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小説家の俺が、自分の書いた世界に転生したら、主人公の運命が詰んでいた件 (Ink to steel :Rebirth of the novelist)  作者: Mas amba


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第11話:物語が壊れる音がした

 アブサード・ファイアボール Lv.2 の爆発が、グレッグの身体を正面から吹き飛ばした。

 ドォォォン――!!

 地面が砕け、衝撃波が広がる。

 黒煙が立ち上り、空気が焼ける匂いで満たされた。

 しかし――

 グレッグは倒れなかった。

 数歩後退しただけで、ゆっくりと身体を起こす。

 そして。

 ……笑った。

 低く、かすれた、耳障りな笑い声。

「クク……」

 その笑みは、不快だった。

 ぞっとするほど、楽しそうだった。

「面白い」

 煤に汚れた顔を上げ、グレッグは呟く。

「こんな攻撃……本当に久しぶりだ。実に……愉快だな」

 彼は両腕を大きく広げた。

 次の瞬間――

 ズゥゥゥ……!!

 グレッグの身体から、漆黒のオーラが噴き出した。

 世界の色が、急激に失われていく。

 空気が重くなる。

 空間そのものが軋むような感覚。

 黒いオーラは、ただ身体を包むだけではない。

 生き物のように脈打ち、心臓の鼓動に合わせてうねり、密着していた。

 空間に黒い亀裂が走る。

 地面に映る影が、異常に長く、重なり合って揺れる。

 まるで――

 そこに立っているのが一人ではないかのように。

 バキ……バキ……ギィィン――!!

 オーラは形を変えた。

 より鋭く。

 より凝縮され。

 より――致死的に。

 それは鎧ではない。

 単なる魔法でもない。

 血の誓約と、古代の意志が具現化したもの。

 トルグラムの顔色が一気に青ざめた。

「くそ……ッ!」

 思わず半歩、後退する。

「それは……ブラック・レゾナンス・モードだ!!」

 叫ぶように告げる。

「アーデリア!! レオモード!! 気をつけろ!!」

「古代の血の誓約が完全に発現した状態だ!!」

「さっきまでの力なんて……まだ半分にも達していない!!」

 黒いオーラがさらに脈動する。

 グレッグはゆっくりと腕を下ろし、こちらを見た。

 その瞳には、もはや人間の光はなかった。

「さあ」

 声が歪む。

 まるで、複数の方向から同時に聞こえるかのように。

「ようやく……まともな戦いが始まるな」

 空気が、完全に張り詰めた。

 ――誰もが理解した。

 ここからが、本当の戦闘だ。

 アーデリアが剣を構える。

 物語が始まって以来、初めて見るほど真剣な表情。

「だったら……本気を出す前に叩き潰すだけよ」

 次の瞬間。

 グレッグが――消えた。

 本当に、消えた。

 篤原 凛は、目で追うことすらできなかった。

 ヒュン――!!

 気づいた時には、グレッグは目の前にいた。

 黒い刃が、振り下ろされる。

 凛の脳が、完全に停止する。

「は……?」

「ちょ、ちょっと待――」

 だが。

 ガキィィィン!!

 金属音が炸裂する。

 レオモードの剣が、寸前で斬撃を受け止めていた。

 衝撃で床がひび割れる。

「凛に――」

 レオモードが叫ぶ。

「触れるなァァァ!!」

 力任せに押し返し、グレッグを後退させる。

 グレッグは愉快そうに笑った。

「ほう?」

「その醜い男を庇うのか。実に……興味深い」

 次の瞬間。

 アーデリアが背後から跳びかかる。

「調子に乗るなッ!!」

 剣が横薙ぎに走る。

 ズバァァン!!

 しかし。

 グレッグは、見もせずに刃で受け止めた。

「弱い」

 そのまま反撃の体勢に入る。

 連携戦闘が始まった。

 レオモードが前へ出る。

 アーデリアが斬り込む。

 凛は後方で震えながら、両手を上げた。

「くそ……! マナが全然足りない!!」

 ホログラムが浮かび上がる。

【現在のマナ残量:14 / 120】

【小規模火球魔法のみ使用可能です】

 凛が歯を食いしばる。

「小さくても……やらないよりマシだ!!」

 小さな火球を放つ。

 ピュッ!

 グレッグは容易く避ける。

 だが――それでいい。

「今だ!!」

 レオモードが踏み込む。

「ファング・ストライク!!」

 剣が風を切り裂く。

 グレッグが受け止める――が。

 その横から。

「クリムゾン・フラッシュ!!」

 アーデリアの剣が、深紅の閃光を描いた。

 ズシャァァッ!!

