04 サラとの出会い(ウィル視点)
「ウィル様、こちらです」
俺の名前はウィル・C・アレン。王国の中でも辺境とされる領の領主をやっている。
いつものように領主としての仕事をしていると、大工組合長が執務室にやってきて、外から来たお客さんが森に家を建てたいと言ってきたと、伝えてきた。
辺境というと魔国の対極に位置していて、平和だなんだと言われがちだが、魔族や魔物はいなくとも凶悪な野生生物が多く、騎士でも危険なんだぞ!
組合長も危険なことを伝えたが、お客さんは一歩も引かないようで、辺境一帯の土地の権利を持っている俺の元に話しが回ってきたということらしい。
なんでもお客さんは若い女だとかで、その点も組合長は危惧しているらしいが……はあ!? 若い女が!? 森に住む!?
ありえないだろっ! 森なんて屈強な冒険者や騎士ですら、有事以外は近づきたがらないってのに、若い女!?
「おい、このちんちくりんか? 森に住みたいって言っているのは?」
「はあっ!? 誰よコイツ!?」
組合長に連れられてやってきた場所には、どう見ても10代前半の少女が座っていた。
若い女だという話は聞いていたが、森に住むというからには冒険者のように鍛えている女性などを想像していた。
それが実際に会ってみれば、10代前半にしか見えない少女だったら、驚くのは無理ないだろう。
「ウィル様っ! さすがに失礼ですよ。こちらはサラさん。旅の薬草師だそうです。サラさん、こちらは領主のウィル様です。失礼のないように」
流石にケンカになるとまずいと思ったのか、双方の立場と名前を知っている組合長が紹介をしてくれた。
しかし、旅の薬草師? 魔国との戦いが始まってからは薬草師は貴重なはずだが、本当に薬草師なのか?
「組合長、薬草師というのは本当か?」
「商業ギルドにポーションを売り込んだらしいですよ。身分証の職業も薬草師となっていました」
確認するところは確認しているようだな。しかし、それでも疑わしい。そもそも薬草師は覚えることが多く、冒険者や兵士のように身体能力があれば簡単になれる職業でもない。
それが子供と言って通じるような少女ならば、簡単に信じることはできない……身分証は公的なものだが、偽造する手段がないというわけでもないしな。
「なんか疑われてる?」
「そりゃ、お嬢ちゃんみたいな子供が薬草師を名乗って、信じろって方が難しいだろ」
「子供だとか、ちんちくりんだとか失礼ね。これでも18歳よ」
「「18!?」」
組合長も俺と一緒に驚いているところを見ると、年齢までは確認していなかったようだ。
とはいえ、18……俺の2個下で、弟と同い年? 見えない。
「そりゃ、他の人と比べれば、ちょっと成長が遅いけど、その反応は失礼じゃない?」
ちょっと? どう見ても10代前半、それも12、3くらいにしか見えないんだが、それで18歳っていうのはちょっとじゃないだろ。
身長も140あるかないかくらいだし、胸だってぺったんこ。俺がちんちくりんと言ったのは、悪口ではなく事実だ。
「そいつは悪かったな。それで? 森に家を建てたいんだって?」
「ええ。聞けば、森の浅いところは出入り自由なんでしょ? その辺りに家を建てて研究をしたいのよ」
話を聞けば納得できることだ。森に家を……という話だったから、てっきり奥の危険地帯かと思っていたら、浅いところか。
「たしかに森の浅いところは出入り自由にしているが、研究? 何をするつもりだ?」
「商業ギルドでもそうだったし、あんたも気づいていないようだけど、あの森は薬草の宝庫よ! 薬草師だったら、あの森の薬草を使って作ってみたい薬が山ほどあるわ!」
俺の疑問に対して、サラとかいう少女は目を輝かせながら答えてくる。……しかし、それほどのものか? 俺も森には幾度となく入っているが、一目で薬草と分かるものなどなかったぞ?
「言っていることの筋は通るが、本当に森に薬草があるのか?」
「ああ、素人には区別がつかないでしょうね。薬草って言っても、森に生えている段階では雑草と変わらないから。商人が売っている薬草は乾燥させてあったり、魔力を込めてあったりするからね」
確かに俺の知っている薬草はパサパサして乾燥しきったものか、魔力が潤沢に込められてキラキラしているものだ。
普通に考えれば自生しているものが乾燥しているわけはないし、普通の草と見た目の違いがなければ森で見逃してもおかしくはない……のか?
「で? こっちの事情は話したけど、家は建ててくれるの?」
俺と組合長がそろって黙り込んでいたから、しびれを切らしたようにサラが詰め寄ってくる。
「事情は分かった。だが、簡単に判断できることではない」
「そもそも、森の中ではなく、街の中ではいけないのかい?」
「行き来が面倒じゃない。それに、薬草畑も作って確実に採れるようにしたいし……」
俺の判断を後押しするように組合長も森の中ではなく、街の中から通えばと提案するが、サラはその提案を一蹴した。
組合長としても、大事な組合員を森の中で作業させるのは嫌なのだろう。しかし、サラの言い分ももっともだ。本当に森の中に薬草があるのなら、傍で管理したいと考えるのは当然だろう。
「……条件付きで許可しよう」
「ウィル様!?」
「家を建てる時には護衛に騎士を出すし、森の深部との中間地点に騎士の詰め所も作る」
「で、条件って?」
「俺の弟を治すことだ。優秀な薬草師だという証明が出来なければ、こちらもリスクを負って家の建築を許可する意味がないからな」




