臓のように脈打っている。

 ドクン……ドクン……

 その異様な鼓動に、レオモードは即座に剣を構え、戦闘姿勢に入った。

 凛は一歩、後ずさる。

 ごくり、と唾を飲み込む音がやけに大きく感じられた。

「……これは……プロットに、なかった……」

 呟きは、ほとんど風に溶けるほど小さい。

 ――いや、当然だ。

 こんなの、俺は書いていない。

 バキ……バキ……バギィィィ――ッ!

 空間が裂ける音とともに、紫色のエネルギーが枝のように飛び散り、空気そのものを引き裂く。

 そして、その裂け目の奥から――

 現れたのは、ディアウルフの三倍はあろうかという巨大な影だった。

 黒熊に似た体躯。

 しかし頭部には歪んだ角。

 皮膚は黒いマグマのようにひび割れ、内部から紫の光が漏れ出している。

 そして――

 瞳は、瞳孔のない深紅。

 高位歪曲個体の証。

 レオモードが、息を呑んだ。

「……見たことがない。

 こんな魔物は……」

 凛の顔から、血の気が引く。

 ――そりゃそうだ。

 俺だって見たことない。

 だって、書いてないんだから!

 世界、勝手にオート生成してないか!?

 その瞬間。

 凛の目の前に、青いホログラムが展開された。

【警告】

 B級モンスター

 《歪曲個体・ラームモルグ・ベア》を確認しました

 推定レベル:測定不能

 状態:不安定

「……B級!?」

 凛は思わず声を上げる。

「C級と戦っただけで、死にかけたんだぞ……!

 B級とか、無理だろ……!」

 ラームモルグ・ベアが、低く重い咆哮を放つ。

「グルゥゥゥオオオオオ――ッ!!」

 周囲の空気が震え、地面の落ち葉が舞い上がる。

 レオモードは剣を強く握り直した。

「覚悟しろ。

 俺から、離れるな!」

「離れるなって……!

 あれ、俺を前菜にする気満々だろ!!」

 次の瞬間。

 ドンッ!!

 巨体からは想像できない速度で、魔物が跳躍した。

 ――速い。

 歪曲によって、常識外の機動力を得ている。

 レオモードが即座に動き、金属のように硬い爪を剣で受け止める。

 ガギィィンッ!!

 衝撃が走り、地面が揺れる。

 レオモードの体が、数歩後退した。

 凛は目を見開く。

「……押された!?

 レオモードが!?」

 レオモードは歯を食いしばり、腕の震えを抑えながら呟く。

「……重い……」

 ラームモルグ・ベアは、間髪入れずに再び襲いかかる。

 さらに速く。

 レオモードは爪をいなし、反撃に転じるが――

 キィンッ!!

 剣撃は、歪曲によって硬化した皮膚に弾かれた。

「うそだろ……剣、弾かれた!?」

 レオモードが低く唸る。

「篤原! 距離を取れ!

 近づくな――」

 その言葉が終わる前に。

 魔物の視線が、凛を捉えた。

 ドォンッ!!

 一跳びで、凛の目前に着地する。

 凛は尻もちをついた。

「な、なんで俺!?

 俺、食っても美味しくないから!!」

「動け!!」

 レオモードの叫び。

 凛は震える手を前に突き出す。

「ファイアボール!

 ファイアボール!

 ファイアボールォォ!!」

 小さな火球が生まれる。

 ラームモルグ・ベアはそれを一瞥し――

 怒りに満ちた唸り声を上げた。

「……なんで毎回、

 俺の火球、挑発扱いなんだよ!!」

 爪が振り下ろされる、その瞬間――

 シュンッ!!

 レオモードが凛の前に割り込み、剣で爪を受け止めた。

 血が、レオモードの手から滴り落ちる。

「ぐっ……!!

 篤原! 隙を見ろ!

 俺が、開ける!」

「隙!?

 見えないんだけど!?

 動きが速すぎる!!」

 次の一撃。

 ドゴォンッ!!

