見返り
「今日もありがとね、琉人くん。はい」
「いえ、深雪さん。こちらこそありがとうございます」
ある放課後のこと。
夕暮れ時、縁側にぐったり腰掛けている僕に冷えたグラスを差し出し労ってくれるポニーテールの女性。彼女は西条深雪――地元の大学に通う二年生で、我が浦沢家と懇意の間柄にある西条家の娘さんだ。……まあ、この由緒正しき西条さん家と、紛うことなき一般庶民の浦沢家にいったいどのような縁故があったのかは、未だに謎でしかないのだけども。
そして、僕はと言えば――さっきまで、ここ西条家の広い庭の草むしりを手伝っていたわけで。
「それにしても、こっちはほんとに助かるけど……ほんとに大丈夫? 琉人くんも忙しいんじゃない?」
「いえ、僕は暇ですからご心配なく。24時間、365日暇ですから」
「……いや、そんなわけないでしょ」
頂いたコーラを嗜みつつ、縁側にて他愛もないやり取りを交わす僕ら。いやまあ、流石にそれは言い過ぎたけど……でも、実際のところそれほど忙しいわけでもないし、仮に多忙だったとしても気に掛けてくれる必要はない。だって――
「――さて、改めてありがとね琉人くん。はい、今日の分」
「……こちらこそ、いつもありがとうございます」
感謝の言葉と共に、深雪さんが差し出した数枚の紙切れ――例の福引き券を、こちらも感謝を告げつつ受け取る僕。まあ、普通に見返りを頂いてるわけだし。




