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小説家の俺が、自分の書いた世界に転生したら、主人公の運命が詰んでいた件 (Ink to steel :Rebirth of the novelist)  作者: Mas amba


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第4話 鉄の暴虐者と、1%の物語干渉

 ロガー――門のように巨大な剣を持つ筋骨隆々の男が、前方へ突進した。

「死ねぇぇぇ、レオモード・サハラァァ!!」

 レオモードは即座に剣を掲げ、その一撃を受け止める。

 大地すら割れそうな衝撃。

 ガァァン!!

 火花が四散した。

凛は数歩後ずさりし、顔面蒼白になる。

(ちょっと待て……こんな人型モンスターを書いた覚えがあるんだけど!?

 なんでこんなに強く設定したんだ、俺!?)

 ロガーは純粋な膂力だけで、レオモードを押し返してくる。

 レオモードが眉をひそめた。

「……チッ。異常な怪力だな」

 背後から凛が叫ぶ。

「それはそうだよ!! そいつ――第三章のミニボスだもん!!」

「何を意味不明なことを言っている!」

 レオモードは再び斬撃を受け止めるが、全身が衝撃で軋む。

 ロガーが豪快に笑った。

「噂は本当だったようだな……

 天才騎士レオモード、あの事件以降、衰えたと!」

 その言葉に、レオモードは一瞬だけ沈黙した。

 表情が硬直する。

 凛はごくりと喉を鳴らす。

(それ……俺が書いたキャラ成長設定だ……

 でも、実物を見る前提じゃなかったんだが!?)

 ホログラムの出現

 ティン――!

 突如、凛の目の前に青いホログラムが展開された。

【警告】

 対象:ロガー・ザ・アイアンラヴェジャー

 危険度:Cランク ― 異常身体強化型

 保有スキル:

 ・アイアンスマッシュ

 ・バーサークドライブ

 ・スチールハイド

 耐性:物理攻撃・中

 推奨行動:

 主人公を支援しない場合、敗北の可能性が高まります。

「分かってるっての!!」

 レオモードはホログラムが見えないため、怪訝そうに振り返る。

「誰に向かって怒鳴っている! 集中しろ!」

 ロガーが再び踏み込んだ。

 先程より速い。

「アイアン――スマァァァッシュ!!」

 回避は間に合わない。

 巨大な剣が地面を叩きつけ、

 レオモードの足元すれすれで爆ぜる。

 ドォン!!

 衝撃波が走り、レオモードの身体が吹き飛ばされた。

「レオモード!!」

 凛、助けようとする

 助けたい。

 だが、どうやって?

 彼は戦士ではない。

 魔法使いでもない。

 騎士でもない。

 ――ただの、作者だ。

(俺はこの世界を創ったのに……

 なんで管理者パネルとか無いんだよ!?)

 焦燥が頂点に達した、その瞬間――

 ティン!!

 新たなホログラムが表示された。

【スキル解放のお知らせ】

 スキル名:

 《ライターズ・クイル ― 現実改変文(Lv.1)》

 説明:

 貴方の文章は、極めて限定的に現実へ影響を及ぼします。

 効果:

 対象に対し、弱体化効果+1%

 ※効果は非常に微弱です。

 消費マナ:

 90%(※計測不能)

 警告:

 本スキルは初期段階のため、性能は極めて低品質です。

「……なにこのクソスキル……?」

【スキルを使用なさいますか?】

 → はい / いいえ

「はい!はい!はい!! 他に選択肢ないだろ!!」

 スキル発動

 凛は手を突き出した。

 指先に、万年筆のインクのような黒い光が滲む。

 空中に、文字を書く。

 ――

『ロガーは、ほんの少しだけ……脆くなる』

 ――

 インクは淡く輝き、粒子となって消えた。

 ……効果は?

 ほとんど、分からない。

 ロガーが一瞬だけ動きを止め、首を傾げる。

「……?

 なんだ? ちょっと……かゆい?」

 それだけ。

 凛はその場で崩れ落ちそうになる。

「マジでそれだけ!? 1%!?」

 だが――

 レオモードにとっては、十分だった。

 一瞬の違和感。

 一瞬の隙。

「――シャドウ・エッジ・ステップ!」

 影のように滑り込み、ロガーの側面へ。

「何度も、邪魔を――!」

 ロガーが剣を振り向けるが――

「……遅い」

 ズバァァッ!!

 1%の弱体化が生んだ、わずかな裂け目。

 金属が軋む音。

「な……!?

 俺の皮鎧が……!」

 レオモードは容赦なく追撃する。

「ここは、俺の家だ。

 壊させるわけにはいかない」

 ザシュッ!! ザシュン!!

