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07 王宮からの依頼

 領主様の弟……パトリックの治療は無事に完了し、あたしは自分だけの研究所兼ポーション屋兼自宅を手に入れた。

 手に入れたんだけど、そこにはいらないオプションもついてきてて……。


「今日も元気そうだな、サラ」


「領主様、お暇なの? 毎日毎日、顔を見せに来るけれど」


「堅苦しい呼び方をするな。キミは弟の命の恩人なのだ。気軽にウィルと呼んでくれ」


「いや、そうじゃなくて、なんで毎日顔を出すか聞いてるんですけど?」


「心配するな。きちんと領主としての仕事は終わらせている」


 うん、話が通じない。まあ、目ざわりではあるけれど、邪魔はしないし置物兼話し相手として接しているけれど、領主に対する態度ってこれで良いのかな?

 勇者パーティーに入ってからは権力者の相手は勇者と魔女が取り仕切っていたし、故郷にいた時は領主どころか、町長とだって会ったことがないから、よくわからないのよね。


「まあ、仕事を終わらせているのは素晴らしいことですけど、今日は何の用ですか?」


「用がなければ来てはダメなのか?」


 ウィルが雨に濡れた子犬のような眼でこちらを見てくるけれど、常識で考えたら領主が平民の元に用もなく来るのはダメよね?


「……」


「まあ、今日は用がないこともない。じつは勇者が代替わりしたらしい」


 一向に用事を話さないウィルに対して、冷たい視線を浴びせていると、観念したようにウィルが用事を話し始める……って、勇者が代替わり!?


「……勇者って代替わりするものなの?」


「するらしいな。陛下から各領地の領主宛てに布告がなされた。新たな勇者を称え、旧勇者を見かけた際には捕らえて王宮へと知らせるように、と」


「捕らえてって……」


「どうも依頼は失敗続き、そのくせ前線では貴重なポーションや薬類を買い占め、他の冒険者からも顰蹙を買っていたようだ」


 あ~、確かに勇者たちの戦い方を考えたら、あたしがいなくなったらポーションを他から買い占めるってのは考えられることかな?

 でも、確か聖女がパーティーメンバーに加入したはずじゃ?


「ふ~ん。……でも、なんでその話をあたしに?」


「だって、サラは勇者パーティーに所属していたんだろ?」


「えっ!? ……話しましたっけ?」


「直接聞いてはいないが、勇者パーティーから優秀な薬草師が消えた話は聞いていたし、王宮にいる知り合いからサラの話は聞いていたぞ?」


 そういえば、勇者のお供で王宮について行った時に、なんか周囲の人にジロジロと見られていたわね。

 どうせ、勇者のお供のくせに庶民臭いと思われていたんだろうけど、かなり不快だったわ。


「どうせ、あたしは庶民中の庶民ですよ」


「何を言っているんだ? サラが注目されていたのは、小さかったからだぞ? 知り合いによると勇者パーティーに子供がいるから、相当優秀なのだろうと噂していたとか」


 子供!? そんなに小さくないですけどっ!? 年相応……とまでは言わないけど、それでも子供に間違えられるほどは小さくないから!


「む~~~」


「あ~、気に障ったか? まあ、それで注目されていたから、部位欠損回復薬が作れることもそうだし、タイミングも合っているからカマをかけてみたんだが」


「……まあ、正解です。勇者パーティーから追放されたので、いい機会だと思って薬草が豊富な土地を探して旅をしていたのよ」


「ほほう。家を建てたということは、辺境の地はお眼鏡にかなったということかな?」


「まあね。あまりにも無造作に希少薬草が放置されているから、喜びと同時に怒りがわいてきたわよ」


 希少薬草が採り放題ってのは薬草師としてうれしい限りだけど、それ以上に金の生る木を放置している為政者側には怒りがわいたわね。


「……すまなかった」


「まあ、良いけどね。そのおかげで、こうして色んな薬が研究できているから」


「ああ、それだ。王宮の方から部位欠損回復薬の納品依頼が来ているんだが、どうする? 断っても大丈夫だが」


「いや、王宮からの依頼を断るのはマズいでしょ?」


「魔国との戦争ばかり考えて、辺境のことは放置していたんだ。依頼の一つや二つ断ったところで、問題にはならないよ」


 いや、絶対問題になるでしょ。王宮からの依頼って言ってるけど、王宮からってことは王家か宮廷騎士団が依頼元でしょ?


「う~ん、作ってあげたいのは、やまやまなんだけど」


「無理か? あれか……材料が足りないか?」


「材料は足りてるけど、部位欠損回復薬って、治す大きさによって素材の量が変わるのよ」


 部位欠損回復薬が治せるのは四肢から先だけ……つまり頭部と胴部以外なんだけど、指先を回復させる薬と、パトリックみたいに肘から先を回復させる薬では素材の量が変わる。


「素材の量が少ないと回復しないのか?」


「まあね。そういう意味でも部位欠損回復薬を処方する場合は、薬草師が直接診断するのよ」


「ほう……ならば、やはり断るか」


「待って待って、完全部位欠損回復薬なら、どんな部位欠損でも回復できるからっ!」


 四肢のうち一カ所だけを回復させる部位欠損回復薬とは違って、死んでいなければ内臓でも回復させられる完全部位欠損回復薬なら、どんな欠損でも回復できる。

 ただ、完全部位欠損回復薬にも問題はあって……。


「最初に提案しないということは、作るのが大変なのではないか?」


「作るのはそうでもないんだけど……完全部位欠損回復薬は副作用があるの」


「……副作用」


「うん。完全部位欠損回復薬は、欠損箇所が少ないと、ものすごく痛いんだって」


 完全部位欠損回復薬は四肢すべてに加えて、内臓もいくつか治せるほどの魔力が籠っている……それを例えば小指だけの部位欠損に使えば残った魔力が体内で暴走する。

 人体には不要な魔力を排出する機能があるから、不要な肉体が生えてきたりはしないけれど、魔力を排出するまでには二度と味わいたくないレベルの激痛が走るらしい。


「……痛い?」


「うん。故郷で使った人がいたんだけど、三日くらいはベッドの上でのたうち回って、二度と使わないって宣言してたよ」


「痛いだけなのか?」


「そう。痛いだけ」


「ふむ……なら、王宮には完全部位欠損回復薬を納品するか」


 ウィルがものすごく黒い笑顔で言ってるわ。……まあ、あたしには直接関係ないからいいか。


「作るのはいいけど、副作用のことはきちんと伝えてね。こっちに文句が来ても困るから」


「わかってるって。というか、王宮にも薬草師はいるからな。完全部位欠損回復薬なら納品できると言えば、伝わるだろう」


 それもそうか。小さな街で薬草師をやっていた、あたしよりも、王宮にいる薬草師の方が知識は豊富だしね。

 というか、それなら王宮の薬草師が部位欠損回復薬を作ればいいんじゃ? ……まあ、お金になるみたいだから、作っておくかな。

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