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小説家の俺が、自分の書いた世界に転生したら、主人公の運命が詰んでいた件 (Ink to steel :Rebirth of the novelist)  作者: Mas amba


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22/22

第22話 命懸けでも報酬は欲しい

 霧が渦を巻く。

 冷たい風が、肌を刺すように吹き抜けた。

 ギネヴィアは、待たなかった。

 次の瞬間――

 彼女の姿は消え、影と同化するように森の中を疾走する。

 シュッ――ザシュッ!

 黒い刀身が、リンの耳元すれすれを切り裂いた。

「っ――!」

 凛は反射的に後方へ跳び退く。

「おい……! 俺、もう魔力ほぼ空なんだけど!? 少しは手加減しろよ!」

 ギネヴィアは、薄く笑った。

 それは――

 痛みと、絶望が滲んだ笑い。

「遅いなら……死ねばいい」

 ドンッ!

 彼女は木の幹を蹴り、空中で回転しながら上段から斬り下ろす。

 レオモードが剣を掲げ、正面から受け止めた。

 ガァァンッ!!

 衝撃が地面を震わせ、レオモードは二歩分、後退する。

「くっ……!」

 間髪入れず、アーデリアが左側から踏み込む。

「――テンペスト・ピアース!」

 しかしギネヴィアは、手首をわずかに返しただけでそれを逸らした。

 ――腐敗した身体とは思えないほど、正確で、鋭い。

 その一瞬の隙を、凛は見逃さなかった。

 身体が震える。

 だが、残った力をすべて叩き込む。

【スキル起動】

【――手動オーバーヒート・モード】

【残存魔力量:4%】

 凛は、炎の魔力を凝縮する。

 まるで――

 野球のバットを握るかのように。

「――マグマ・スタイル」

「スマッシャー・バーストッ!!」

 炎は微細な火花を散らしながら燃え上がる。

 それは、純粋な魔力というより――

 肉体と残滓エネルギーの爆発だった。

 凛は、横薙ぎに振り抜く。

 ドゴォォンッ!!

 地面が爆ぜ、衝撃波が走る。

 ギネヴィアの身体は吹き飛ばされ、三本の木をなぎ倒しながら転がった。

 アーデリアが目を見開く。

「……あんな状態で、まだそんな威力を……!?」

 レオモードは、息を整えながら言った。

「魔力じゃない……身体の予備エネルギーを無理やり爆発させている」

「……自己犠牲に近い」

 凛は咳き込む。

 口元から、血が一筋、零れ落ちた。

「へっ……大丈夫」

「ただ……好きなキャラの戦闘スタイル、連打してるだけだ」

 ズズ……と、布を引きずる音。

 ギネヴィアが、立ち上がる。

 ゆっくりと。

 皮膚の亀裂は、さらに広がり――

 だが、仮面の奥の瞳は。

 憎悪と、痛みで満ちていた。

「……あんたたち」

「本当に……ムカつく」

 次の瞬間――

 彼女は再び消えた。

 さっきよりも、明らかに速い。

 ドンッ! ドンッ! ドンッ!

 連撃。

 刀がレオモードの頬を掠め、

 アーデリアの胸元を貫きかけ、

 そして――凛の腕を叩いた。

「ぐっ……!」

 凛は歯を食いしばる。

「クソ……マグマ・ウィング系は、スタミナじゃなくて火力型なんだよ……!」

 ギネヴィアは距離を取り、刀を構える。

 黒いオーラが、刃から溢れ出す。

「――」

 レオモードが叫んだ。

「篤原! 退け!!」

 だが凛は、一歩、前に出る。

「……俺が下がったら」

「金、もらえないんだよ」

 ほとんど消えかけた炎を、強く握り締める。

「だから――」

「前進あるのみだ!」

 ギネヴィアが振るう。

「――ヴォイド・クレイヴ」

 黒い月牙のような斬撃が、放たれる。

 凛は、身体を捻り、回転する。

「――マグマ・スタイル」

「スピン・ブラスター!!」

 炎のバットが、巨大な鉄槌のように回転する。

 ドォォォォンッ!!!

