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小説家の俺が、自分の書いた世界に転生したら、主人公の運命が詰んでいた件 (Ink to steel :Rebirth of the novelist)  作者: Mas amba


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第17話 最終攻撃、そして――書いた覚えのない存在

 森が揺れ、大地が裂け、爆発的なエネルギーによって灼熱の風が吹き荒れる。

 それはキメラの放つ膨大な魔力の余波だった。

 ドレッドファング・キメラは、幾度となく爆発を受けながらも、なお倒れずに立っていた。

 怒りと混乱が入り混じった咆哮を上げ、理性を失った獣のように暴れ回る。

 アーデリアとレオモードは一瞬、互いに視線を交わした。

 ――簡単には倒れない。

 二人とも、それを悟っていた。

 アーデリアの呼吸は荒く、身体のあちこちに刻まれた傷が、確実に彼女の動きを鈍らせている。

 一方、凛は魔物を真っ直ぐに見据え、震える手で第二スキルを発動させていた。

 ――《エクスプローシブ・バースト・ストライク》。

 深く息を吸い込む。

「……これが……切り札だ!」

 どこか皮肉めいた、だが本気の叫び。

 まるでロイド・フロンテラのようなノリで、凛の手の中では小さな火球が荒々しく回転していた。

 凛は高く跳躍し、その火球を次々と投げ放つ。

 まるで手榴弾の雨。

 爆発がキメラの周囲で連続して炸裂する。

 その隙を逃さず、アーデリアが空中へと躍り出た。

 鋭い一閃。

 キメラの脚の一本を切り裂き、巨体が大きくよろめく。

 背後から、レオモードが突撃する。

 爆発で露出した魔力の流れ――その“道”を断ち切るように、剣を振るった。

 凛の爆撃、アーデリアの斬撃、レオモードの剣。

 三つの攻撃が重なり合い、凄まじい衝撃波となってキメラを地面へ叩き伏せる。

 だが――

 怒りに狂ったキメラは、なおも無差別に爪を振るった。

 鋭い爪が、空中にいるアーデリアへと伸びる。

「きゃああああっ!!」

 悲鳴。

 その瞬間――

 凛が、アーデリアの前に飛び出した。

 ふざけたような顔つきだが、瞳には迷いがない。

 第二スキルを即座に回転させ、キメラの爪の真下へと爆発を叩き込む。

 轟音。

 衝撃。

 爆風が生まれ、アーデリアの身体は攻撃軌道から弾き飛ばされる。

 地面に転がり、荒く息をするアーデリア。

 だが、生きている。

「……篤原……あなた、本当に……」

 驚きと安堵が入り混じった声。

 凛は手をひらひらと振り、相変わらず皮肉な笑みを浮かべる。

「ほら? 言っただろ。俺がいれば、死なないって。

 ……変態……じゃなくて、英雄的だろ?」

 レオモードは目を見開き、凛を見た。

「……本当に厄介な男だ。だが……確かに、効果的だ。

 次はやるな。やったら、俺が止める」

 ドレッドファング・キメラは、断末魔の咆哮を上げる。

 その身体は完全に限界を迎えていた。

 やがて、巨体は崩れ落ちる。

 脚は折れ、胴体も大きく破壊されている。

 森が揺れ、木々が倒れる中――

 三人は、満身創痍ながらも立っていた。

 アーデリアはリンを見つめる。

 その瞳には、隠しきれない感謝と尊敬が宿っていた。

 凛は小さく微笑む。

 数週間、必死に鍛えたスキルが、誰かの命を救った。

 それだけで、報われた気がした。

「……変態だけど……ありがとう、リン」

 凛は肩をすくめる。

「どういたしまして、レディ・クリムゾンヴェイル。

 ヒーロー・プロトコル実行中だっただけさ。結構カッコよかっただろ?」

 レオモードはリンを一瞥し、倒れたキメラへ視線を移す。

「……今回は言っておく。

 隣にいてくれて、ありがとう」

 煙と埃が、森を包み込む。

 その中で、凛の膝が崩れかけた。

 息を荒くし、前屈みになる。

「ぐ……マナ……使いすぎ……

 でも……アーデリアが無事なら……」

 黒い血を少し吐く。

 その時――

 淡い光と共に、システムホログラムが展開された。

【警告:マナの過剰使用を確認しました。

 身体に深刻な損傷を与える可能性があります】

【推奨:最低6時間の休息、またはマナ回復アイテムの使用】

 凛は片手を上げ、うっとおしそうに言う。

「はいはい……

 それより……アーデリア・クリムゾンヴェイルが生きてる。それでいい」

 ――その瞬間。

 森が、完全に静まり返った。

 風が止み、鳥の声も消え、空気そのものが凍りついたかのようだった。

 凛は、異変を察知する。

 ――死の臭い。

 生血と、干からびた死体が混ざったような、耐え難い匂い。

 ゆっくりと、振り返る。

 木々の間に、異様な存在が立っていた。

 割れ、血に染まった仮面――まるでミイラ。

 長い刀を構え、刃に付いた血は地面に滴らない。

 全身を覆う乾いた血。

 そして、凛を“裁く”ような虚ろな視線。

 凛は、言葉を失う。

 ――こんなの、書いてない。

(俺は……こんな奴……書いてない……!

 《アイアン・フェイト・クロニクル》に……存在しない……!)

 その存在は、ゆっくりと空を斬る。

 刀の軌跡に、血の線が残る。

 心臓が、嫌な音を立てて跳ねる。

「……ありえない……

 こんなの……原作にない……」

 アーデリアも、それを見た。

「……なに……あれ……?」

 声が、わずかに震える。

 レオモードは剣を構え、一歩前に出た。

「正体などどうでもいい。

 敵意があるなら、容赦はしない」

 森は死の気配に満ちていた。

 キメラの血と、その存在の闇が混ざり合う。

 凛は感じ取る。

 キメラ以上に歪んだ、異質な魔力。

 システムホログラムが激しく点滅する。

【極度警告:未確認エンティティを検出】

【脅威レベル:B+以上】

【推奨:最上位スキルの使用、または即時撤退】

 凛は、ゆっくりと息を吐いた。

 身体は限界。

 だが、瞳は燃えている。

「……逃げない……

 今動かなきゃ……アーデリアが……また……」

 ミイラのような存在は、一歩、また一歩と近づく。

 湿った地面を擦る金属音が、背筋を凍らせた。

 凛は、全身に悪寒を走らせながら――

 それでも、前に立ち続けた。


――つづく

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