 半歩、グレッグが下がる。

 凛は、その隙を見逃さなかった。

「い、今だ!!」

「ファイアボール――アブサード――ミニ!!」

 テニスボールほどの小さな火球。

 しかし、タイミングは完璧だった。

 グレッグは二人の攻撃を捌いた直後。

 気づいた時には――

 パァン!!

 顔の横で小爆発。

「チッ……!」

 視界が一瞬、揺らぐ。

 それで十分だった。

 レオモードの蹴りが直撃する。

 ドゴォン!!

 グレッグは壁へ叩きつけられ、工房の壁が崩れる。

 轟音。

 瓦礫の中から、グレッグが立ち上がる。

「……やるじゃないか」

 アーデリアがレオモードの隣に立つ。

 剣を構え、息を整える。

 凛は一番後ろで、手を震わせながら火花を灯す。

 初めて――

 ほんの少しだけ。

 互角に見えた。

 グレッグが再び武器を構える。

「いいだろう」

「次は……耐えられるかな?」

 床を蹴る。

 ドン!!

 一瞬で消失。

 次に現れたのは――

 アーデリアの正面。

「アーデリア!!」

 レオモードの叫び。

 だが、遅い。

 上段から、必殺の一撃。

 時間が、凛の中で遅くなる。

 ――この場面。

「……これ」

 凛の脳裏に、記憶が蘇る。

『アイアン フェイト クロニクル』。

 アーデリア・クリムゾンヴェイルが、

 レオモードを庇って死ぬ場面。

「まさか……」

「今ここで……?」

 凛の喉が震える。

「……いやだ」

 マナは残り9。

 火球すら、怪しい。

 それでも。

 身体が、勝手に動いた。

「アーデリアァァァ!!」

 ――ドン!!

 凛は、横から体当たりした。

 アーデリアが弾き飛ばされる。

「えっ――!?」

 次の瞬間。

 ズゴォォッ!!

 巨大な刃が、凛の横を掠めて通過する。

 紙一重。

 凛は、震えながら立っていた。

 グレッグが舌打ちする。

「ほう……」

「お前が庇うのか。醜い男よ」

 凛は、無理やり笑った。

「い、いや……」

「だって、あいつ死んだら……ストーリー崩れるし……」

「……何?」

「ち、違う! 友達だからだ!!」

 その瞬間。

 グレッグがアーデリアに意識を向けた。

 ――致命的な隙。

「ファング――ブレイク!!」

 レオモードが突進する。

 ドガァァァン!!

 斬撃が、グレッグの腕を打ち抜いた。

 初めて、グレッグが大きくよろめく。

「……貴様」

 レオモードが低く言う。

「俺が守る者に、二度と手を出すな」

 アーデリアが立ち上がる。

 頬が赤い。

 凛を睨みつける。

「……気持ち悪いけど」

「……さっきのは……ありがとう」

「言い方!」

 トルグラムが前に出る。

 巨大なハンマーを振りかぶる。

「若いの……仕方ない」

「これで終わらせる!」

「フォージ・ハンマー――バースト!!」

 衝撃波が炸裂。

 グレッグの身体が浮き上がる。

「今だ!!」

 レオモードとアーデリアが同時に動く。

 凛は残り3マナをかき集める。

「火花でいい……頼む……!!」

 小さな火の粒。

 ――同時攻撃。

 ズガァァッ!!

 ザシュッ!!

 パチン!!

 グレッグの身体が大きく揺れた。

 黒いオーラに亀裂が走る。

「終わりだ!!」

 トルグラムの一撃。

 ドォォォン――!!

 グレッグは工房の外へ吹き飛ばされ、完全に沈黙した。

 ……戦闘、終了。

 凛はその場に座り込む。

「はぁ……死ぬかと思った……」

 アーデリアが近づき、顔を赤らめる。

「勘違いするな……!」

「さっきのは……助け方が、まあ……悪くなかっただけだ!」

「はいはい」

 レオモードが凛を見る。

「……なぜ、考える前に動いた?」

 凛は肩をすくめた。

「目の前で仲間が死ぬの、嫌なだけだ」

「俺も……一応、人間だから」

 レオモードは小さく笑った。

 トルグラムとアーデリアは、凛を見つめる。

 ――この男は、何者だ?

 凛は天井を見上げる。

「はぁ……」

「俺の書いた世界……本気で俺を殺しに来てるな……」


――つづく

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