 二つの攻撃が衝突。

 爆風が森を薙ぎ倒し、

 地面が割れ、

 霧が、砕け散る。

 ギネヴィアは岩に叩きつけられ、

 凛もまた、吹き飛ばされて木に激突し、座り込んだ。

「篤原!!」

 アーデリアの叫び。

(……生きてるな)

 凛は思う。

 だが、身体は痺れ、半ば麻痺していた。

 それでも――

 彼は、笑った。

「……楽しいな、これ」

 瓦礫の中から、ギネヴィアが這い出る。

「痛い……痛い……痛い……」

「……でも」

「最高に、楽しい」

 彼女は凛を見据えた。

「どうしてそこまで追う?」

「どうして……私を、死なせてくれない?」

 凛は、痛みに耐えながら立ち上がる。

「……お前が死んだら」

「親父さんから、報酬もらえないだろ」

 沈黙。

「……あんた」

「何者だ?」

 凛は、自分を指差す。

「貧乏人だ」

「個人経済のために必死な男だ」

「だから、逃げるな。早く終わらせろ」

 ギネヴィアの身体が、強張る。

 仮面の奥の瞳が揺れる。

 怒りと、混乱の間で。

 レオモードが前に出る。

「篤原……また来る」

 凛は、残りかすの炎を掲げる。

「……いいさ」

「左に、まだ一発ある」

 ギネヴィアが構える。

 森が、静まり返る。

 霧が、再び渦を巻く。

 次の瞬間――

 運命が決まる。

 凛の攻撃は、空を切った。

 ヒュオッ――!

 そして――

 消えた。

 次の瞬間。

 ――背後。

 黒い刀が、振り上げられている。

「死ね、ブサイク」

「篤原――――!!」

 レオモードの叫び。

「変態!! どいて!!」

 アーデリアも叫ぶ。

 凛は、ゆっくり振り返った。

 恐怖はない。

 ただ、不機嫌。

「……今、なんて言った?」

 平坦だが、怒りに満ちた声。

 ギネヴィアが、ほんの一瞬、止まる。

 その刹那。

 凛は、片手を突き出した。

 ドォォォォォン!!!!

 至近距離の魔力爆発。

 炎、光、衝撃波が、森を引き裂く。

 ギネヴィアは横へ跳び、吹き飛ばされるが致命傷ではない。

 着地し、小さく笑った。

「……クソ」

「本気で殺されかけたじゃない、ブサイク」

 だがその声は、もう嘲笑ではなかった。

 ――興奮。

 そして彼女は、さらに速くなる。

「じゃあ……次は」

「私の番!」

 凛は、半分残った炎を構える。

【警告】

【魔力残量:危険水域――2%】

 ホログラムが激しく点滅する。

「黙れ」

「うるさいポップアップだ」

 二人の影が、ぶつかる――

 レオモードは息を止め、

 アーデリアは踏み込む準備をした。

 その時。

「ギネヴィア!!」

 空気を切り裂く声。

 ――アシュトン・レガネス。

 その一瞬。

 ギネヴィアの動きが、止まる。

「……お父様……?」

 次の瞬間――

 ボフッ。

 彼女の隣に、影が現れた。

 転移でも、魔法でもない。

 ――ただの、常軌を逸した速度。

 執事ボリーズ。

 淡々と告げる。

「……申し訳ございません、お嬢様」

 トン。

 首元への、軽い一撃。

 ギネヴィアの身体は、糸が切れたように崩れ落ちた。

 ドサッ。

 アシュトンは、満身創痍の三人に深く頭を下げる。

「娘の無礼を……許してほしい」

「呪いが……彼女を縛っている」

 凛は腰を押さえ、鼻を鳴らした。

「いやいや! 俺がどれだけ死にかけたと――!」

「追いかけ回されて、斬られかけて……!」

「最後、ワンタッチでOFFって何!?」

 ボリーズが顔を背け、歯を食いしばる。

「……無礼者め」

 凛は挑発的に見上げ、牙を剥くように叫ぶ。

「何だ? やるか?」

「やるなら、14時間寝てからな!」

 ボリーズは限界寸前。

 アシュトンが手を上げる。

「よせ、ボリーズ」

 そして凛を見る。

「全て、遠くから見ていた」

「……報酬は、約束以上に出そう」

 その瞬間。

 凛の怒りは消えた。

 代わりに現れたのは――

 金色に輝く、邪悪な笑顔。

「……お?」

「それは、素晴らしいですねぇ~」

 ボリーズは、殴りたい衝動を必死に抑える。

「……このクソガキ……」

 レオモードは首を振り、笑いを堪えた。

「……瀕死から強欲へ、二秒」

 アーデリアは睨みつける。

「最低……その笑顔、本当に腹立つ」

 レオモードが続ける。

「……だが、全員を救った」

 アーデリアは顔を背け、頬を赤くする。

「……それでも、ムカつく」

 凛は胸を張り、親指で自分を指した。

「じゃあ、公爵」

「娘さんを連れて帰りましょう」

「――報酬の準備も、忘れずに」

 ボリーズは天を仰いで呟いた。

「……王国のためとはいえ」

「なぜ、よりにもよって……」


――つづく

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