 レオモードの体が、木へと叩きつけられた。

「レオモード!!」

 それでも、彼は立ち上がる。

「……まだ……戦える……」

 だが、明らかに限界は近い。

 その時。

 キィン――

 凛の視界いっぱいに、巨大な青いホログラムが出現した。

【緊急スキル使用可能】

 《デスペレート・カタリスト》Lv.1

 効果:

 ・使用者のマナを3秒間倍増

 ・最も近い味方に軽度の能力強化を付与

 消費:コイン1枚

 現在の所持コイン:1

 使用しますか?

【YES】 / 【NO】

 凛は、固まった。

「……使ったら……

 もう、コインはゼロ……」

 視線の先。

 今まさに、致命打を受けかねないレオモード。

 凛は、拳を握り締める。

 ――主人公が死んだら、

 コインなんて意味ないだろ!!

「……YES!!」

 震える指で、【YES】を押す。

 《デスペレート・カタリスト》発動

 凛の体内で、マナが爆発的に膨れ上がる。

 ゴォォォッ!!

 レオモードが目を見開く。

「……篤原……?」

 凛は、魔物を指差し、叫んだ。

「レオモードォォ!!

 今だ!!」

 淡い光が、レオモードの体を包む。

 力と速度が、一段階引き上げられる。

 ドンッ!!

 地面を踏み砕き、レオモードが跳躍。

 剣を振り下ろす。

 ズバァァァァンッ!!

 ついに、硬化した皮膚を切り裂いた。

 ラームモルグ・ベアは悲鳴を上げ、体勢を崩す。

 レオモードは、そのまま畳みかけ――

 巨体は、地に倒れ伏した。

 …………

 静寂。

 二人は、荒い息を吐く。

 凛は、膝から崩れ落ちそうになる。

 マナは、完全に空。

 レオモードは血に塗れながら、近づいてきた。

「……今のは……何だ?」

 凛は、弱々しく笑う。

「……コインが……

 すごい勢いで消えるやつ……」

 レオモードは、じっと凛を見る。

「……君は……本当に……謎だ」

 凛は肩をすくめる。

「俺はただの、

 迷い込んだイケメンだって言ったら?」

 レオモードは、顔を見た。

「……イケメン?

 どこがだ」

「レオモード・サハラァ!!

 そこは優しくしろよ!!」

 レオモードは、思わず笑った。

 やがて、魔物の体は青い粒子となって消えていく。

 その直後。

 ホログラムが再び現れた。

【クエスト完了】

「西の森に発生した魔物異常の鎮静(Lv.1)」

 報酬:

 ・マナポイント+30

 ・経験値+50

 ・スキルポイント+1

 ・アイテム:《マイナー・マナスレッド》

(マナ経路の補強に使用可能)

 凛は、息を呑む。

「……これ……

 レオモードのクエストに……」

 視線を向ける。

 岩に背を預け、呼吸を整えるレオモード。

 その手にある剣――

 ひび割れていた。

 根元から先端まで、深く。

 レオモードは、静かに呟く。

「……また、だ。

 三年前の戦争以来……

 俺のマナ経路は不安定で……

 この剣に、無理をさせている」

 凛は、軽く息を吐いた。

「……じゃあ、買い替えれば?

 その剣、もう限界だろ」

 即座に、首を振る。

「できない。

 これは……大切な人からの、最後の贈り物だ」

 凛は、知っている。

 この剣が――

 レオモードの運命を縛る象徴だということを。

「……なら、直すんだな?」

「明日、ヴァルデンの街へ行く。

 古い鍛冶師がいる。

 望みは薄いが……」

 凛は、手の中の《マイナー・マナスレッド》を握った。

 ――ここだ。

 これが、最初の介入。

 レオモードは立ち上がり、凛を見る。

「……ありがとう。

 君がいなければ、俺は……」

 凛は、わざと軽く言った。

「気にするな。

 最低最悪な俺の役目は、

 主人公の人生をややこしくすることだから」

 レオモードは、数秒沈黙し――

 小さく笑った。

「……本当に、変わった人だ」

「褒め言葉として受け取っとく」

 夕暮れの森を、二人は歩き出す。

 明日から――

 次のクエストが始まる。


――つづく

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