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願いを叶える不気味な掲示板

願いを叶える不気味な掲示板

「へんな、けいじばんがあるんです。見てきてください。おとなは見ても、気づいてないみたいです」

その依頼文は、子どもの字で書かれた便箋と共に、ナズナのポストに入っていた。

差出人の名前はない。ただ、文末にこう書かれていた。


ぼくは、もう、ねがいをかきました。

調査開始

郊外の新興住宅地にある小さな町。

そこに、どこの組織の管轄でもない掲示板があった。木製。古びているが使われている痕跡がある。


画鋲の穴、破られた紙の痕。そして子どもの筆跡で貼られたメモ。


せんそうがおわりますように

かぞくが、ずっといっしょにいられますように

ほんとうのかいじゅうがでてきますように

全て子供の手によるメモだった。


観測される現実の変化

地域広報に「小型怪獣らしき未確認生物の目撃情報」

家族が予告なく帰国し、家庭が再びそろった例

隣町で戦争終結をテーマにした紙芝居の上演

偶然とは思えない。 世界が“子どもの願い”に微細に合わせて動いている感覚。

そしてその中心に、この掲示板がある。


返信の痕跡

裏側に回ると、黒く塗りつぶされた文字列。


<code>RE: </code>

これは「返信」が存在していた痕跡だった。


類似記録と歴史

紀元前エジプト:雨を願う言葉を突如現れた粘土板に書くと、翌年、雨季が長くなった。

江戸時代:神社裏の「無縁板」に書いた言葉で村の命運が変わる。

中世ヨーロッパ:修道院地下の石壁に要求を書くと願いが叶うと言う文化が存在。

時代も場所も超えて現れる“願いを叶える掲示板”。

それは一体何なのだろうか。


依頼者との再会

ナズナは依頼が合った掲示板の前で車で張り込みをする。夜に少年が人の目を盗み現れた、依頼の差出人の少年だった


「あなたが……来てくれると思ってた」

「ほんとうは、もっとすごいこと書こうとした。 『ぜんぶの人がしあわせになる』とか『死んだおかあさんに会いたい』とか…… でも書けなかった。本当に“何か”が動く気がして。」

少年が握っていた最後の紙。


──この世界を、もっときれいにして。

その言葉は、叫びではなかった。祈りでもなかった。

ただ、心の奥に沈んだままの、まだ誰にも染められていない“純粋な感情”だった。


ナズナの選択

ナズナは紙を静かに受け取り、代わりに自分の手で一枚の紙を貼った。


この掲示板は、この地域から消えてください。

この時代から、存在を消してください。

翌朝、掲示板は消えていた。地面から痕跡ごと。


ナズナ私的メモ

これは、言葉のだけで“現実のコード”に触れてしまう場所。

恐ろしいのは、それがどの時代にもあったこと。

文化も、宗教も、構造も超えて。そして、全くの出所がわからない事

これは願いを叶える装置ではない。

これは、“人が世界を無意識に書き換える手段”の残響。

この記録は封印指定とする。

似たような掲示板を見かけた際は、決して“願い”を書かぬこと。

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