福引き
「…………あと、一回……」
そう、ポツリと呟く。そんな僕の手には、一枚の小さな紙切れ――されど、今の僕には何より大事な一枚の紙切れ。それを、ハンドベル片手に快活な笑顔を浮かべるハチマキ姿のおじさんへ手渡す。そして、ゆっくりとレバーを回し――
――コロン。
「あちゃー、残念だったな兄ちゃん。ほら」
「……ありがとうございます」
朗らかな笑顔のままそう言って、こちらへと手を差し出すおじさん。その手には、街頭で配られているようなティッシュの袋――言わずもがなかもだけど、福引きの外れ景品で。
……ほんと、当たらないなぁ。でも……ふと目線を上げると、そこには1等から5等の景品が記された大きな用紙。……そう、僕は何としても当てなきゃならない。何としても、あれを――
「ねえ、琉人。どうだったの?」
「……どうって、何が?」
「あははっ、分かってるくせに」
「……ぐっ」
翌朝、登校時にて。
そう、何とも楽しそうに尋ねるミディアムショートの女の子。彼女は川崎藍李。僕と同じ中学二年生でクラスメイト――そして、僕にとっては一番仲の良い友達だったりする。……まあ、彼女がどう思ってくれてるかは別として。
……まあ、それはともあれ――
「……その、駄目だった」
「あははっ、やっぱり!」
少し目を逸らしつつそう伝えると、何とも楽しそうな声で答える藍李。どんな表情をしているのか、確認せずとも容易に想像できる。
さて、何のお話かというと……まあ、言わずもがなかもしれないけど、昨日の福引きの件で。
……ぐっ、こうなるからバレたくなかったんだけどなぁ。まあ、小さい町だし隠し通すなんてどのみち無理があっただろうけど。
「……ふん、今に見てるが良いよ藍李。僕は、いつか絶対に1等を――あの藤崎テーマパーク年間特別招待ペアチケットを、絶対に手に入れて見せるから」
「あははっ、ジェットコースターにもローラーコースターにも乗れないのに?」
「……ぐっ。でも、あのテーマパークにはそれ以外にも魅力がたくさんあるからね。それに、このチケットは入場だけじゃなく園内の食事も全てタダ。更には、このチケットでしか座れないパレードの特等席まで――」
「はいはい、当たると良いね~」
ともあれ、そんな宣言をかまし熱弁を振るうも可笑しそうに答える藍李。……ぐっ、今に見てるが良いよ。いつか、絶対に引き当てて見せるから!




