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05 治療

 辺境で見つけた奇跡のような薬草たち……それを確保するために森に家を建ててもらおうと思ったら、ウィルとかいう領主が出てきて、ひと悶着起きた。

 家を建ててもいいけど、領主の弟を治せですって。領主だからって偉そうに……まあ、偉いんだけどね。

 で、その弟とやらを治すために、今まさに領主の住んでいる館に着いたってわけ。


「はぁー、豪華な家に住んでいるのね」


「そうか? 確かに大きいが古いし、住み心地はそこまで良くないぞ?」


 そりゃ領主といったら貴族だし、貴族からすれば大したことないのかもしれないけど、あたしみたいな平民からしたら十分、豪華な家よ。


「で、弟を治してって言ってたけど、何の病気なの?」


「見ればわかる」


 さっきからコレよ。こっちが質問をしても見ればわかるの一言。いくら薬草師っていっても、治せる病気には限りがあるし、先に教えてほしいんだけどさ。

 まあ、実際に会わせようとしているから、伝染病とかではなさそうだけど……手持ちの薬草で治せるかなぁ?

 森の希少薬草はひと通り採ってきたから、よっぽどのことでもなければ治療薬は作れるだろうけどさ。


「ここだ。……パトリック、俺だ。中に入るぞ」


 ウィルはこんな話し方だけど、やっぱり貴族なんだなぁ。入る前にノックをしてから、一声かけて、それから扉を開く。

 平民だったら……というか、あたしの実家だったらお兄ちゃんも弟もノックもせずに勝手に入ってくるわよ。


「弟のパトリックだ」


「兄さん、お客さんかい?」


 ウィルが指し示した先には、兄弟であることが確信できるほどに容姿の似通った男性がいた。

 ただし、パトリックと紹介されたその男性は右ひじより先がなく、片腕だった。


「パトリック、こちらは旅の薬草師のサラだ」


「へえ~、小さいのに偉いんだねぇ」


「驚くなよ。これでも、お前と同い年らしい」


「えっ!?」


 おい、驚くなよ。失礼だろ、パトリック。


「で、領主様? 領主様の依頼は弟の右腕を治すことで良いんですか?」


「兄さん!?」


「ああ、出来るか?」


「一応聞きますが、右腕を失くされたのは、いつですか?」


「二か月前だな。森に現れた凶悪な野生生物の対処をしていた際に、ソイツに喰われた」


 まあ、そうよね。これが数日前に切り落とされた、とかなら上級ポーションがあれば、簡単に治るんだけど、欠損となるとそうはいかない。

 いくら貴族とはいえ、特級と言われる部位欠損回復薬は簡単に手に入るものではないからね。

 貴族なら上級ポーションは比較的簡単に手に入るから、二か月経って治っていないということは、失くした部位は存在せず、上級ポーションでは治らないことの証左でしかない。


「はあ。領主様。台所を借りますね」


「台所?」


「ポーションを作ってほしいのでしょう? 火元が必要なので、台所です」


「!? 治せるのかっ!?」


「森で採ってきた希少薬草が必要だけど、作れますよ」


 あたしをここに連れてきたウィルはもちろん、右腕を失っているパトリックも驚きで声を失くしているけど、作れるわよ。

 勇者パーティーにいた時に、どれだけのポーションや薬を作り続けていたことか……もちろん、部位欠損回復薬だって、何本も作ってきたわよ。


 驚く領主兄弟は放置して、一緒にいたメイドに台所へと案内してもらう。家の外観から、わかっていたことだけれど、台所も広いわね。

 まずは希少薬草を使用できるように魔力を流して加工していかないと……手持ちの薬草は加工済みだから、そっちは心配ないけどね。

 とはいえ、希少薬草の名前は伊達じゃなく、幾度も作ってきたあたしでも、何本かは失敗して無駄にしてしまった……うーん、旅の間に腕が落ちてきてるかな?


「そんなにすぐに作れるのか?」


 あら? 加工している間にウィルが台所にやってきたみたい。パトリックは流石にいないわね。


「すぐに……というか、今日中にですね。部位欠損回復薬の入手が難しいのは、材料である希少薬草の入手が難しいからだからね」


 手持ちに希少薬草があるのなら、まともな薬草師なら部位欠損回復薬を作るのは難しい話じゃない。

 故郷なら両親やお兄ちゃんは作れるし、あたしだって勇者パーティーとして旅に出る前から作れた。


「何を言っているんだ? 少なくとも辺境にやってきた医者は作れなかったぞ?」


「腕が悪かったんじゃない? まあ、基本的に医者は薬草師が作った薬を使うだけで、薬を作るのがうまいわけじゃないからね」


 王国では医者は病気の診断だったり、お金のない平民の外科手術をする人であって、薬やポーションを作るのは薬草師だからね。

 貴族御用達であっても、医者に部位欠損回復薬が作れなくても不思議じゃない。


「よし! できた……これが部位欠損回復薬よ。飲んだら安静にして、一日も経てば治るわよ」


 患者であるパトリックの意識があって良かった。意識がなかったら、飲み薬じゃなくて点滴に加工しなきゃいけないからね。

 旅の身の上だから、流石に点滴用の機材なんて持ち歩いてないからね。

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