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小説家の俺が、自分の書いた世界に転生したら、主人公の運命が詰んでいた件 (Ink to steel :Rebirth of the novelist)  作者: Mas amba


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10/22

第10話 最弱の俺が、初めて“強者”を退かせた日

 金属が触れ合う音が、ふいに止んだ。

 潤滑油と熱された鉄の匂いが、鍛冶場の空気を重く満たしている。

 トーグラムは、レオモードの剣の損傷を確認していた。

 その瞬間――

 ドゴォォンッ!!

 鍛冶場の壁が、内側から殴りつけられたかのように砕けた。

 粉塵が舞い、瓦礫が転がる。

 そこへ現れたのは、巨大な影だった。

 黒く鈍く光る大斧を肩に担ぎ、歪んだ笑みを浮かべた男。

 ――グレッグ。

 細められたその目が、真っ直ぐトーグラムを射抜く。

「……久しぶりだな、マスタートーグラム。

 自分の人生を壊した相手の顔くらい、覚えているよな?」

 トーグラムの表情が強張る。

 アーデリアは即座に剣を抜き、レオモードは前に出る。

 そして――

 一人だけ、作業台の裏に素早く隠れた男がいた。

 ――凛。

 グレッグが地面に大斧を叩きつける。

 ドンッ――――!!

 衝撃波が鍛冶場を駆け抜け、机も工具も弾き飛ばされる。

 アーデリアは数歩後退し、体勢を崩した。

 トーグラムが歯を食いしばる。

「……グレッグ。

 俺はもう、あの頃を捨てた」

 グレッグは嗤った。

「だがなぁ、

 あの頃は……まだお前の中に残ってる!」

 次の瞬間、彼は踏み込んだ。

 ガガァァンッ!!

 トーグラムの剣が、黒い斧を受け止める。

 しかし、その足元の床に、蜘蛛の巣のような亀裂が走った。

 ――重い。

 ――桁が違う。

 アーデリアは、先ほどの「事故」の怒りを一瞬で切り替え、戦闘に入った。

「はぁっ!」

 紅い軌跡を描く連撃。

「クリムゾン アークスラッシュ!」

 だが、グレッグは片手でそれを受け止める。

 まるで子供の剣を払うかのように。

 レオモードが横から踏み込み、突きを放つ。

 カァンッ!!

 弾かれた。

 剣に、さらに深い亀裂が走る。

「……くっ」

 レオモードは歯を食いしばった。

「これ以上……この剣では……」

 トーグラムは、それを見逃さなかった。

 ――限界だ。

「レオモード!!

 その剣はもう保たん! 捨てろ!」

「無理だ!」

 レオモードは叫ぶ。

「この剣は……大切な人からの贈り物なんだ!」

 グレッグが嘲笑う。

「いいなぁ。

 感情があるほど、壊すのが楽しい」

 トーグラムは舌打ちし、金属製の机を蹴り上げた。

 即席の盾として斧の一撃を受け止める。

 その隙に――

 彼は壁に掛けられた一本の剣を掴んだ。

 厚く、重く、実戦用の剣。

「レオモード!!

 これを使え!!」

 投げられた剣を、レオモードが受け取る。

 ずしり、と体が沈む。

「……これは……

 マスタークラスの実戦剣……!」

「今使わずして、いつ使う」

 レオモードは頷いた。

 再び、戦闘が激化する。

 レオモードの一撃が、今度はグレッグの斧を正面から受け止めた。

 ガァァンッ!!

 火花が散る。

 アーデリアが横から切り込む。

 だが――

「悪くない。

 だが……足りん」

 グレッグが魔力を放つ。

 ドンッ!!

 衝撃で、二人とも吹き飛ばされた。

 アーデリアは金属箱の山に叩きつけられ、

 レオモードは五メートル近く滑る。

 ――それでも、届かない。

 トーグラムは内心で毒づいた。

(……化け物め。

 既にナイトエリートの領域を越えている……)

 一方――

 作業台の裏。

 凛は、震えながら状況を見ていた。

「……おかしい……

 こんなの……俺、書いてない……」

 その時――

 ピコン。

 凛の視界に、淡く光るホログラムが現れる。

【警告:対象の敵レベルは、当該エリア平均を大きく上回っています】

【推奨:スキル、または補助アイテムの使用】

 さらに。

 ピコン。

【報酬を受け取れます】

【以前のクエスト報酬:モンスターコア×10】

【スキルポイント+10】

【マナカプセル×1】

 凛の目が見開かれた。

「……今!?

 今出るの!?」

 ホログラムが、丁寧に応答する。

【はい。現在、受け取り可能でございます】

 前方では、

 レオモードが再び押され、

 アーデリアが歯を食いしばりながら立ち上がり、

 グレッグが範囲攻撃の構えを取っていた。

「……考えてる暇、ない……!」

【スキルポイントを使用し、

 スキル《ファイアボール・アブサード》を強化しますか?】

「はい!

 全部! 全部上げて!」

【了解しました】

【スキル《ファイアボール・アブサード》Lv.1 → Lv.2】

【効果:爆発範囲拡大】

【消費マナ:+20%】

【威力:大幅上昇】

 凛は拳を握る。

「……いける……

 たぶん……!」

 さらに。

【マナカプセルを検知しました】

【使用しますか?】

「使う!!」

【マナ+50】

 体が熱を帯びる。

 体内に、新しい流路が開く感覚。

 その時――

 レオモードが吹き飛ばされ、壁に叩きつけられそうになる。

「レオモード!!」

 アーデリアの叫び。

 グレッグが、斧を振り上げる。

 その瞬間――

 凛は立ち上がった。

 足は震えていた。

 だが、立った。

「――おい、鉄クズ野郎」

 グレッグが動きを止め、訝しげに見る。

「……お前か。

 威厳も魔力もない、妙な顔の男」

 凛の手に、赤橙色の火花が集まる。

 魔力の収束速度が、今までと違う。

 火が――

 人の頭ほどの大きさに膨れ上がる。

 レオモードが目を見開いた。

「……あの魔力量……

 数週間しか訓練していないはずだぞ……」

 アーデリアも呆然とした。

 凛は叫んだ。

「ファイアボール アブサード――

 レベル2!!」

 ゴォォォォッ!!

 火球は流星のように放たれた。

 グレッグは斧を構え、正面から受け止めようとする。

 だが――

 ドゴォォォォン!!!!!

 爆炎が鍛冶場の半分を飲み込み、

 衝撃で床が砕ける。

 アーデリアは腕で顔を庇い、

 トーグラムは手にしていた工具を落とした。

 煙が晴れる。

 そこに立っていたグレッグの姿。

 黒い鎧に――

 細かな亀裂。

 そして。

「……貴様……

 ただ者ではないな……」

 初めて、

 その顔に動揺が浮かんでいた。

 凛は、青ざめた顔で立っている。

「……え?

 俺? 高位魔術師?

 ……いや、ただの作家なんだけど……」

 だが、結果は明白だった。

 ――戦況が、変わった。

 初めて。

 凛は、

 格上の敵を、半歩だけ後退させた。

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