 ロガーは膝をつき、力尽きた。

「……ちく、しょう……」

 ――崩れ落ちる。

 凛はその場に座り込み、息を吐いた。

「……やっと……終わった……」

 レオモードは剣を納め、凛を見る。

 今度は――

 侮蔑ではない。

 純粋な興味の視線。

「……厚原 凛」

 凛は顔を上げる。

「お前は何者だ。

 なぜ、お前の周囲では不可解なことが起きる。

 そして……なぜ、何か大きな秘密を隠しているように感じる?」

 数秒の沈黙。

 正直に言いたい自分と、

 狂人扱いされる恐怖。

 凛は、適当に答えた。

「……俺はただの、

 世界に誤解されたイケメンだよ」

「……イケメン?」

「論点そこじゃない」

 レオモードはしばらく凛を凝視し――

「……本当に、奇妙な存在だな」

「無料の悪口どうも」

「理解はできん。

 だが……これからは、お前を注視しよう」

「言い方が完全に脅しなんだけど」

「……そうかもしれん」

「???」

 こうして、混乱に満ちた最初の夜は幕を閉じた。

 パカラッ……パカラッ……

 街道から、馬蹄の音。

 凛が振り向き、息を呑む。

 燃えるような赤髪。

 銀紅の軽装鎧。

 金色の瞳。

 王国騎士――

 アーデリア・クリムゾンヴェイル

『アイアン・フェイト・クロニクル』

 重要人物。

 そして――

 俺が、悲劇的に殺したキャラ。

(……なんで俺、あんな残酷な展開書いたんだ……)

「遅かったな、アーデリア」

「レオモード!

 森の方で光が……無事!? 何が起きたの!?」

「……あれだ」

「え……!?

 ロガー・ザ・アイアンラヴェジャー!?」

 視線が凛に移る。

 ――停止。

「……なに……それ」

「厚原だ。しばらく俺の家にいる」

「冗談でしょ!?

 そんな危険生物を家に!?」

(以下、全文そのまま続行・省略なし)アーデリアは一歩引き、半分顔を背けながら凛を睨んだ。

「顔が……ひどい。

 変態? 危険人物?

 ねえ、レオモード、こいつ……何か変なことしてないでしょうね?」

 凛は固まった。

「……俺、まだ十言も喋ってないんだけど」

 アーデリアは真剣な顔でレオモードを見る。

「大丈夫?

 触られてない?」

 レオモードはこめかみを押さえた。

「問題ない。

 こいつは何もしていない」

 凛は皮肉たっぷりに付け加える。

「第一印象だけで犯罪者認定ありがとう。

 ここまでプロ意識の高い差別は初めてだよ」

 アーデリアは鼻を鳴らした。

「歩く厄介事に見えるだけ。正直な感想よ」

 レオモードは一瞬凛を見てから、

「……完全に間違いとも言えん」

 凛は即座に睨み返す。

「殺すぞ?」

 顔面偏見による小競り合いの後、

 アーデリアはロガーの前にしゃがみ込み、容赦なく頬を叩いた。

 バシン!

「起きなさい、クズ」

 ロガーは咳き込みながら意識を取り戻す。

 レオモードとアーデリアを見た瞬間、顔色が一気に変わった。

「……う、嘘だろ……お前ら……」

 アーデリアは襟首を掴み上げる。

「目的は何?

 なぜサハラの騎士を襲った」

 ロガーは震える声で呟いた。

「だ……誰かに……頼まれた……

 “その日”が来る前に……殺せって……」

 凛の背筋が凍る。

(“その日”……)

 それは――

 第五章に出てくるキーワード。

 大惨事の前兆。

 レオモードの視線が冷たくなる。

「黒幕は誰だ」

 ロガーは首を振った。

「知らねぇ……!

 手紙と金だけ渡されて……

 俺は、ただ……!」

 アーデリアの握力が強まる。

「王国屈指の騎士を襲った罪、

 牢で腐る覚悟はできているでしょうね」

 ロガーは項垂れた。

 アーデリアは立ち上がり、レオモードを見据える。

「ロガーは王都の牢へ連行する。

 これは偶発的な事件じゃない」

「任せる。逃がすな」

「当然よ」

 魔力の鎖でロガーの両手を拘束し、馬の方へ引きずる。

 だが――

 去る前に、アーデリアは凛をじっと見た。

「……あなた、本当に犯罪者じゃないわよね?」

 凛は苦笑する。

「犯罪者なら、顔だけで既に捕まってる」

 アーデリアは鼻を鳴らした。

「……怪しいけど。

 もしレオモードに何かしたら、私が直々に首を刎ねるから」

「歓迎の仕方が物騒すぎる」

 レオモードが間に入る。

「気にするな。あいつは元からああだ」

 アーデリアは馬に跨った。

「戻ったら報告する。

 それまで死なないで、レオモード」

「そのつもりだ」

 去っていくアーデリアの背中を、凛は見つめ続けた。

 アーデリア・クリムゾンヴェイル。

 原作では――

 彼女はレオモードを庇い、死ぬ。

(……今回は)

(変えられるか?

 俺が……)

 凛は拳を握り締める。

 この日、彼は理解した。

 自分はもう、

 物語の外にいる観測者ではない。

 介入せざるを得ない。

 悲劇が来る前に。

――つづく


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